圧倒的な生産性向上が実現する「RPA革命」の衝撃
~人事部門に求められることとは?~
一般社団法人日本RPA協会 代表理事 / RPAテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長/
大角 暢之さん
2016年は「RPA元年」。国家レベルで広がるニーズ
RPAはどのように人の作業を自動化するのでしょうか。
さまざまな方法がありますが、最も簡単なのは、PCの作業手順をブラウザー上の操作画面で登録し、記録することです。あとはその手順を繰り返すように自動化するだけで、プログラミングすることなく、記録通りの操作を24時間365日休まず実行することができます。不平不満も言わず、病気にもかからず、人間の身代わりとなって作業を行ってくれるし、人とは比べようもないほど圧倒的な能力を無尽蔵に発揮してくれる。まさに理想的な「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」と言えるでしょう。
デジタルレイバーが人手作業を代行する(「一般社団法人日本RPA協会」資料より)
例えば、三菱東京UFJ銀行ではPCで行う20種類の作業にRPAを導入し、一定の時間ごとに処理が必要な業務に関しては、規定の時間に作業を行うよう自動化しました。その結果、年間で事務処理にかかる約8000時間を削減し、システムと連携することで業務の標準化も視野に入ってきました。
また、日本生命保険では2014年からRPAを導入。請求書に書いてある10けたの証券記号番号をスキャンするだけで社内システムを横断し、必要なデータを収集・照合して、業務システムへ新たにデータを入力する作業を一気に自動化しました。その結果、1件あたり数分かかっていた作業時間が約20秒に短縮。単純なミスもなくなりました。作業に当たっていた人員を約8割削減し、より柔軟な対応が必要とされる部署へ配置転換することもできた。導入の際にはRPAをキャラクターに見立て、「日生ロボ美ちゃん」として入社式も行ったのですが、これは日本ならではの現象かもしれませんね。おそらく海外では「我々の業務がロボットに取って代わられる」と反発され、現場からはRPA導入の起案すら起こらないでしょう。半面、日本ではまさに現場に課題がある。デジタルレイバーはその課題を解決し、自分たちの代わりに業務を行ってくれる助っ人であり、救世主なのです。
日本でも「AI(人工知能)によって消える職業がある」「仕事が奪われる」などといった懸念を示す声も聞かれます。RPAに対する反発や不安の声もあるのではないでしょうか。
確かに、私たちが事業を始めた当初はそういった反応があったことも確かです。ただ、その多くは「何かわけのわからないもの、新しいものに対する不安」だったように思います。そういった傾向に最初に変化があったのは、2011年に大手損保グループの生保会社様がRPAの導入を決めてくれたことでした。同社は現場から切実な要望があり、業務の効率化が喫緊の課題でした。そこでシステム導入よりも安価、かつ既存システムに手を入れることなく、スピーディーに導入できるRPAに白羽の矢が立ったわけです。圧倒的な業務効率化を果たしたことで、その後のグループ全体でのRPA導入へとつながりました。2014年の日本生命保険の導入も、RPAへの注目が集まる大きなきっかけでした。
そして、2016年はまさに「RPA元年」。5月に経済産業省の担当者によるヒアリングが行われ、11月には国会答弁の下書き作成にRPAを含む、AIやリモートワークの活用を検討すると発表されました。労働人口の不足が国家レベルの危機感として共有されたわけです。地方で働く方々や人事部門の方は、その危機感をいま目の前にある課題として実感されていることでしょう。これだけ「働き方改革」と叫ばれて、長時間労働の是正を求められている中、接客小売業や介護業などのサービス業を中心にどんどん人が足りなくなっている。派遣業界にもしわ寄せがおよび、十分に研修・育成の時間を取れないまま、現場へ放り出された人材が、クレームを招く種となっているわけです。実際、派遣業界は非常に早い段階でRPAを導入していました。それがより現場に近い部署からのニーズとして顕在化し、これだけ注目を浴びているというわけです。