ピアボーナスのケーススタディ
定性的な成果を見落とさない
「縁の下の力持ち」にスポットライトを
近年、人事の領域にテクノロジーを活用する、HRテクノロジーが広がりを見せています。その一つとして、従業員間で報酬を贈り合えるツールが登場したことで、ピアボーナスは大きな広がりを見せています。スマホやPCなどからピアボーナスを贈ることができ、従業員間での相互評価の仕組みを簡単に作れることから、多くの企業で導入が進んでいるのです。
ピアボーナスを導入するメリットは、主に三つあります。まずは従業員のモチベーションやエンゲージメントを高めること。つまり、やる気を引き出し、組織への愛着・コミットメントを高めることです。組織から支払われる旧来の評価制度では、大胆なやり方で大きな成果を上げる人が目立ち、日々細やかな仕事にコツコツと取り組んでいるタイプの人には、なかなかスポットが当たりませんでした。ピアボーナス制度を導入すれば、周囲のメンバーがそういった人たちを評価することができます。人から努力を認められると、うれしいもの。従業員は、賞賛という非金銭的な報酬と金銭的な報酬のどちらも得ることができ、持続的なモチベーション向上にもつながります。
次に、社内の「良いこと」が可視化され、組織の価値観の共通認識を持つことができる点も大きなメリットです。半年あるいは年に一度、査定面談でフィードバックを行うだけでは、期間が空きすぎているために納得感が薄れてしまいます。一方、自分の行いがすぐに反映されるピアボーナスでは、自分の仕事ぶりを頻繁に振り返ることができます。また、「良いこと」の可視化は本人だけでなく、周囲にも影響を与えます。「組織の中で賞賛されている人はこんな行いをしているんだ」と分かれば、他の従業員も参考にしやすくなり、良い行いが浸透していくのです。
また、組織内のコミュニケーションが活性化し、組織風土がよくなることも特筆すべきポイントです。普段なかなか言葉で伝えられない感謝をピアボーナスで表すことによって、コミュニケーションが生まれるきっかけになります。このベクトルが幾重にも重なることで、職場の雰囲気を明るくなるなど、変化が期待できるでしょう。