IoW(Internet of Work Style)
~生産性を26%向上させた日本マイクロソフトのICT活用事例~ (後編)
越川 慎司さん(日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員)
資料の閲覧や共同作業がいつでもどこでも可能
そうした取り組みは日本だけではなく、Microsoftグローバル全体で実施されているのでしょうか?
はい、Microsoftはすべてのグローバル拠点において共通のシステムを使っています。世界どの国の拠点だろうが連絡を取り合い、資料の閲覧や共同作業をすることが可能です。
例えばいま私がお見せしているこのPowerPoint資料は、15人くらいの共同作業により作られています。従来のようにメールで最新バージョンを送り合うなどということはせずとも、クラウドを通じて編集・閲覧できるし、指示のやりとりもこのように社内ディレクトリから選んで共有することができます。大量のメールに埋もれることもなく、「最新バージョンが結局どれだかわからない」ということはなくなり、いつでもどこでも最新版を共有することが可能です。
また、社員同士がコンタクトしやすいように、このPC画面から電話をかけるということも可能です。試しにここからビル・ゲイツに電話をかけてみましょうか。(実際に電話をかける越川さん)
・・・やはり出ませんでしたね。万が一、出てしまったら困るところでした(笑)。ただ、このようなコミュニケーションを私たちの社員は絶対にしません。なぜならこの画面上でビル・ゲイツは「オフライン」のアイコンが表示されていますよね。今は電話をかけてもつながらないということが本当はわかっているわけです。このように相手の状況に応じて、電話ではなくインスタントメッセージを送っておくなど、最適なコミュニケーション方法を選択できるようにしています。
また、驚かれることもあるのですが、PC機器類はMicrosoft製品以外も使用することができます。社員それぞれごとに使いやすい機器があるはずなので、Microsoft製品以外であっても社内のセキュリティルールなどにすべて対応できるように設定し、機器類を含めて最も生産性の高く働ける状態を実現させています。
IoW(インターネット・オブ・ワークスタイル)という新たな概念
このようなAIやクラウドを使った働き方改革が、もっと広まっていくといいですね。
そうですね。日本のほとんどの企業はOfficeを使っています。12億人以上が使っているシステムはほかにはありません。このような利点を活かし、多くの会社に同様の生産性向上サービスを展開することも実現できます。
そして、ゆくゆくは会社組織内に閉じたシステムではなく、会社の枠を超えてプロジェクトごとに最適なコラボレーションパートナーを探す時間などを削減できれば、より生産性高く仕事ができる。情報を集め、個としてプロジェクトに参加するアグリゲータのような世界観が、そう遠くないうちに日本にもやってくるかもしれません。
オフィス内における私たちの日常的な行動履歴(ビッグデータ)がインターネット経由でクラウドに送信され、クラウド上のAIがそれらを分析して、役立つ示唆やフィードバックをくれる。このようなIoT(Internet of Things)ならぬ、いわばIoW(Internet of Work Style)の時代が、今まさに到来しているのではないでしょうか。