「すべての社員に優秀なバーチャル秘書を」
AIソリューション「TRAINA」が目指す働き方の未来とは(後編)
株式会社野村総合研究所/
堀 宣男さん(ビッグデータイノベーション推進部長)
小髙 徳彦さん(ビッグデータイノベーション推進部 グループマネージャー)
問い合わせをする人、受ける人、双方の手間を軽減
7月に発表されたリリースでは、サッポロホールディングスグループの本社機能分担会社において、社内問い合わせ業務の負荷を45パーセント削減できたと発表されています。この事例について、詳しく教えてください。
小髙:サッポロホールディングスには、グループ内に人事や総務、経営、情報システムなどの業務を担当するサッポログループマネジメントという企業があります。ここでは、グループ内の約6000人の従業員から寄せられる社内問い合わせに対して、これまでメールや電話で対応していました。
こうした対人対応業務には、「複雑な問い合わせに対応する業務の負荷が高い」ことや、利用者にとって「回答待ちの時間が発生し、不満が解決されにくい」「申請手続きが煩雑でわかりにくい」といった問題があります。同社が進める働き方改革を実現する上でも、大きな課題となっていました。そこで、業務をAIによって代替できないか、とご相談をいただいたのです。
TRAINAは、どのようにして社内問い合わせ対応を行うのですか。
小髙:まずは、問い合わせをする人がPC上の問い合わせ専用画面から質問を入力します。たとえば、「新しい端末が欲しい」というメッセージを送ったとします。しかし、同じグループ内でも企業によって申請フォームが異なるため、この質問だけでは回答できません。そこで内容を特定するために、TRAINAからの質問や回答が自動で返されます。この場合、「『新しい端末が欲しい』ですね。かしこまりました。端末利用の詳細を教えてください」といった質問が返されていますね。その質問にはグループ企業名のタブが付いていて、該当するものを選択してもらうことで必要な申請フォームを特定できるようにしています。
その後は必要となる社内用申請画面へのリンクを案内し、画面を開くとそれまでのTRAINAとのやりとりで得られたログイン者名や社員コードなどの情報が自動的に入力された状態で出てきます。従業員の入力の手間も軽減できる仕組みですね。
AIが人間以上のスピードで、正確に質問への回答をしてくれるのですね。
小髙:はい。問い合わせをする人の手間も、問い合わせを受ける人の手間も、ともに軽減できています。サッポロホールディングスは「SPEED150」という長期経営ビジョンを示していて、その基本方針として「異次元スピードでの変革」を掲げています。TRAINAを用いることで、社内に点在するマニュアルやFAQなどの業務ナレッジを整理し、属人的で非効率な業務を改善することを目指しているのです。
TRAINAを使った取り組みは、2016年12月から2017年4月まで実証実験として進めていましたが、それまで人が対応していた社内問い合わせ業務の45パーセントをTRAINAによって行うことができました。今後、さらに実務での活用を進める予定です。