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【ヨミ】オンラインメンセツ オンライン面接

オンライン面接とは、自宅やオフィスのパソコンのウェブカメラを通じてオンラインで行う面接です。応募者は採用側のオフィスや面接会場へ出向くのではなく、自宅のパソコンから面接を受けられるため、採用プロセスを効率化できます。一方で、デメリットや注意点もあるため、導入については慎重な姿勢で検討しなければなりません。

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1. オンライン面接(Web面接)とは

オンライン面接は、採用側と応募側の双方に時間や費用、労力を抑えられるメリットがあります。日本では2010年頃から導入する企業が増え始めました。また、採用側と応募側が直接会うことなく実施できるため、人との接触を最小限に抑えることが推奨されているコロナ禍において主流になってきています。

IT企業のサイバーエージェントは、2018年4月(コロナ禍以前)入社予定のエンジニアの新卒採用からオンライン面接を実施しています。目的は、地方の大学生の採用強化です。東京に本社を置く同社が地方大学出身者の採用を強化するには、地方からアクセスしやすい場所に面接会場を設ける必要があります。しかし、それでは採用担当者の配置や会場設備のコストなどが問題になります。オンライン面接は通信環境があればどこでも実施できるため、人員配置やコストの問題をクリアしたうえで地方の大学生の採用を促進することができます。

オンライン面接の実態

新型コロナウイルスの影響もあり、2021年卒採用ではやむを得ずオンライン面接を採用していた企業も多かったようです。それでは、2022年卒採用ではオンラインとオフラインのどちらで選考することが理想とされているのでしょうか。

『日本の人事部』では、「インターンシップ」「説明会」「初期選考」「終盤の選考(候補者の見極め)」「内定者フォロー」の5項目において、オンラインとオフラインのどちらを理想とするかについてアンケートを実施しました。オンラインが理想との回答が多かった項目は、「説明会」(63.6%)、「初期選考」(62.3%)、「内定者フォロー」(50.2%)です。一方、オフラインが理想との回答が多かった項目は「終盤の選考」(79.8%)と「入社式」(77.6%)でした。

また、採用活動のオンライン化にかかった期間について、検討から導入までに半数以上の企業が「当月中」あるいは「1ヵ月」で完了していました。このように、採用活動のオンライン化は比較的早く導入できます。ただし、担当者のITリテラシーやオンライン化に対する経営層の考え方により導入が遅れることも考えられます。余裕を持って準備することが大切です。

2. オンライン面接のメリット

オンライン面接の導入の検討時には、オフライン面接との違いやメリットについて確認が必要です。

遠隔地からの応募が期待できる(優秀人材の獲得)

オフィスや面接会場へ足を運ぶ必要がある場合、時間や場所、コストの制約を受けます。そのため、遠隔地からの応募数が少なくなる傾向にあります。一方、オンライン面接は自宅のパソコンからウェブカメラを通じて面接を受けられるため、遠隔地の企業に応募しやすくなります。応募者数が増加することで、優秀な人材を獲得しやすくなる可能性があります。

スケジュール調整がしやすい

オンライン面接は、オフライン面接と比較してスケジュールを調整しやすい傾向にあります。オフライン面接は面接会場の選定や確保、採用担当者の配置などが必要なため、スケジュール調整に労力がかかります。例えば、企業の事情でスケジュール調整をする際、会場を確保している場合は日程変更やキャンセルに別途費用がかかる恐れがあります。

一方、オンライン面接は環境さえ整っていれば、実施する場所を問いません。緊急でスケジュール調整が必要になった場合にも対応しやすくなります。

導入しやすく、オフラインとの組み合わせも容易

オンライン面接の実施には、ネットワーク環境やパソコン・機材、ツール・システムなどの用意が必要です。ネットワーク環境やパソコン・ウェブカメラなどをすでに使用している企業であれば、オンライン面接を速やかに導入できます。

また、オンライン面接の実施にはシステム開発や専門家の配置などは必須ではありません。不慣れな面接官には事前にレクチャーを行う、トラブル発生時の対応を決めるなどといった工夫をすれば、十分にフォローできます。

説明会や初期選考、内定者フォローはオンラインで実施し、終盤の選考や入社式はオフラインで行うなど、容易に使い分けられます。オンライン面接とオフライン面接のメリットとデメリットを踏まえ、自社にとって最適な形式で導入することが大事です。

