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トレンドキーパーソンに聞く2020/07/30

テレワークの定着には「社員の自律・自発的な働き方」が重要
――日本テレワーク協会に聞く成功のコツ

一般社団法人日本テレワーク協会 専務理事

田宮 一夫さん

実践日本テレワーク協会基礎リモートワーク・働き方社内コミュニケーションテレワーク在宅勤務

緊急事態宣言以降、テレワークに関する問い合わせが500倍に

日本テレワーク協会には、テレワークの導入を検討する企業からの問い合わせが殺到しているとうかがいました。問い合わせ数は、どのように変化しましたか。

時系列で振り返ると、1月27日に、GMOインターネットグループが在宅勤務体制への移行をいち早く開始しました。2月18日には、首相官邸で開催された新型コロナウイルス感染症対策本部で安倍総理が「テレワークなども有効な手段」と発言し、徐々にテレワークに注目が集まる流れはできていました。しかし、私たちの感覚では、2~3月時点では在宅勤務を行っている企業はまだわずかで、問い合わせも微増程度でした。

社会の雰囲気が一気に変わったのは、4月7日に「緊急事態宣言」が発出されてからです。1日10~20件程度だった問い合わせ数が、5000件超に跳ねあがりました。電話回線を増設し、緊急でコールセンターを立ち上げても、全てには対応できない状況になりました。

企業からの問い合わせは、どのような内容が多かったのでしょうか。

最も多かったのは助成金や補助金の申請についてです。緊急事態宣言が発出されたことで、なにも準備をしていなかった企業も、在宅勤務を検討しなければならない状況になりました。

「社員にパソコンを貸与する場合、助成金や補助金の対象になるのか」「在宅勤務を行うにあたって、労務管理や就業規則を変更する必要があるのか。社会保険労務士や専門家に相談した場合、相談費用に助成金を活用できるのか」といった問い合わせが多かったですね。とにかく、右も左もわからない中、多くの企業が手探りで在宅勤務を進めていったのが実情だと思います。

在宅勤務導入で見えてきた課題――ハンコ文化と書類の壁

オフィス勤務から在宅勤務にスムーズに移行するために、企業はどのような取り組みを行なうべきでしょうか。

ハンコ文化と書類の壁

新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止がきっかけとはなりましたが、多くの人が在宅勤務を経験できたことは前向きに捉えています。それぞれの企業で、在宅勤務によるメリットや課題が見えてきたのではないでしょうか。

在宅勤務で困っていることとして一番聞かれたのが、「ハンコ文化」の壁です。ある調査によると「業務でハンコによる承認が必要」と回答したのは全体の約75%。そのうち約25%は電子決済などの導入で、ハンコによる承認を取りやめています。

残りの50%の企業でハンコ文化が残るわけですが、その中身を見てみると、対外的な契約でハンコを必要としている割合よりは社内承認の目的で使われているケースの方が多いという結果が出ています。

ここに工夫の余地があると考えています。例えば、権限を下位の管理職に委譲して承認プロセスを簡略化したり、電子決済やメールでの一次承認を許可したり……社内での承認プロセスを少し工夫することで捺印のためだけに出社する工数を減らせるはずです。

併せて、「出社しないと必要な書類を見ることができない」というケースもよく聞かれます。これもハンコ文化と同じで、紙の書類であればペーパーレス化したり、クラウド上に電子化したファイルを保管したりすることで、いつでもどこでも書類を閲覧できる環境を構築することができます。

企業が、在宅勤務をはじめとするテレワークにどれだけ必要性を感じ、工夫できるかが肝になりそうです。

テレワークのやり方に正解はありませんから、日本テレワーク協会として「こうしてください」という一律の回答を申し上げにくい側面があります。ただ、「〇〇ができないから在宅勤務を導入しない」ではなく、それぞれの企業の文化やルールのなかで、業務プロセスを見直し、「できないこと」を工夫で乗り越えていくことが大切です。

課題が見つかるたびに、「なぜ、できないのだろうか」「どうやったらできるようになるだろうか」と一つずつ考えてみてください。テレワークを円滑に進めるための管理ツールや、在宅勤務に活用できるHRテクノロジーも数多くありますから、気になるものがあれば、これを機に使ってみるとよいかもしれません。

ただし、すべての課題をテクノロジーで一気に解決しようとすると、かえって大変ですから、業務プロセスを見直したうえで、必要性の高いことからまず試してみるといいでしょう。


実践日本テレワーク協会基礎リモートワーク・働き方社内コミュニケーションテレワーク在宅勤務

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