応募者に合わせた面接の仕方を提案する「HRアナリスト」ですべての社員が採用に関われる世界を目指す
シングラー株式会社 代表取締役CEO
熊谷 豪さん
企業が人材を確保するために募集を行い、応募を集めたものの“歩留まり”が悪く、ミスマッチが起きることも少なくありません。その大半は、応募者にとって好ましい面接を実施できなかったことが原因。そこで応募者と企業との関係がフラットではないことにも理由があるという思想に基づき、応募者と面接官のコミュニケーションを重要視して開発されたのが、シングラー株式会社の「HRアナリスト」です。スタートアップ企業で人事を5年ほど経験し、そこで得られた知見をデータベース化し、「HRアナリスト」というシステムを開発した熊谷豪さんに、本サービスの開発の背景や特徴などについてうかがいました。
応募者を集めるだけが採用ではない
個別の満足度を高める面接を
「HRアナリスト」の特徴についてお教えください。
このサービスは現場の面接官向けに開発したものです。一般企業では、営業やマーケティングの方が面接官を担当することも多いのですが、面接のプロというわけではありません。そんな方々が、効果的な面接を行い、採用の成約率を上げられるようにするために開発したのが「HRアナリスト」です。応募者に対して面接の前にアンケートを実施し、その結果を基に、面接で応募者に質問すべきことを提案するサービスです。応募者のニーズや会社を選ぶ際の基準などを事前にヒアリングし、その応募者に対して、どのように対応すれば満足度が上がるのかを提案します。
開発に至るまでに、どのような経緯があったのでしょうか。
私自身、以前はスタートアップ企業に就職して5年ほど人事担当者として働いていました。就職した当時は小規模の企業でしたが、やがて4万人の応募を集められるほどに成長。ただ、人事担当者として、その4万人からどのくらい「入社したい」と思う人を増やせるかが課題だと考えていました。
2011年に起業して採用コンサルティングに携わるようになりましたが、ほとんどの取引先から「この人を採用したいのだが、どうすればいいのか」と相談されます。多くの企業が、人集めに躍起になり、集めた後のことを考えていないことが散見されました。実際に多くの企業のケースを分析してみたところ、募集を行って応募者を集めたまでは良いのですが、その後の過程で取りこぼしているケースがとても多いことがわかりました。特に面接が最大のボトルネックになっていたので、私が面接に同席してメンターになり、応募者に対する発言などをアドバイスしました。こうした面接におけるメンターの役割を担うためのシステムとして「HRアナリスト」の開発を始めたのです。
応募者の成約率を上げるためにはヒアリングに基づく、より良いCXが必要
「HRアナリスト」を導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
導入することで応募者の歩留まり率をアップさせ、成約率の向上が可能になります。その改善に必要な要素が「CX(キャンディデイト・エクスペリエンス=応募者体験)」です。応募者が面接に来たとき、企業側がどのような体験を応募者に与えられるか、ということです。応募者が応募の際に検討する材料は、給与などの待遇面ですが、実際に面接に進むとそれらの重要度は下がっていきます。目の前にいる面接官といかに良い時間を過ごせたかによって、次に進むかどうかを決めることが多いのです。
より良いCXを実現するため、事前に応募者からヒアリングして、それを人事担当者が面接官に伝えることで面接の時間を良いものにする。これを行うだけで、二次選考や内定まで進んだ段階でも、応募者は良い面接官に出会えたというCXを得られるため、歩留まり率が改善します。
「HRアナリスト」によって人事担当者はどのようなアドバイスを得ることができるのでしょうか。
応募者にヒアリングする設問を31問用意して、その回答を1万6,000パターンのペルソナによって分析し、応募者を大きく8パターンに分類した結果を人事担当者にお渡しします。さらに企業側にも類似性を適合させるため、社員に同じ設問を受けてもらいます。これによってパーソナリティーが似ている人は誰か、ビジネスの志向は何かを分析します。その結果、誰を面接官にアサインすればいいのか、誰をリクルーターにすればいいのか、逆に担当させないほうがいい人は誰か、といった分析結果が出てきます。
そしてアサインされた人が、その応募者に対してどのようなアクションを取ればいいのかをアドバイスします。人事担当者は、分析結果をそのまま面接官に指示書として渡すことができるので、現場の面接官に応募者に対して何をしてほしいかという指示書を作成する必要がなくなります。
現在、何社ぐらいの企業が「HRアナリスト」を導入されているのでしょうか。
2018年9月時点で150社ほどに導入されています。「HRアナリスト」は継続して利用することで精度が上がります。現時点では、AIを組み込んでいません。組み込める土壌は作ってありますが、 ある程度のデータ蓄積が必要になりますので、現在は顧客のデータを貯めている段階です。リリースして1年半ほど経過しましたが、かなり多くのお客さまに継続してご利用いただいています。基本的にクラウドを利用したシステムなので、保守・運用といったサービスよりは、随時新しいデータにアップデートして、ご利用方法のケアをカスタマーサービスとして提供しています。
今後のサービス展開について、展望や目標などをお聞かせください。
機能の追加・拡充を進めていくのはもちろんですが、私たちが考えているのは、組織の課題によりアプローチしていく新機能の開発です。今後は、応募者が入社後にチームの一員としてどう組み込まれればよいか、といったことまで提案できるように作り込んでいくことを考えています。具体的には、既存のチームにどういうタイプの社員を組み込んだらチームがドライブするのか、などの組織の課題を解決するソリューションに発展させていくつもりです。これからの面接や面談は、企業と応募者の立場がフラットになっていきます。そのとき、私どものツールが生きてくるはずです。いかに採用をフラット化させるかに注力し、人事の専門家ではない現場の人が採用に関われるようにしたいと考えています。
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