人工知能やビッグデータは、働き方改革にどのように貢献できるか
~日立製作所が解明した、センサーを使った幸福感の測定と生産性向上の方法とは~(後編)
矢野 和男さん(株式会社日立製作所 研究開発グループ技師長)
いきなり100点満点の答えは出ない。データ活用は実践することで方向性が見えてくる
これから人事が働き方改革に臨んでいくためには、どのような姿勢が必要だと思われますか。
働き方改革では、より多様な働き方を生み出すことにもっと価値を置かなければならないと思います。これまでの20社を超えるハピネスの計測においても、どうやればハピネスが向上するかという要因は、人ごと、組織ごとに多様です。だからこそセンサーやAIの技術が重要になるわけです。
人の集団は実に多様で、集団の平均値の人に対する手法がすべての人に通用するかというと、そんなことは全くありません。分布の全体を見ると、実はその手法に合ってない人が山ほどいることになります。だからこそ、人事はデータを収集しこれを生かすことで新たに見えてくるものには大きな価値があります。
働き方改革に限らず、「人事課題に対してテクノロジーを使いたいが、何から手をつけていいかわからない」という人事の方もいるかと思います。そのような方にアドバイスをお願いします。
最初からいきなり、100点満点の答えを出そうとしないことが大事です。データ活用は、実践することでその方向性がどんどん見えてくるものです。それを前提にしておかないと、せっかく予算を取っても望む成果が出ずに終わってしまうことになりかねません。人事へのテクノロジーの導入は継続的に行うべきなので、PDCAを回していく、またはそういったシステムをつくる、といった発想で臨まれるとよいのではないかと思います。
当社でも、サービスを企業の現場ごとに幅広く役立てていただくには、もっと計測のコストを下げ、より使いやすくする必要があると考えています。需要は広がっているので、もっとブラッシュアップしていきたい。そして、ITによって社内で取得できる業務データなどとも、積極的に結び付けていくことが必要だと思っています。例えば営業のステージが一段階上がるようなときに、社内ではどのような変化が起きているのか、これまで使われていなかったデータをもっとハピネスに結びつけ、より体系的に考えていきたいですね。皆さまの会社でもハピネスによるデータ分析を導入されれば、仮説以上の成果が得られるのではないでしょうか。
矢野さんが首から下げているのは、加速度センサー
(取材は2017年4月19日、東京・国分寺市の日立製作所 中央研究所にて)