Mixed Realityの可能性
~日本航空の「仮想」訓練プロジェクト~(後編)
速水 孝治さん(日本航空株式会社 商品・サービス企画本部 業務部 業務グループ グループ長)
Mixed Reality技術を活用し、パイロットや整備士の仮想訓練システムを実現すべく取り組んでいる日本航空。コックピット空間や航空機のエンジンを3Dホログラム映像で再現し、パイロット訓練生や整備士の補助的なトレーニングツールとして、同社は実用化に向けて動いています。
仮想訓練プログラムの内容やメリットについてについておうかがいした前編に続き、後編ではプロジェクトの背景や今後の展望について、プロジェクトリーダーである同社速水孝治さんにお話をうかがいます。
- 速水 孝治さん(ハヤミズ コウジ)
- 日本航空株式会社 商品・サービス企画本部 業務部 業務グループ グループ長
1992年入社、2000年旅客制度部、2008年国際営業部等を経て、2014年より現職。今回のHoloLensコンセプトモデル開発プロジェクトの代表を務める。
パイロット、整備士とその教育担当が一丸となって議論
Microsoft社とのプロジェクトは、どのような経緯でスタートしたのでしょうか。
2015年1月にMicrosoft社より HoloLensが発表され、3月に日本マイクロソフト社より取り組んでみないかという紹介をいただきました。5月には日本航空としてHoloLensの技術を活用してどのようなことをやりたいか、どのような問題を解決できそうか、米国シアトルに赴きMicrosoft社とも共同で協議し、その後3ヵ月ほどの検証期間を経て、8月からプロジェクトを正式稼働しました。
当初はMixed RealityやHololensの活用の仕方について、私たちは十分には理解できていなかった部分もあったと思いますが、HoloLensのデモ体験やMicrosoft社とのミーティングやディスカッションを多く重ねていく中で、日本航空において最大限活用できる用途が次第に明確になってきました。
そして、私たちプロジェクトチームの熱意が伝わったのか、アジアでは初のビジネスパートナーとして、ボーイング737-800型機の運航乗務員訓練生用トレーニングツール、およびボーイング787型用エンジンの整備士訓練用ツールとして活用していくことが決定したのです。
プロジェクトは、どのように展開されたのでしょうか。
まず、弊社経営陣に将来の訓練の在り方をプレゼンテーションする必要がありました。お客さまの安全・安心を、より良いサービスを提供していくために、この新たなテクノロジーを活用すると何ができるのか。これはやはり映像で見てもらうのが最も効果的であると判断し、Microsoft社にも協力いただき、私たちがHoloLensで実現したい未来像を映像化することにしたのです。
そして、このプロジェクトチームにはパイロットや機長、整備士、それぞれの教育担当者などにも参加してもらいました。職種を超え、会社を超え、国を超えて、チーム一丸となり、取り組みました。何度にもわたるワークショップの様子や、目指したい姿は、最終的にMicrosoft社のプロフェッショナルたちによりムービーとなり、経営陣を納得させるだけの素晴らしいものが完成しました。