ビッグデータ時代を担うデータサイエンティストの採用支援サービス「Data Ship」
対象となる人材と企業とをつなぐ接点としての役割を果たす
パーソルキャリア株式会社 Innovation Lab. Data Ship ゼネラルマネジャー
片岡 秀夫さん
近年、IoTやAIなどの急激な進歩もあり、ビッグデータの活用が企業にとって大きなテーマになっています。ただ、そうしたデータを分析するデータサイエンティストを含む先端IT人材は不足しており、いずれの企業も採用に苦労しているのが実状です。こうしたなか、パーソルキャリア株式会社では、法人企業向けにデータサイエンティスト採用支援サービス「Data Ship」を提供しています。「Data Ship」を開発した経緯や、その特長とメリット、今後の展望などを同社のInnovation Lab. Data Ship ゼネラルマネジャー片岡秀夫さんにうかがいました。
データサイエンティストに特化して活躍の場を切り開く
近年の「人・組織」の課題をどのように捉えていますか。
我々は、技術者が次世代の事業開発をリードしている社会を創りたいと考えています。日本の企業は、いわゆる文系出身者がトップに立つことが多い。しかし、それだけではイノベーションを起こしていく創造力に欠けるように思います。これからは、理系出身者や博士号取得者がその専門性を生かし、文理問わず技術者がどんどん活躍できる社会になっていくべきです。その一つとして、我々はデータサイエンティストに着目しています。
データサイエンティストに着目したことが、「Data Ship」の開発につながるわけですね。
開発の背景として、二点挙げられます。一つは、シリコンバレーで、大学を卒業している、いないにかかわらず、専門的なスキルを持つ人材を「ニューカラーワーカー」として採用するトレンドがあると知ったことです。ニューカラーワーカーとは、IBMが提唱していますが、サイバーセキュリティーやデータサイエンスなどのIT分野で活躍する人を指し、学歴よりも業務に関連したスキルを重視して採用されています。日本の企業は、たとえどんなに優秀でも、大学を卒業したばかりの人は即戦力として採用しない傾向にあります。また、学生側が産業界で求められる水準の専門的なスキルを身に付ける教育プログラムを受けていないことも事実です。この市場で、学生と社会をつなげることが重要になると考えたことが、開発のきっかけになりました。
もう一点は、アカデミック出身でデータサイエンスの高い専門性を持つ優秀な人材が当社に入社したことです。一緒に事業に取り組めたら面白いことができるのではないかと思い、まずは彼の強みを生かせる領域であるデータサイエンティストにフォーカスしました。
対象人材と会えて、スキル評価もできる仕組みを構築
「Data Ship」の概要をお教えください。
「Data Ship」は2017年10月にサービスをスタートしました。当初は、個人向けには「データサイエンティスト育成プログラム」とうたっていましたが、現在は「データサイエンティスト学習支援プログラム」と位置づけています。学ぶ上では、“育成される” という受け身ではなく、“学習する” という主体性を大事にしたかったからです。「Data Ship」が提供する学びの中で特徴的なのは、イベントを通じてデータサイエンスの実例・事例を学べることです。企業のデータサイエンスの現場の方を招き、データサイエンティストが実際に働く組織・仕事環境、分析するテーマ、仕事のやりがいなどを参加者が実感できるデザインにしています。法人企業の皆さまには、待っているだけでは採用できないので、そうしたイベントからデータサイエンティストのスカウトにつなげてほしい、と呼びかけています。企業には「Data Ship」を「採用支援サービス」として提供しています。
採用支援サービスとしての「Data Ship」の特長は三点あります。一つ目は、我々が開催するイベントでは、企業の事業内容や求める人材要件に合わせた集客を実現できることです。既にこれまで1,000人以上のデータサイエンスの専門性をお持ちの方にご参加いただいています。二つ目は、専門性の高いメンバーが本サービスの設計をしているので、参加者にとっては学びの満足度が高く、同時にその企業を深く知ることができるイベントの企画・運営が可能であることです。三つ目は、対象人材のスキルアセスメントができることです。対面のイベントに加えて、オンライン講座の豊富な学習履歴情報があります。企業がその情報を活用すれば、求めている人材のスキルアセスメントがしやすくなります。
データサイエンティストの採用に向けて、「何をしたら良いかわからない」という企業も多いのではありませんか。
どうアクションを起こせばいいのか、悩んでいる企業は少なくありません。人材の要件定義の仕方や採用戦略の練り方がわからないケースも多いと思われますので、我々がそうした企業をサポートします。我々のイベントやオンラインサービスを利用している個人の方々に対して、自社の取り組みを発信したい、と考えている企業のお手伝いもできます。さらには、どうしたらデータサイエンティストやAI人材に魅力を感じてもらえる会社になれるのか、彼らが活躍しやすい組織にするには何をすべきか、といった課題を解決するためにご協力することも可能です。
今後の取り組みや目標・展望をお教えください。
「Data Ship」を個人向けのプログラムとして立ち上げてから、約1年が経過しました。この期間に、データサイエンティストの方々とのつながりが強まり、一方では企業の皆さまがどんな課題を持っているのかを認識することができました。2018年10月からはサービスを拡充させ、企業側へのサービスメニューを一段と強化していきます。中長期的には、職務経歴書がなくてもデータサイエンティストの採用が円滑に進むようにしたいと考えています。我々がよく言うのは、「経験とスキルは違う」ということ。「経験」は特定の環境でのアウトプットであって、環境が変わると、できるものができなくなる可能性があります。でも、「学習履歴」は経験とは関連しません。どちらかと言えば、その人の経験に頼らない「スキル」を学習履歴から評価・判断できれば、職務経歴書には頼る必要がないと考えています。
最後に、データサイエンティストの採用を考えている企業の方々にアドバイスをお願いします。
データサイエンティストの採用を行う際に、即戦力の人材を求めがちです。しかし、人材難の時代ですから、難易度が上がってしまい、いつまで経っても何も始まりません。そこで我々は、まずは学生を採用してみることをお勧めしています。そうすれば、データドリブンの事業開発のために、自社の立ち位置や、そのために何が必要なのかがきっとわかります。それは企業としての学びであり、進歩になるはずです。
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