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ピープル・アナリティクスの活用により「未来を予測し、先手を打つ人事」を実現 〜90%の精度を実現した、テンプホールディングスの挑戦~(前編)

山崎 涼子さん(テンプホールディングス株式会社 グループ人事本部 人事情報部 人事情報室 室長)
小川 翔平さん(テンプホールディングス株式会社 グループ人事本部 人事情報部 人事情報室)

退職の正解率は90%

テンプホールディングス株式会社 山崎涼子さん

開発のテーマはどのように決めたのですか?

山崎さん:まずは、私から小川に対して、会社や人事業務についてのインプットを行いながら、蓄積されてきたデータを見せて、ディスカッションを重ねました。最初に驚いたのは、「過去から未来を予測できる」ということです。データ分析により「全体の傾向はこうだ」とか「要因はこれだ」ということを導き出せるイメージはあったのですが、「未来はこうなる」と予測できるとは思ってもみなかった。その瞬間に、ピープル・アナリティクスの可能性が私のアタマの中で一気に広がったのを覚えています。「蓄積されてきたデータだけでも何とかなるかもしれない」「まずはやってみよう」という考え方のもと、テーマを選定していきました。

そこでフォーカスしたのが、「退職」と「異動」です。その大元にあったのは、「タレントマネジメントを確立させたい」という課題意識でした。退職を抑制することや、環境を変えることで多くの人に活躍してもらうことは、非常に有効な解決策になりうると考えました。一人の社員が発揮するパフォーマンスを10とすると、退職すると0になるし、活躍すれば20にも100にもなる。この差は非常に大きく、精度高く予測できれば経営に大きなインパクトを与えることができるだろうと。

まずは、「退職予測モデル」について教えてください。

山崎さん:正直に言いますと、退職率は高くなく、主な要因も把握できていたので、緊急性の高い課題ではありませんでした。ただし、将来を考えると、辞めてもらったら困る人が退職するリスクは、ゼロに近づけるべきであろうと。この「未来の課題」の解決手法を、人事の中に持てるのは有効だろうと思い、モデル開発に着手しました。

テンプホールディングス株式会社:退職予測モデルイメージ

小川さん:モデル自体はシンプルで、活用しているデータは大きく分けて「個人情報」と「社員情報」の二つのカテゴリに入るものだけです。個人情報は、性別・年齢など、一般的な企業が取得しているレベルのものです。社員情報は、新卒/中途の採用区分、勤続年数、給与の変動額など、社内におけるこれまでの活動履歴を指します。

これらのデータをもとに、機械学習の「ランダムフォレスト」というアルゴリズムを用いて、退職の確率を予測するモデルを開発しました。この際、データは既存のものを活用しただけで、新たにアンケートなどはとっていません。特殊なことはやらずに有用なモデルを生み出せたのが、画期的だと思っています。

テンプホールディングス株式会社:ランダムフォレストイメージ

どれくらいの精度で、退職確率は予測できるのでしょうか。

小川さん:予測の精度は、いくつかの指標で表すことができます。まずは、「正解率」という指標があります。一定数の社員を対象に分析を行い、「辞める人」なのか「残る人」なのかを当てられる確率を示すもので、これは約90%の精度まで高まっています。もうひとつは「再現率」という考え方です。これは、どれくらいの割合で、辞める人をこのモデルでピックアップできるのかを示す指標なのですが、約60%の数値を示しています。

モデル開発を始めて、3〜4ヶ月でこの精度まで高めることができました。蓄積されていた社員情報が、分析できるかたちで残っていたので、そこまで時間は掛からなかったです。初期の段階では、統計的な手法を用いていたのですが、なかなか精度が上がらず、機械学習にシフトしてからはうまく回り始めました。

モデル開発後の現場での運用は、どのように行っているのでしょうか。

山崎さん:マーケティング部門のデータサイエンティストや、新規事業開発のマネージャーなど、社内の有識者のレビューを通じて高い評価をもらえたので、各事業会社の人事部に展開しています。例えば、半期に1回、分析結果を共有して、退職確率が高い社員との面談を実施したり、研修を導入するための客観的な事実として、活用してもらっています。今は、その後の効果検証を行い、モデル自体をブラッシュアップしながら、より最適な運用手法を構築している最中です。

 


2017/02/22実践活用事例ピープル・アナリティクステンプホールディングス異動・配置・昇進リテンション・退職

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