AIの開発支援だけでなく、育成・教育にも注力する「SIGNATE」
AI人材の裾野を広げ、社会変革への貢献を目指す
株式会社SIGNATE 代表取締役社長 CEO/CDO
齊藤秀さん
AIやビッグデータ活用の重要性が叫ばれ、各企業は最優先事項として取り組みを強化しています。しかし、AI技術者やデータサイエンティストの人材は不足しており、どの企業も人材確保に苦労しているのが実情ではないでしょうか。こうした社会課題を背景に、コンペティション形式で企業の課題と人材をマッチングさせるプラットフォーム「SIGNATE」を2014年に立ち上げたのが株式会社SIGNATEです。高度な英知を結集し、次々とイノベーションを創出。業界に大きなインパクトを与えています。「AI人材の裾野を広げるためにも、2019年はAI・ビッグデータ活用人材の育成支援を積極的に手がけていきたい」と語る代表取締役社長 CEO/CDOの齊藤秀さんに、今後の事業戦略などをうかがいました。
オープンイノベーションを活用し、企業や行政の課題を解決
データサイエンティストの採用・育成についてどのように捉えていますか。
ビッグデータ活用のブームを経て、現在は「AI(人工知能)」が社会的に注目されています。ただ、そのメインプレーヤーになるAI技術者やデータサイエンティストなどの人材は日本だけでなく、世界的に不足している。採用市場は、需給のバランスがまったく取れておらず、人材そのものの母集団を増やす必要性が叫ばれています。日本も国を挙げて人材の育成に取り組もうとしていますし、各国とも官民問わずAI人材の育成プロジェクトが始まりつつあります。
「SIGNATE」のサービスの特長を教えてください。
「SIGNATE」は多くの企業や行政機関が抱える課題をオープンにし、世の中のデータサイエンティストたちからコンペティション形式でソリューションを募る、日本唯一のプラットフォームです。投げかけられた課題に対して、会員たちがアイデアを考案し、アルゴリズムを開発。最高精度のアルゴリズムを開発した人には、企業から懸賞金や正社員登用といった報酬が提供されます。現在の登録会員数は約17,000人(2019年3月現在)。まさに、日本最大のデータサイエンティスト・コミュニティーです。もちろん、会員数がこれだけの規模になると、全員が高いスキルを持つプロ人材というわけではありません。AIやデータ解析に興味があるという方を含め、会員のレベルはさまざまです。
圧倒的に不足するAI人材の母集団リテラシーの底上げが不可欠
データサイエンティストの教育・育成に向けた事業について教えてください。
AI人材の育成においては、「PBL(プロブレム・ベースド・ラーニング)」という教育手法が重要になっています。PBLは、実際のプロジェクトや問題に対して、自らが考え、課題を解決するプロセスを通して学習を進める手法です。これはまさに、当社が「SIGNATE」を通じて実践していることです。こうしたPBLの教育手法をパッケージ化して、事業を展開しようと考えています。現在開発を進めているのは、コンペティションへの参加を体験するプロセスを通じて学習できるデータサイエンティスト教育システム「SIGNATE QUEST」(仮称)です。
「SIGNATE QUEST」では、一人ひとりに合ったシナリオやストーリー、事例を用意。会員がさまざまなデータ解析を体験しながら、データサイエンスの実務を学べるように設計しています。開発にあたって特に重視しているのは、学んだ内容を自分の仕事にすぐに生かせる教育体験であり、会員にとって当事者意識が持てるストーリー作りです。
当社が目指しているのは、圧倒的に足りないAI人材の母集団を増やすこと。そのために最も教育効果の高いPBLを取り入れ、理数系のバックグラウンドを持っていない人であっても、AIの知識やスキルを身に付けられる教育システムを提供していきます。
目指しているのは、プロ人材の育成だけではないということですか。
その通りです。今の社会的な課題は、AI人材の裾野を広げることです。圧倒的な人数規模でITリテラシーを底上げする必要があります。企業も、ある程度まとまった規模で社員を教育しなければ、時代の流れに取り残されてしまいます。こうした背景もあり、危機感を抱いた企業から社員に対するAI人材教育を希望するニーズが増えてきました。大手SIerの社員3,000人を対象に、社員教育プログラムを実施した事例もあります。研修対象はエンジニアだけではなく、営業部門や管理部門にも範囲を広げ、AI人材育成に向けた底上げを目指すものでした。
業務において重要なのは、仕事とAIの掛け合わせです。営業×AIというように技術者以外の人材がAIをどう自分の仕事に生かしていくかを考えられるよう、リテラシーの向上が重要になってきています。また、大手企業に対しては、社内で大量のAI人材を育成するためのオーダーメイドツールを提供していきたいと考えています。育成という観点では、地方のAI人材、データサイエンティストの育成に向けた活動を推進していきます。2018年には全国5都市でハンズオンの機会を設けました。2019年もこの活動は続けていきます。
採用事業についてはいかがでしょうか。
当社はAI人材やデータサイエンティストに特化した求人サイト「SIGNATE Career」も運営しています。この事業を通じて痛感しているのは、企業側が求める人材の定義や役割、ポジションがまだまだ曖昧であるということです。また、求職者側も自身が持つスキルの状況が明確になっておらず、企業とマッチングしにくい状況にあります。人材の絶対数が足りない上に、企業が求職者に望んでいること、やってほしいことがかみ合わないのは問題です。今後は人材の母集団を増やすとともに、当社が企業と求職者の間に入り、より明確なマッチングのロジックを構築し、ミスマッチを防いでいきたいですね。
今後のSIGNATEの展望やAI・ビッグデータ活用人材の将来についてお聞かせください。
今後は、国家レベルのテーマや企業が抱えている課題を解決するために、「SIGNATE」を拡大させながら開発を進めていきます。並行して、2019年は教育・育成事業にも力を注いでいきます。夏には新たなシステムのリリースも予定しており、自らの能力やスキルを高めたい人への支援を進めていきたいと思います。
そしてその先として、企業が解決したい課題や求める人材に対して、当社のサービスで育成した人々を、「SIGNATE Career」を通じてマッチングさせていきたいと考えています。AIやデータ活用のスキルを持つ人材を早急に何十万人規模にしなければなりません。100万人を超えると社会に対する影響力が出てきます。当社としても、まずは2020年までに「SIGNATE」の会員数10万人を目指します。
本社所在地:東京都千代田区四番町6番 東急番町ビル
問合せ先: info@signate.co.jp