テキストマイニングのケーススタディ
テキストコミュニケーションを分析し、
社員の本音を人事に活用
企業では社内チャットや社内SNS、イントラネットなど、さまざまなツール上でテキストによるコミュニケーションが行われています。また、1on1やチームミーティングなどの対面でのやり取りも、音声認識技術が向上したことにより、自動でテキスト化できるようになりました。このように近年、人事領域で活用できるデータの総量は爆発的に増加しています。データには人事のヒントが詰まっており、それをいち早くキャッチすることで、今後の施策に生かすことができます。
例えば、「離職防止」への活用。HRテクノロジーサービスの中には、従業員のアンケートや業務日誌などを分析することで、離職防止に役立てるものが登場しています。離職者のデータをテキストマイニングによって分析することで、離職の予兆をスコア化し、リテンション施策に生かすこともできるでしょう。
また、テキストマイニングは「ハイパフォーマーの育成」にも活用できます。パフォーマンスの高い従業員を増やすためには、まず現在のハイパフォーマーの行動を知らなければなりません。もちろん、第三者からの評価もハイパフォーマーの条件を考える要素になりますが、そこには評価者の主観的な意見も含まれてしまいます。ハイパフォーマーが発言している内容などをあわせて分析することができれば、より深くその特性を理解することができるでしょう。例えば、優秀な営業職の従業員がどのように顧客とのコミュニケーションを取っているかをテキストマイニングによって分析すれば、彼らが持つ行動特性や営業トークを可視化できます。こうしたスキルが明らかになれば、他の従業員を育成する際にも役立つでしょう。
人事領域でのデータ活用にはさまざまな方法がありますが、コミュニケーションは情報の宝庫。情報を分析することで、さまざまな施策に生かすことができます。ただし、注意しなければいけないのは、情報を取得・分析する際にしっかりと従業員に説明し、許可を得てから活用する必要があること。そうしなければ、どんなデータを取られているのか従業員が疑心暗鬼になり、かえってモチベーションの低下につながりかねません。
また、分析によってわかるのは、あくまで「傾向」です。離職者と似た傾向があるからといって、必ずしもその従業員が離職してしまうわけではありません。一指標として参考にし、対策に活用することが望まれます。とはいえ、これまで見えなかったものを明らかにするHRテクノロジーは、人事を大きく変える可能性を持っていることは間違いありません。人事担当者には、こうした技術をうまく利用し、自社の成長に寄与することが求められます。