モダナイゼーションのケーススタディ
2025年の崖を回避できるか?
求められるのは、ビジネス成長につながる近代化
「2025年の崖」という、日本でDXが推進されなかった場合に発生する、企業の急激な競争力の低下について警鐘する言葉があります。経済産業省の試算によると、DXが進まないことによる経済損失は2025年以降、年間最大12兆円にものぼる可能性があるそうです。
日本企業の多くは、何十年も前に構築したレガシーシステムを使い続けており、老朽化が問題視されています。そうしたシステムは、維持管理コストがかさむ上、仕様を変更しようとすると時間も費用も膨大に必要になります。また、長く使われ続ける中でシステムが複雑化・肥大化。詳しい担当者も不在となり、ブラックボックス化している企業もあります。まったく新しいシステムに刷新するには大きなリソースを要し、新しい技術の習得も必要になるため、必要性は感じていても仕方なくレガシーシステムを使い続けている企業も多いでしょう。
新型コロナウイルス感染症の流行は日本におけるDXの現状を浮き彫りにしました。社会のあり方が大きく変容したとき、ビジネスを支えるシステムが迅速に対応できることが理想ですが、日本企業が利用している業務システムではコロナのような想定外の変化に対応しきれず、迅速なアクションの足かせとなってしまったのです。
Gartner社の2021年11月の調査によると、業務アプリケーションのモダナイゼーションに取り組む企業のほとんどで、その取り組みは道半ばであり、完了にはさらに数年を要することがわかりました。また、モダナイゼーションに期待する効果については、「稼働環境/インフラ・コストの削減」(47.9%)、「業務コストの削減」(44.0%)、「アプリケーション保守コストの削減」(41.2%) と、コスト削減が上位にあがりました。
この結果に関し、同社は「モダナイゼーションがコスト削減の手段として捉えられ、ビジネスの成長手段としての視点が盛り込まれていないケースが多い」と懸念の声を示しています。コスト削減を前提に取り組みを進めてしまうと、本来DXでもたらされるべき変革が行われなくなってしまいます。コスト削減は大切な視点の一つですが、近代化されたシステムはこれまでと同じ機能を担うのではなく、ビジネスの成長につながる役割が求められています。
・参考
Gartner、日本企業のアプリケーションの近代化に関する調査結果を発表