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トレンドキーパーソンに聞く2020/07/30

テレワークの定着には「社員の自律・自発的な働き方」が重要
――日本テレワーク協会に聞く成功のコツ

一般社団法人日本テレワーク協会 専務理事

田宮 一夫さん

実践日本テレワーク協会基礎リモートワーク・働き方社内コミュニケーションテレワーク在宅勤務

テレワークの成功の鍵は、性善説とチームのコミュニケーション

在宅勤務を導入した企業は、どのような点にテレワークのメリットを感じているのでしょうか。

テレワークのメリット

通勤や移動の時間を削減できることは、大きな利点でしょう。在宅勤務を体験したことで「なぜこれまで、あんなに時間をかけて通勤していたのだろう」と感じた人は多かったはずです。例えば、自宅からオフィスまで往復3時間かかっていたとして、その時間を削減できたらどうなるか。家族の面倒を見なければならない人や子育て中の人にも、少し時間の余裕が生まれるでしょう。

在宅勤務のメリットを感じているのは、都心で働く人だけではありません。地方で働く人からも、車での移動による労働災害リスクが低減したとか、出社の際に渋滞を考慮しなくて済むようになったなど、「通勤時間が少なくなることの効果は意外に大きい」という声は多いのです。

ただ、緊急事態宣言が解除されて以降、「在宅勤務にメリットを感じたので継続したい」と考える企業と、「在宅勤務には向かないことがわかったので出社に切り替えたい」と考える企業で二極化している印象を受けます。

当然、業種や職種によって在宅勤務の向き不向きはあるかと思います。しかし、在宅勤務から少し視野を広げて、テレワークとして別の施策を試してみることを、ぜひ検討してほしいですね。

テレワークを推進できるかどうかの大きな鍵を握るのは、経営トップの強いリーダーシップです。中間管理職や現場マネジャーの方々が「部下の仕事ぶりが見えなくなること」に大きな抵抗感を持つようであれば、テレワークはなかなか定着しません。マネジャー自身が「テレワークに合わせたマネジメント」を意識し、自身が率先垂範で取り組んだ組織はテレワークの導入、定着もうまく行っているところが多いです。

例えば、チャットなどのコミュニケーションツールを取り入れて気軽に雑談できる環境をつくったり、在宅でも自分以外の人がいまどんな仕事をしているかがわかるようにチームの仕事を「見える化」したり、工夫を積み重ねていけば、評価のときにも、成果だけで判断するというドラスティックな結果にならず、丁寧なコミュニケーションで仕事のプロセスを見ていくことができます。

一方、一人で働くことによって孤独を感じたり、メンタル面での不調を覚えたりする人もいます。こうした不調にいち早く気づくため、接触の機会を増やしている企業もあります。グループチャットで朝礼を行ったり、個別での面談を行ったりしています。

グループチャットでの朝礼や個別面談を行うケースもある

グループチャットでの朝礼や個別面談を行うケースもある

日本テレワーク協会ではテレワーク勤務の場合、その日の始業時間と業務内容、終業予定時間をメールで一斉配信するようにしています。

勤怠管理の目的だけではなく、それぞれのメンバーが現在担当する業務内容や進捗状況・課題などを共有できるようにしているのです。当協会は所属人数も少ないので、特別なツールをいれなくてもメールで十分に共有できています。

テレワークを推進していくうえで、チーム内のコミュニケーションをいかに活性化していくかが重要なポイントになりそうですね。テレワークでのコミュニケーションがうまくいっている企業に共通点はありますか。

厚生労働省や総務省がテレワーク導入、活用している好事例企業を表彰し、日本テレワーク協会でも「テレワーク推進賞」を選考していますが、受賞企業の経営者やマネジャーに話を聞くと、「テレワークを行う上での原理原則は『性善説:社員の自律・自発的な行動』が定着の要因です。見えないところで働くために会社が管理するといった『性悪説』では絶対にうまくいきません」と口をそろえて言われます。「在宅勤務は部下の仕事ぶりが見えないから、監視を強化しよう」という姿勢ではチームの雰囲気が悪くなり、生産性も下がるというわけです。

こうした事態に陥らないよう、テレワークを何のために導入するのかという原点に立ち戻らなければなりません。本来は、社員一人ひとりがいきいきと活躍できる多様な働き方を実現するためでしょう。社員はそれぞれ家族構成も違えば、生活環境も異なります。お互いの時間をより有効活用できるような働き方を実現し、企業として最大の成果に結びつけていくための手段としてテレワークの導入・活用が求められているわけです。


実践日本テレワーク協会基礎リモートワーク・働き方社内コミュニケーションテレワーク在宅勤務

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