参加人数の制限が不要

オフライン面接の場合、会場の規模に合わせて参加人数を制限する必要があります。そのため、全応募者との面接にかかる日数が多くなったり、応募人数が少なくなったりすることが懸念されます。

一方、オンライン面接は自宅やオフィスのパソコンで行うため、会場を確保する必要がありません。そのため、応募者数の制限を受けにくい傾向があります。また、オンライン面接に使用するツール・システムの多くは、集団面接にも対応しています。ただし、数十人規模で行う「オンライン説明会」の場合は、同時に接続できる人数の上限に注意が必要です。

3. オンライン面接のデメリット・課題

オンライン面接の導入を検討する際は、デメリットの把握と課題の抽出が必要です。

相手の表情や雰囲気が伝わりづらい

オフライン面接では、相手の表情だけではなく姿勢や目線、身振り手振り、入室時の立ち振る舞いなどから、さまざまな情報を得られます。一方、オンライン面接は画面に映る顔や上半身の一部からのみ情報を得られるため、オフライン面接と比べて非言語情報をつかみにくい傾向にあります。

言語情報から自社に適した人材であることを理解できたとしても、非言語情報を十分に得られなければ採用の可否の判断に支障をきたしかねません。また、「応募者のことを理解できた」と感じにくく、採用判断に不安が残る可能性もあります。

双方の通信環境に依存してしまう

オフライン面接は採用担当者と応募者が対面でコミュニケーションを取るため、タイムラグは発生しません。一方、オンライン面接は双方の通信環境によってはタイムラグが発生します。声が不明瞭になったり抑揚が伝わりにくくなったりすると、応募者の評価が困難になります。また、通信が途切れた場合は、面接開始から終了までに形成される応募者の印象も変化しかねません。

普段は通信環境に問題がなかったとしても、オンライン面接の際に問題が起きる可能性があります。また、通信環境ではなくツール・システムの問題によって、タイムラグや強制終了が起きることも懸念されます。

社内の雰囲気を伝えにくい

オフライン面接は、オフィスで実施することで社内の雰囲気を応募者に伝えられます。自分に合っているかどうかを判断しやすくなり、採用のミスマッチのリスクを低減できる可能性があります。一方、オンライン面接は自宅やオフィスのパソコンを通じて行うため、社内の雰囲気を十分に伝えられません。

応募者の不安が高まる場合がある

オンライン面接では、表情や雰囲気といった非言語情報が伝わりにくい、通信環境の問題でタイムラグが起きる恐れがあるなどの理由でストレスを感じやすく、「適切な評価を受けられないのではないか」と不安を感じる場合があります。強い不安を抱えることで実力を発揮できなくなり、選考に影響を及ぼす可能性も否定できません。

ただし、オフライン選考からオンライン選考への変化にも対応できる人材を求めているのであれば、企業にとって必ずしもデメリットとは言えないでしょう。

4. オンライン面接がうまくいくためのポイント

オンライン面接の失敗は、採用の失敗に直結するため、成功へ導くためのポイントを押さえることが重要です。

オンライン面接のポイント:事前準備

オンライン面接を成功へ導くためには、ツールの導入や面接の構造化、不測の事態への対策など、さまざまな事前準備が必要です。

自社にとって最適なツールを選択する

オンライン面接に使用するツールは、多くのメーカーが提供しています。機能や料金体系、セキュリティ性、他のツールとの連携、使いやすさ、サポート体制などを確認し、自社にとって最適なツールを選択することが重要です。

オンライン面接のツールを選ぶ際は、実際に使用してみて使いやすさを確認します。自社に適したツールだと思って導入しても、面接官から使いにくいとの声が出る場合があります。トライアル期間が設けられているツールは、自社に合っているかどうかを事前に確認できます。

オンライン面接のツールのやり方を確認、共有しておく

採用担当者には、オンライン面接のツールの操作方法を事前に確認・共有します。当日に使い方がわからない、イレギュラーが起きたときに対処できないなどの問題が起きると、面接が滞る恐れがあるからです。

また、面接開始の何分前までにツールを立ち上げてログインする必要があるのかもルール化しておくとよいでしょう。面接開始時間の直前にログインした結果、不測の事態が起きて面接に間に合わなくなる場合があります。その他、面接終了後にツールを閉じたりログアウトしたりといった方法やルールも確認が必要です。

