「SIGNATE」で優秀なデータサイエンティストが流動化する社会を創る
株式会社SIGNATE 代表取締役
齊藤秀さん
人口減少による企業の人材不足が叫ばれています。 特に発展の最中にあるAI・ビッグデータ活用の分野では優秀な高度人材が慢性的に不足しており、企業はデータサイエンティストの確保に躍起になっています。今後ますます人材が不足していくことを予測し、高度人材の流動化や効率的なシェアを可能とするプラットフォーム「SIGNATE」を提供しているのが、株式会社SIGNATEです。 10,000人規模のデータサイエンティストが登録し、データサイエンティストと企業がつながる国内最大級のプラットフォームを運営する同社の代表取締役、齊藤秀さんに、事業内容や事業に込めた思い・考え方、そして最新の活用事例などをうかがいました。
プラットフォーム「SIGNATE」を通じて優秀なデータサイエンティストの採用や育成を行う
「SIGNATE」のサービスの特長を教えてください。
世界的にAIやビッグデータの活用が進む現在、その主役であるデータサイエンティストが不足しており、日本でも優秀なデータサイエンティストの採用や育成が難しい状況が続いています。外部の専門ベンダーの選定も、専門的な知識や解決したい課題の明確化が不可欠なため簡単ではなく、多くの企業が課題を抱えています。その課題をオープンにし、世の中のデータサイエンティストたちからコンペティション形式でソリューションを募るための仕組みが「SIGNATE」です。SIGNATEには10,000人を超えるデータサイエンティストが会員として登録しており、投げかけられた課題に対して、アイデアを考案し、アルゴリズムを開発します。最も精度の高いアルゴリズムを創ることができた人には、企業から懸賞金や正社員登用といったリワードが提供されます。当社は、さまざまな企業からのご要望を受けてAI開発のコンサルティングサービスを提供しており、その中でオープンイノベーションによる開発に適した案件をコンペティションの形に設計し、登録会員による開発チャレンジを開催することで最高精度のアルゴリズム調達を実現しています。これは日本で唯一のサービスです。
企業の採用や育成に関する事業も展開されているそうですね。まず採用関連の事業について教えてください。
データサイエンティスト・AIエンジニアを中心に人材をご紹介する人材紹介サービスを提供しているほか、SIGNATEに登録する10,000人以上のデータサイエンティストに向けて求人広告を掲載できるサービス「SIGNATE Career」を2018年11月にスタート。さらに、条件を細かく設定した上で、コンペティションを通じ企業に合った人材を探すSIGNATE独自の人材採用支援も行っています。これは、クライアントが実際に抱える課題を解決するためのAI開発コンペティションを実施し、そこに参加したデータサイエンティストのランキング上位者に対してアプローチし、即戦力としてご紹介するサービスです。可視化されたランキングを基に人材を探すことができるので優秀な人材と出会える可能性が高く、ご好評をいただいております。
教育事業に関してはいかがでしょうか。
私たちが考えるAI人材には大きく二つのモデルがあります。一つは会社内でプロジェクトを企画立案し進捗管理ができるマネジャー人材、もう一つは数学やプログラミングができて、業務を高いレベルで遂行できる人材です。私たちの教育事業は、後者を対象としたものから始まりました。
現在、AI開発やデータ分析においては、プログラミング言語としてPython(パイソン)がよく使われています。機械学習や深層学習(Deep Learning)をPythonでプログラムできる能力が求められているのです。私たちは、こうした学習内容のエッセンスを8時間ほどに凝縮してパッケージングした教材の販売を行っています。SIGNATEの社員が講師になり、データ分析を体系的に学べる仕組みを提供。2017年10月から個人向けにオンライン上で販売を始め、すでに6,800人を超える方が受講しています。また現在、この教材をベースに対面講座とかけ合わせたものを企業にも提供しており、大手企業に研修プログラムとしてご採用いただいています。
また、マネジャー人材に関しては、人材不足がさらに深刻です。そこで私たちは、プロジェクト全体の課題を発見できる能力を育成し、プロジェクトを推進できる人材を育成することも目的に、eラーニングシステムの構築を計画しています。
国家インフラのAI活用コンペティションが増えている
新たにSIGNATEで開催されたコンペティションで注目の事例はありますか。
現在、日本初の衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」の宇宙衛星データ活用コンペティションが行われています。国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する地球観測衛星のデータを民間で活用する事業が経済産業省主導で2018年から始まっており、22の事業者・研究機関・団体で「xData Alliance(クロスデータアライアンス)」が組まれ、当社も参画しています。SIGNATEで衛星データ活用のコンペティションを開催。有用なAIモジュールの開発および優秀な人材発掘を目指し、3年ほどかけて行っていくプロジェクトです。
また「自動運転AI」の開発コンペティションをNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)から受託し行っています。都内の代表的なエリアを自動車で走行し、車載カメラで撮影したデータを基に歩行者や標識などを高精度に認識するAIを開発。日本ならではの自動運転AIを開発する試みです。このほか、4回目となる経済産業省とNEDOが共催するビッグデータ分析コンテストでは、JR東日本が持つデータを用いたインフラ系コンペティションも開催中です。私たちが日々利用する鉄道は、多くの点検員がインフラをメンテナンスすることで安全性を維持しています。今後人手不足が予想される日本で、今と同等以上の安全性を担保するためのAIを開発するプロジェクトです。このように、日本全体にとって大事なテーマのコンペティションが増えてきています。
今後のSIGNATEや貴社の展望をお聞かせください。
SIGNATEに関しては、登録者をさらに増やしていく必要があると考えています。また、データサイエンティストの教育にも力を入れていきたい。これには、クライアント側がAI開発を発注する際のリテラシー向上も含まれます。良質なAIのテーマがあってこそ、本当に実力のある人材の育成が可能になります。また、データサイエンティストが開発した技術を展示して、それをクライアントが選べる「見本市」のような仕組みも創りたいですね。もっとフラットに透明性のある形でAI開発の案件を取引できるようにしていきたいのです。優秀な人材を1社で抱え込むのは社会的な損失。もっとプロジェクトベースで人材を流動化させる仕組みを構築し、データサイエンティストが活躍する場を広げていきたいと考えています。
本社所在地:東京都千代田区四番町6番 東急番町ビル
問合せ先:info@signate.co.jp