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[ 連載 : AIが切り拓くHRの未来 / 第3回 ] 第1回 / 第2回 / 第4回 / 第5回 / 第6回

[実験結果] AI導入で「働き方」は、より人間らしくなる

株式会社リクルートホールディングス 石山 洸さん
石山 洸さん(イシヤマ コウ)
株式会社リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology 推進室 室長

リクルートのAI研究所 Recruit Institute of Technology 推進室 室長。大学院在学中に修士2年間で18本の論文を書き、アラン・ケイの前でプレゼン。博士課程を飛び越して大学から助教のポジションをオファーされるも、リクルートに入社。雑誌・フリーペーパーから、デジタルメディアへのパラダイムシフトを牽引。リクルートとエンジェル投資家から支援を受け、資本金500万円で会社設立。同社を成長させ、3年間でバイアウト。その後、メディアテクノロジーラボの責任者を経て現職。

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AIを中心としたテクノロジーが雇用を奪うというニュースを目にした人は多いと思う。だが、実際に、どのようなメカニズムでAIが雇用を奪うのかについて理解している人は少ない。この問題を検証するため、筆者は、約200名の人事関係者が出席しているイベントで参加者に対して挙手制の質問をする実験を試みた。

最初の質問は、AIが雇用を奪うというニュースを見たことがあるかという質問である。挙手をした人は、ほぼ100%であった。次により具体的に、オックスフォード大学のMichael A. Osborne氏が調査した内容についてニュースを見たことがあるかという質問をしてみた。さすがに人事関係者ということもあり、半数近くの人が挙手をした。

次いで、実際に、同調査についてのレポートを読んだことがある人を聞いてみると、突然、挙手は1割以下になった。最後に同レポートのなかにあるGaussian Process Classifierについて理解している人という質問をしたが、ついに挙手をしている人はゼロになってしまった。

上記の実験は厳密なものではなく、あくまで日頃、私たちがAIが雇用を奪うという問題に対して、いかにステレオタイプに考えているかということのアウトラインをつかむための実験だ。テクノロジーと雇用の問題に対して、筆者が所属するリクルートのAI研究所、Recruit Institute of Technologyのアドバイザーであり、米カーネギーメロン大学教授のTom M. Mitchell氏は、以下のように指摘している。

Tom M.Mitchell

Tom M.Mitchell

黎明期から機械学習の基礎・応用に幅広く取り組んできた代表的な研究者。機械学習の代表的な教科書である “Machine Learning”の著者であり、世界で初めて機械学習の学部を設立。これまで数多くのスタートアップを主導し、自身がファウンダーとして設立したスターアップの一部を米国大手求人サイトのMonster.comに売却した経験を持つ。全米技術アカデミー会員、AAASフェロー、AAAIフェロー兼元理事

「科学技術が労働者に与える影響を理解、観察、追跡するための新たな仕組みを導入すべきである。本来、政府の指導者は雇用の推移や富の分配、教育の必要性といった問題に対処すべく重要な政策を打ち立てるべきだが、驚くべきことに問題解決に必要とされる基本的かつ具体的情報がほとんど収集されていない。

たとえば、米国では以下の基本的な質問に答えるための情報すら入手することができない。どのテクノロジーが今現在最も人間に取って代わっているのか。どのテクノロジーが最も多くの新しい職を生み出しているのか。どの経済セクターでテクノロジーの導入が雇用を増やし、あるいは減らしているのか。指導者が分野に精通した政策決定を行うためには、これらの質問に対する解答が不可欠である。

よって、私は政府がこれらの問題に限らず関連質問への答えを徹底的に調査し、その情報を開示することを強く勧める。幸運なことに、オンライン・データの利用可能度は向上しており、政府は新たなデータ収集手段を生み出したり必要な情報を既に手にしている企業と提携することで、 これらの問題に対して明確な解答を得ることができるだろう」

以上のTom M. Mitchell氏の意見には、ステレオタイプな議論に終始するのではなく、具体的な事例から詳細のデータを確認していくアプローチの重要性であろう。そこで次に、実際にAIが導入された現場でどのような変化が起きているのか、事例から確認していきたい。


2017/02/01基礎リモートワーク・働き方働き方改革石山洸リクルートホールディングス人工知能(AI)

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