人工知能によって「売れる営業トーク」「伝わる会社説明会」の
論理構造を可視化する(後編)
大野 順也さん(株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO)
リクルータースキルの可視化と、目標設定への活用
その他には、人事領域での応用の可能性として、どのようなことが考えられるでしょうか。
人事の方からのニーズが高いと感じているものとして、「リクルーター面談の可視化」が挙げられます。新卒採用時に多くのリクルーターを抱えるような大手企業では、リクルーターを対象としたマニュアルや事前研修によって成果の最大化に努めていることかとは思いますが、リクルーター面談には根深い問題があります。
それは「属人性に依存した面談」であることと、多種多様な場所で行われているため、人事部の目が届かず「面談内容を確認しづらい」ということです。実際の面談シーンにおいて、リクルーターと学生とでどのようなコミュニケーションがとられているのかを把握できているという企業はわずかでしょう。そのため、多くの企業では学生の気持ちをつかむことに長けたリクルーターと、そうでないリクルーターが話している内容の差異について認識できていないというのが現状です。
このような時にも、それぞれの会話を録音した音声データを人工知能で大量に解析して両者の比較を行うことで、それらの差異を明確にすることが可能です。今まで測定が難しかった、学生の気持ちをつかむのが上手いリクルーターが持っている暗黙知を見える化することができれば、その要素を強化するためのトレーニングができるようになります。またリクルーターと学生がどのようにコミュニケーションをとっているかも把握することができます。
これら以外にも、「設定した行動目標の妥当性」の分析・検証への活用もできると考えています。たとえば、各部署の数値目標自体は、全社の数値目標などを分解していくことで決定できますが、その目標数値をどのように達成するのかという「行動目標」の部分は、上司との面談などで決めているケースが多いかと思われます。
設定した行動目標は目標に到達する上で本当に妥当な行動であるといえるのか、もしくは評価者と被評価者が振り返りの際に論理的に考えられているのかといった部分には、改善の余地があるでしょう。現在、実験的に複数の部門で「目標設定の分析」を行っていますが、部署ごとや支店ごとでも傾向の違いがあり、目標設定の質には大きなばらつきがあることが定量的にも明らかになりました。
今後はこうした目標設定や評価表をすべてデータとして取り込んでいき、「目標」と「目標を達成するための行動」との整合性を分析していくことで、行動目標設定の妥当性を高めていくことにもつながるのではないでしょうか。