「すべての社員に優秀なバーチャル秘書を」
AIソリューション「TRAINA」が目指す働き方の未来とは(後編)
株式会社野村総合研究所/
堀 宣男さん(ビッグデータイノベーション推進部長)
小髙 徳彦さん(ビッグデータイノベーション推進部 グループマネージャー)
2017/10/13実践、人工知能(AI)、リモートワーク・働き方、働き方改革
「約6000人の従業員から寄せられる社内問い合わせ対応を、AI(人工知能)の活用で45パーセント削減」。野村総合研究所が独自に開発・提供する AIソリューション「TRAINA」(トレイナ)は今年、サッポロホールディングスのグループ企業において取り組んだ業務改革の成果を発表しました。単純に人の手で行っていた業務を代替するだけでなく、現場に潜む課題を解決し、「働き方改革」を大きく前進させるためのキープレイヤーともなりつつあるAI。野村総合研究所は、社員と自動で対話しながら、膨大な情報から最適解を導くTRAINAを活用し、その可能性を追求しています。AIは働き方改革にどのように寄与していくのか。前編に続き、TRAINAの開発に携わる野村総合研究所・ビッグデータイノベーション推進部の堀宣男さんと小髙徳彦さんにお話をうかがいました。後編では、人事の現場で実際に活用されているAIソリューションの事例についても語っていただきます。
- 堀 宣男さん(ホリ ノブオ)
- 株式会社野村総合研究所 ビッグデータイノベーション推進部長
1995年入社。当初はテクニカルエンジニアとして、DWHやBI、GIS、データマイニング関連のプロジェクトを担当。2001年からはテキストマイニングソリューション「TRUE TELLER」の立ち上げに携わり、製品開発や営業・プロジェクトなどを担当する。2005年 ナレッジ管理ソリューション「FAQナレッジ」、2010年 対話要約ソリューション「VOICEダイジェスト」の製品企画を行った。2012年からビッグデータビジネスを担当し、現在に至る。
- 小髙 徳彦さん(オダカ ノリヒコ)
- 株式会社野村総合研究所 ビッグデータイノベーション推進部 グループマネージャー
2001年、株式会社野村総合研究所に中途入社。テクニカルエンジニアとして、システム開発の方式設計・開発などを担当し、2010年からはR&D部門にて先進技術の実用化の研究開発に携わる。2013年からビッグデータビジネスを担当し、現在に至る。
「質問したいときにできない」「古い資料ばかり」というストレス
社内業務の効率化に向けてAIを導入したい、と考える企業が増えているとのことですが、人事部門関連では実際にどのような相談が寄せられているのでしょうか。
小髙:分かりやすいケースとしては、人事異動の時期になると急増する「手続きに関する問い合わせ」への業務不可を軽減したい、というご相談です。転勤に伴う手当などの質問は、やはり特定の時期に集中します。また、これらの質問は似たような内容が多く、一つひとつに人事部門のメンバーが対応している状況を変えたい、と考える方が多いようです。「同じような質問が繰り返されるなら、AIで対応できるのではないか」と。
もうひとつ、これは人事に限った話ではありませんが、「夜間のヘルプデスク対応」に関するご相談も非常に多くいただきます。社内のヘルプデスクは、17時くらいで窓口対応を終了する場合がほとんど。しかし営業部門など、日中に離席していることが多い従業員からは、17時以降も問い合わせに対応してほしい、という声が寄せられる。こうしたニーズに応えるため、AIで自動対応する仕組みを作れないかと考える企業が多いのです。
「質問したいときに窓口が閉まっている」という状況は、従業員へ無駄なストレスを感じさせてしまう要因にもなりかねませんね。
堀:そうですね。問い合わせが多い大手企業などでは特に、イントラネットに膨大なデータベースを保有し、従業員が自ら調べられるようにしています。しかし現実には該当するFAQを見ても、求めている答えを見つけられない社員が少なくありません。従業員が社内手続きについて直接質問したいときは、往々にして「これまでに経験したことのない申請や決裁」に関することが多いのではないでしょうか。必ずしも的確に質問したり、データベースを検索したりできるわけではありません。できれば人に対して感覚的に質問して手短に回答を得たい、という気持ちはよく分かります。
また、社内手続きに関わる膨大な申請書や資料を探す手間を負荷に感じる人も多いでしょう。「イントラネットを検索すると古い資料ばかりが出てくる」といった不満もよく聞きます。