脳波を測定し、“感じていること”を可視化する
感性把握技術から探る今後のHRの可能性とは(前編)
森下 さおりさん(株式会社電通サイエンスジャム プロデューサー)
2016/09/30実践、電通サイエンスジャム、感性アナライザ、森下さおり、脳波
感性把握はより手軽で簡単に
「感性」は、どのようにして測定されるのでしょうか。測定の仕組みと、測定方法を教えてください。
感性把握の手法にはいくつか例がありますが、ここでは弊社の提供する「感性アナライザ」をもとにお話しします。脳の中では、脳細胞同士が電気信号を発してお互いに情報をやり取りしています。特に脳の前頭前野という額に近い部分では、「意思決定」「情動」などに関連する処理が主に行われています。
弊社のCTO(最高技術責任者)であり共同研究者である、慶應義塾大学理工学部 満倉靖恵准教授は、15年以上にわたる信号処理研究から、この脳波を測定し「人がどう感じているのか」を可視化する仕組みを発見しました。私たちが提供しているものは、この技術を応用し、より手軽に脳波の測定と感性把握を行うことを可能にした装置です。
装置の使い方としては、まずワイヤレスの脳波計測用ヘッドギアを装着し、額から伝わる脳波の計測を行います。ヘッドギアはタブレット端末に接続されており、計測された脳波はタブレット端末に格納されているアプリケーションへと送られ、ノイズなどの信号処理を経て感性推定が行われます。これによって、「その時に何を感じているのか」を推定することができるのです。
また、測定した情報はタブレット端末のアプリケーション上でグラフとして1秒ごとに表示され、リアルタイムの反応を見ることもできます。
現在、アプリケーション内で感性グラフを表す際には、企業からの要望も高い要素である、5種類の感性推定情報(興味、好き、ストレス、集中、沈静)を設定しています。
「脳波を測る」というと、大きな装置や分析機器が必要になるイメージがありましたが、ヘッドギアはかなりコンパクトですね。
そうですね。従来の脳波計測機器は非常に高価で大型な装置が大半で、脳波という微弱な電気信号の特性から使用の場面も限られています。計測環境の制約も大きく、一般企業での実用を考えるには、まず、より手軽で簡単に使用できる装置の検討と開発が必要でした。
そこで弊社では、簡易脳波計測機器を扱う米国NeuroSky社と共同で、ヘッドギアの開発を行いました。
弊社のヘッドギアには、詳細な信号が取得できるモジュールを搭載していますが、単4電池をバッテリーに利用しており、重さも100グラム程度と非常に軽量です。形状もカチューシャ型で簡単に装着でき、装着時の違和感やストレスが大幅に軽減され、より正確な感性値を測定することが可能になりました。
また、計測結果のグラフが表示されるタブレット端末とはBluetoothで接続されるため、屋外やWi-Fi環境が制限された場所でも計測する事ができます。
この軽量な簡易脳波計測器の開発に加え、研究者の長年にわたる信号処理研究の成果を組み合わせた事により、現在のような実用性の高い感性把握装置の提供が可能となったのです。