テレワークの定着には「社員の自律・自発的な働き方」が重要
――日本テレワーク協会に聞く成功のコツ
一般社団法人日本テレワーク協会 専務理事
田宮 一夫さん
リモートワーク・働き方、社内コミュニケーション、テレワーク、在宅勤務、日本テレワーク協会、基礎、実践
在宅勤務を契機に模索したい、多様な働き方や新しい就業の形
テレワークで成果を出せる組織をつくっていくために、企業の経営者や人事は、何をすべきでしょうか。
社員が在宅やモバイルで業務を行いやすいように環境を整えたり、セキュリティーや情報管理の対策が施されたシステムを導入したり、就業規則や労務管理を見直したりといった、さまざまな導入項目があります。
加えて、「組織形態を見直してみる」ことも一つの手立てといえます。顔をあわせて同じオフィスで働いていく上では、一人のマネジャーが10名~20名のメンバーを率いながらチームオペレーションすることも可能でした。
しかし、在宅勤務をしている人もいれば、出社している人もいる、モバイルワークで直行直帰する人もいるというテレワークを併用する状況下では、適切なマネジメントの規模も変わってくるはずです。マネジメントのスタイルも、対面ではなく、チャットやコミュニケーションツールを活用したやり方に変化しています。
こうしたことから業種や職種にもよりますが、組織規模やマネジメントの管理範囲、マネジメント手法などを見直していく必要があると感じています。
今後、日本テレワーク協会で、企業のテレワーク推進に向けて新たに取り組まれる、また強化される取り組みなどがあればお聞かせください。
今回の新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、在宅勤務を導入する企業が一気に増えました。在宅勤務を経験して良かったこと、あるいは改善が必要なことが、企業ごとに見えてきたかと思います。
例えば在宅勤務だけではなく、駅近や社宅の近くにサテライトオフィスを構えることを検討している企業もあります。サードプレイスやコワーキングスペースを設けることで、在宅勤務での課題や不安を解消しようとする動きです。
総務省では、東京一極集中ではないオフィスのあり方にも言及しています。在宅勤務を続けるなかで「どうせ家で仕事をするなら、趣味のサーフィンができる場所に引っ越したい」「夏は涼しく、冬は暖かい場所で暮らしたい」などと想像をめぐらせた方も多かったのではないでしょうか。
企業においても、都心のオフィスの在り方やスペースなどの見直し、地方オフィスの活用などの声が聞かれるようになってきました。オフィス機能を分散しておくことはリスクマネジメントの観点からも重要です。
また、障がいのある方をはじめ、これまで通勤すること自体がハンディキャップになっていた方も、在宅勤務であれば就業の選択肢が広がります。地方に住んでいる障がいのある方が、都心の企業に就職することも可能になるわけです。
テレワークによって通勤の概念が変わったことで、就業の仕方にも選択肢が広がり、場所や時間の制約を超えた人材活用が可能になってきています。食品メーカー大手のカルビーが単身赴任や全国転勤を見直す方針を決めたのも、印象的な出来事でした。今回のコロナ禍を一つの契機に、テレワークなどを活用した多様な働き方や従来にはなかった新しい就業の形が広がっていってほしいと切に願っています。
(取材は2020年7月1日、オンラインにて)