面接の構造化を行う

採用面接では、「求める人材の要件定義」「見極めの精度を上げるための質問設計」「評価基準の設計」の三つが重要です。オンライン面接では非言語情報が伝わりにくいため、評価基準や質問内容を明確に設計しなければ、スムーズに会話を進められません。また、面接で知りたい情報を十分に得られないことで、採用判断が困難になる可能性もあります。面接官や企業そのものに対する信頼感も低下し、志望度が下がる要因になりかねません。

必要に応じてレンタルオフィスを用意する

オンライン面接の採用担当者は、オフィスの一角や会議室などを利用します。個室を利用することがおすすめですが、オフィスの一角を利用するときは、パーティションで空間を区切り、雑音や映り込みを防ぎます。オンライン面接をする適切な場所がない場合は、レンタルオフィスを使用するのも一つの方法です。

レンタルオフィスを借りる場合、オンライン面接のメリットの「会場予約が不要なためスケジュール調整をしやすい」が損なわれる可能性があります。また、レンタルオフィスのインターネット回線の品質やツールとの相性も確認が必要です。

オンライン面接のポイント:実施前

オンライン面接を始める前に面接中のトラブルを防ぐためのポイントを押さえておくことは、大変重要です。

応募者に、面接開始に必要な情報を伝えておく

オンライン面接を開始するには、採用担当者と応募者が指定のURLへアクセスする必要があります。事前に、以下の情報を応募者に伝えます。

  • アクセス先URL
  • 面接開始時間
  • 担当者名
  • 緊急連絡先

また、面接開始時間の何分前からアクセスできるのかも伝えておくとよいでしょう。面接開始時間よりも前にアクセスした場合、その時点から面接を開始するのか、従来の時間まで待機するのかについても伝えておくと、応募者がアクセスする時間を決めやすくなります。

面接官に、応募者の情報を共有する

面接がスムーズに進むように、面接官に応募者の情報を事前に共有します。応募書類は面接官に手渡しするか、画像データを送ります。画像データであれば、パソコンの画面に表示できるため、面接中に手元を見る必要がありません。

応募書類への記載事項は自由に決められますが、新卒採用において、厚生労働省は次の項目を挙げています。自社の求める人材像に応じて、記載事項は削除・追加します。

  • 氏名や住所、連絡先
  • 学歴、職歴
  • 得意な科目、クラブ活動、文化活動など
  • 自分の性格
  • 趣味、特技
  • 資格
  • 志望動機
  • 顔写真
  • 備考欄

また、トラブル発生時の対応について面接官に伝えておくことも重要です。例えば、「アクセスできない」「応募者の声が聞こえない・こちらの声が応募者へ届かない」「タイムラグがある」「ツールが強制終了した」などのトラブルが予見できます。

アクセスできない場合は、面接官がツールを起動していない、入室許可をしていない可能性があります。また、音声が相手に届かない、相手の声が聞こえない場合は、マイクやスピーカーがミュートになっていないかを確認します。タイムラグや強制終了については、通信環境の見直しやツールの再起動で対処します。

面接官に、通信環境を事前に確認してもらう

通信環境の点検として、面接開始前に、面接官と次のポイントを確認するように伝えます。これらの問題を解消することで、面接中にトラブルが起きたり適切な評価ができなくなったりするリスクを軽減できます。

●通信環境の点検事項
  • ウェブカメラは問題なく映るか
  • 適切な音量になっているか、クリアに聞こえるか
  • 騒音はないか
  • 照明の影響でこちらの顔が見えづらくなっていないか
  • インターネット回線は問題なく繋がっているか
  • パソコンの動作が重くないか
  • ツールはスムーズに起動できるか

オンライン面接のポイント:実施中

オンライン面接を成功へ導くためには、応募者が話しやすい雰囲気作りが必要です。面接中のポイントについて詳しくご紹介します。

面接官に目線や表情、話し方のポイントを共有しておく

応募者の適性を正しく評価するためには、応募者の緊張や不安を抑えられる雰囲気作りが必要です。また、言語情報と非言語情報をなるべく多く入手するために、目線や表情、話し方のポイントも押さえます。通常、パソコンのウェブカメラは画面の上にあるため、画面上の応募者の目を見ると、面接官がうつむいているように見えます。応募者に話しかけるときは、目線はウェブカメラに向けることがポイントです。

