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「すべての社員に優秀なバーチャル秘書を」
AIソリューション「TRAINA」が目指す働き方の未来とは(前編)

株式会社野村総合研究所/
堀 宣男さん(ビッグデータイノベーション推進部長)
小髙 徳彦さん(ビッグデータイノベーション推進部 グループマネージャー)

2017/10/06実践人工知能(AI)働き方改革リモートワーク・働き方

株式会社野村総合研究所 堀 宣男さん、小髙 徳彦さん

AI(人工知能)の進化は、私たちの仕事のあり方を確実に変えつつあります。これまで人間が行っていた業務を、より効率的に、より正確に代替できるAIは、「働き方改革」を大きく前進させるためのキープレイヤーとなることを期待されているのです。野村総合研究所が独自に開発・提供する AIソリューション「TRAINA(トレイナ)」も、その一つ。これまで、煩雑な書類や申請が多い人事業務では、多くの担当者が社員からの問い合わせ対応に時間を取られてきました。しかしTRAINAを使えば、社員が送ったメッセージにAIが自動で返信し、社員と会話して、申請に必要な書類まで教えてくれます。こうしたAIの進化は、働き方改革にどのように寄与していくのか。TRAINAの開発に携わる、野村総合研究所・ビッグデータイノベーション推進部の堀宣男さんと小髙徳彦さんにお話をうかがいました。前編では、TRAINAの開発背景や強みについて語っていただきます。

株式会社野村総合研究所 ビッグデータイノベーション推進部長 堀 宣男さん
堀 宣男さん(ホリ ノブオ)
株式会社野村総合研究所 ビッグデータイノベーション推進部長

1995年入社。当初はテクニカルエンジニアとして、DWHやBI、GIS、データマイニング関連のプロジェクトを担当。2001年からはテキストマイニングソリューション「TRUE TELLER」の立ち上げに携わり、製品開発や営業・プロジェクトなどを担当する。2005年 ナレッジ管理ソリューション「FAQナレッジ」、2010年 対話要約ソリューション「VOICEダイジェスト」の製品企画を行った。2012年からビッグデータビジネスを担当し、現在に至る。 

ビッグデータイノベーション推進部 グループマネージャー 小髙 徳彦さん
小髙 徳彦さん(オダカ ノリヒコ)
株式会社野村総合研究所 ビッグデータイノベーション推進部 グループマネージャー

2001年、株式会社野村総合研究所に中途入社。テクニカルエンジニアとして、システム開発の方式設計・開発などを担当し、2010年からはR&D部門にて先進技術の実用化の研究開発に携わる。2013年からビッグデータビジネスを担当し、現在に至る。

「言葉をデータ化する」技術を発展させて生まれた
TRAINA

IBMの「Watson(ワトソン)」やマイクロソフトの「りんな」など、AIソリューションの世界には競合がひしめいています。この状況の中で、野村総合研究所が独自のAI開発を進めている背景を教えてください。

堀:私たちの所属するビッグデータイノベーション推進部は、約5年前に立ち上がりました。世間で「ビッグデータ」が話題となり、世間の関心もどんどん高まっていた時期です。一方で、「ビッグデータをどう使えばいいのか分からない」と悩むクライアントも多く、コンサルティングの視点から新しい発想でビッグデータ活用を提案していきたいと考えました。

それまでにも野村総研では、ありとあらゆるテキスト情報を解析してビジネスに生かす、テキストマイニングソリューションを提供していました。この担当部署とも合流して、言語処理に強みを持ち、定量データだけでなく定性データも取り扱うことができるAIソリューションの開発を行うことになったのです。

「定性データによる言語処理」とは、具体的にどういうことを行うのでしょうか。

堀:例えば、社内で大規模なアンケート調査を行うとします。選択式で回答できる設問については、定量的な5段階評価などを設定して平均値を出せますが、大量に寄せられるフリーコメントは定量化できません。一つひとつのコメントに人が目を通すという、途方もない手間が必要です。

そこでテキストマイニングの技術を用いて、フリーコメントなどをすべて収集し、統計的に解析できるようにしました。データ量は、10万件でも20万件でも対応が可能です。

「文章を理解する」という、それまでは人間にしかできなかった仕事にAIが対応できるようになったわけですね。

堀:はい。テキストによる大量の定性情報を効果的に、素早く集約できるので、ネット上に分散する顧客の声を分析することも可能です。実際に担当者が聞ける顧客の声はどうしても限られてしまいますが、テキストマイニングの技術を活用することで、人間の力では集められなかった声に触れることができるのです。

テキストマイニングをもとにして、全文検索や音声認識、その内容を要約する技術、さらに対話技術へと開発が進んでいきました。その集大成として生まれたのがTRAINAです。

利用者から問い合わせがあれば、AIが自動でヒアリングを行いながら、利用者が求めているものが何であるか推測し、回答することが可能です。たとえば、自動車保険への問合せとして、「ドアに指をはさんだ」というメッセージが送られてきたとします。この場合、「おそらく利用者は車のドアに指をはさんでけがをしたため、それが保険適用になるかを知りたいのだろう」と推測できます。しかし、「ドアに指をはさんだ」という情報だけでは、それが保険適用になるのかどうかを判断することができません。そこで、利用者に「指をはさんだのは契約者本人か」「けがをしたのは車に乗るときか、それとも車を修理しているときか」といった質問をし、会話をしながら答えを絞り込んでいきます。

文章メッセージに限らず、コールセンターなど、音声で寄せられる質問への対応も可能です。その場合には、音声認識で内容を文章化し、その内容を要約しながら顧客の質問の意図を推測します。情報が足りない場合は、メッセージの場合と同じように、どんな質問をすれば答えを絞り込めるのかを示してくれるので、熟練したオペレーターでなくても聞くべき質問がわかります。


2017/10/06実践人工知能(AI)働き方改革リモートワーク・働き方

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