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AIによるエントリーシート選考が“攻めの採用”を加速させる
500時間の工数を削減した“ソフトバンク流”未来の新卒採用(後編)

源田 泰之さん(ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長)
中村 彰太さん(ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 採用企画課 課長)

採用領域における人とAIのすみ分けは
どうあるべきか?

時間を削減したことにより、「攻めの採用へのシフト」以外にも、何か成果はありましたか。

源田:公平かつ客観的なジャッジが可能になったことですね。学生が書いたESを人間が判断する場合は、どうしても主観が介在するため、評価にブレが出てしまうことを否定できません。もちろん、明確な基準を設け、事前に目線を揃えて臨みますが、100%公平に判断するのは難しい。しかしAIによるジャッジには、ブレが存在しません。AIの設定段階において、現場の採用担当が本人の知見や日々の肌感覚をもとに、大変細かいチューニングを徹底的に行ったことで、非常に高い精度でのジャッジを実現することができました。

ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長 源田 泰之さん/ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 採用企画課 課長 中村 彰太さん

中村:採用スタッフがWatsonで不合格になったESの再選考を行っても、合否の結果が変更されるものは一定数だけ。それだけ、AIの精度が高いと言えます。現状ではこのシステムに大きな課題は見られませんが、テクノロジーの単語など、トレンドによって使用頻度や意味合いが変わってくるワードもありますので、今後は継続的にチューニングしていく必要がありますね。

今後、HR領域でAIはどのように展開されていくとお考えですか。

源田:「HR Tech」はバズワードになりかけていますが、リアルの世界でしっかりと活用できるようになるのは、これからだと思います。ソフトバンクは世界を代表するIT企業でありたいと思っていますので、HRの領域でも率先して、新しいテクノロジーを活用していきたいですね。今回の取り組みを通じて見えてきたのは、人事がやるべき仕事とAIがやるべき仕事との境界線です。AIでESのジャッジはできますが、会社の魅力を説明して学生を動機付けすることはできない。ここは人が担保する必要があります。人と人との接点に関する仕事に人事が注力することによって、より効果的な採用活動を実現できるでしょう。

現状では、合否を判定するまでに留まっているのですが、合格者の中でも高得点の人とそうでない人との差が見えるようになるかも知れません。さらに、その先の入社後の活躍との相関性が見えてくると、次の進化のポイントになります。活躍人材のフラグ立てが可能になれば、工数削減のために1次面接はパスするとか、現場社員を動員してしっかりと動機付けするとか、これまでとは違った採用選考が可能になるかもしれません。

中村:入社後にどれだけ活躍するかを見極める基準は難しく、その要因となる変数も非常に多いので、なかなかAIでは判断しづらいかもしれません。ただし、今回の取り組みを進める中で、可能性は十分にあるなと感じました。上司と部下とのマッチングやメンバー同士の相性など、アナログな人間関係の領域にもAIが踏み込み、可視化と判断が行われることも考えられます。そうなると、社員の配属にも応用できるかもしれません。

源田:工数を削減することができ、選考がより公正になり、導入リスクもほとんどない。私たちが感じた効果や、導入に至るまでの試行錯誤の経験は、きっと多くの企業にとっても価値があると思っています。

最後に、企業でHR Techに取り組む人事の方々へメッセージをお願いします。

中村:Watsonを用いたES選考は、どの会社でも可能です。これまでの採用活動を振り返り、確かなデータや判断基準をAIに読み込ませることができれば、一定の精度でシステムはつくれると思います。一度、検討してみてはいかがでしょうか。

源田:HR Techの導入に当たって大切なことは、失敗を積み重ねること。私たちも、最初から「Watsonありき」で進めていたわけではありません。さまざまな手法を試し、失敗を重ねて検証していく中で、見えてきたものがたくさんありました。そういった積み重ねがあるからこそ、社外の方からご提案を受けても、一歩踏み込んだ話ができるわけです。失敗は必ず財産になるので、まずは自ら動いてみることが重要だと思います。

ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長 源田 泰之さん/ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 採用企画課 課長 中村 彰太さん

取材は2017年7月13日、東京・港区のソフトバンク本社にて

 


2017/08/22実践活用事例採用エントリーシートソフトバンクIBM Watson日本IBM人工知能(AI)

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