また、オフライン面接と比べて小さな動作が見えづらいため、少しだけオーバーなリアクションを取るとよいでしょう。そのほか、タイムラグやマイクの性能などの影響で声が聞き取りづらくなることを防ぐために、ゆっくりと明確に、高めのトーンで話すことも重要です。

面接官に面接開始、終了をわかりやすく伝えるように依頼する

オフライン面接では、部屋に入室したときから面接が始まりますが、オンライン面接は開始のタイミングが曖昧になりがちです。面接官に面接の開始と終了をわかりやすく伝えるように依頼します。

面接を開始するときは「ただ今から面接を開始します」、終了するときは「これで面接を終了します」などと、明確に開始・終了を伝えます。

可能であれば、ツールに慣れた人が面接に同席する

トラブルの対処法を面接官に伝えていたとしても、ツールやパソコンの扱いに詳しくない場合は適切な対処ができない可能性があります。

ITに対して十分な知見を持つ管理者が面接に同席すれば、面接官としても安心して選考ができるようになります。応募者には、「不測の事態に備えるために管理者も同席する」と伝えておくとよいでしょう。管理者の画面をOFFにすることで、応募者が面接に集中しやすくなります。

面接官が複数人の場合の注意点を伝える

複数の面接官が選考する場合は、声が重ならないように注意が必要です。オンライン面接では、面接官同士の非言語情報も伝わりにくいため、誰かが話そうとしているときに別の人が話してしまうことがあります。また、声が聞こえた方向から誰が話そうとしたのかを考えて、譲り合うことも困難です。

このようなトラブルを防ぐために、面接官ごとに話す時間を設けたり、話すときは手を挙げたりするなど、スムーズに面接が進むための工夫が必要です。また、役割を分担することも効果的です。一人が質問をし、一人が態度を見るように工夫すれば、声の重なりが発生しにくく、面接での情報を整理しやすくなります。

オンライン面接のポイント:実施後

オンライン面接の終了後は、「応募者の企業に対する信頼感や志望度の向上」や次回以降の「面接内容の充実化・トラブル防止」などを目的に、次のように行動します。

応募者へ通信環境が問題なかったかなど、フォローを行う

応募者に対して、通信環境や不便な思いをしたことはなかったかなどを確認します。また、採用担当者に対する印象を質問する、面接における応募者の良かったところを伝えるといったことも重要です。このようなフォローは、応募者の企業に対する信頼感や志望度の向上につながる可能性があります。

アンケートを実施し、面接で伝えきれなかったことを確認する

時間的都合や予期せぬエラー、通信環境の問題で途中終了したことなどにより面接で伝えきれなかったことがある場合は、アンケートを実施します。また、できなかった質問もアンケートで回答を求めます。オンライン面接は、必ずしも予定していた内容を完璧に実施できるとは限りません。このようにアフターフォローや面接後のアンケートで補填することも大切です。

課題を抽出して次回以降に活かす

オンライン面接の課題を抽出して、次回以降の面接に活かします。例えば、オンライン面接のツールが起動しなかったり強制終了したりするのに備えるために、あらかじめ二つのツールを用意する方法があります。

また、応募者へのアンケート調査で「面接官の表情がわかりにくかった」との回答が多かった場合は、話し方や表情、リアクションなどを見直します。オンライン面接の歴史は浅く、十分なノウハウを持たない企業が少なくありません。トライアンドエラーを繰り返して、オンライン面接の質を高めることが重要です。

5. オンライン面接は今後不可欠のツールに

採用面接に限らず、コロナ禍の影響であらゆる企業活動の電子化・オンライン化が進んでいます。企業の未来を担う人材の育成や研修も例外ではありません。ただし、以前と比べてオフラインの場を設ける企業が増加傾向にあります。

その一方で、採用活動はオンラインのまま進めている企業も多いため、オンラインの採用活動に大きなメリットを感じている採用担当者は多いのではないでしょうか。オンライン面接は、採用活動において不可欠な取り組みになる可能性があります。ただし、非言語情報を得られにくい、通信環境の整備が必要など、いくつかの課題やデメリットもあるため、自社にとっての適性を見極めることが重要です。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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