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サイエンスカンパニー 3Mにおける、テクノロジー人材の「創造性」と、組織の「効率性」の両立 (前編)

渋谷 和久さん(スリーエム ジャパン株式会社 人事本部 人事統轄部長)

2016/09/30実践活用事例スリーエム3Mテクノロジー人材

自分が正しいと思ったら、上司の承認がなくても挑戦していい

スリーエム ジャパン株式会社

3Mが多くの製品を生み出し続ける背景には、同社の企業文化が大きく関わっています。3Mは1902年、鉱石の採掘・販売を目的とし、米国ミネソタ州で創業されました。しかし創業当初の事業は厳しく、数年にわたって厳しい売り上げの状態が続いたといいます。

そのような中でも不屈の努力と生き残ろうとする強い意志によって、ついに1921年、3M最初のヒット製品となる自動車ボディーの水研ぎ用の耐水研磨紙が生まれました。

その後、第二のヒット製品となるスコッチ® マスキングテープは、3Mの発展を大きく支えました。当時、アメリカではツートンカラーの自動車が流行。二色で塗装する際には、最初に塗った色の上に古新聞をかぶせ、テープでとめることで別の色が重ならないようにし、塗料をスプレーで吹き付けていました。

ところがテープをはがす工程で、最初の塗装まで一緒にはがれてしまうというトラブルが多発していたのです。そこで当時の研磨材研究者は、塗装面に貼っても塗料をはがさないテープの開発に着手しました。

しかし、車体にしっかり貼れる柔軟性があり、かつ簡単にはがせるテープづくりは難航し、なかなか納得のいく製品は完成しませんでした。研究者の上司はついに研究の中止を命じましたが、その後も研究者はひそかに開発を続け、ほどなくして理想のマスキングテープの開発に成功しました。

上司は、ひそかに研究が続けられていることに気がついていながらも、それを黙認していたといいます。販売されたマスキングテープは大ヒットし、現在に続くスコッチ® ブランドの源流となりました。ここから、上司から認められていない研究でも、自分が正しいと信じるなら続けてもいいとする、3Mの企業文化「ブートレッギング(Bootlegging / 密造酒作り)」が生まれたと言われています。

100年以上の歴史を持ちながら、今も革新を続ける3M

スリーエム ジャパン株式会社

こうしたイノベーションを促進する文化は、現在も綿々と受け継がれています。例えば3Mの戦略の一つとして、「イノベーションへの投資を促進して、既存マーケットでのチャンスをさらに広げ、来るべきメガトレンドに注目する」ことがあげられています。

また、社員の行動指針となる「Leadership behaviors」の中でも、「勝ちにこだわる」「協働とチームワークを育む」などと並んで、「イノベーションを促進する」ことが求められています。

このような3Mの方針や実績は社外からも大きく評価され、2013年に行われた「booz&co.」による「最も革新的な企業(The 2013 Global Innovation 1000 Study)」の調査では、3Mが第5位にランクインしました。上位には、Apple、Google、Samsung、Amazonと、名だたる企業が並んでいます。

これらの企業と3Mの違いは、3Mだけが100年以上の歴史を持った企業であるということです。つまり3Mは、100年以上の歴史を持つ企業の中で最も革新的な企業として評価されたのです。


2016/09/30実践活用事例スリーエム3Mテクノロジー人材

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