[ 寄稿 : デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ]
データを武器に、人事が進化する
~ピープル・アナリティクスのトレンドと導入の第一歩~(後編)
ピープル・アナリティクスの始め方
2016/10/31基礎、ピープル・アナリティクス、デロイト トーマツ コンサルティング
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ステップ4: Leaderと共に「ロードマップ」を描く
データと人材の選抜が終わり、いよいよ分析へと行きたいところではあるが、分析の前に目的を踏まえた簡単なロードマップ、実施プランを策定し、リーダーと共に継続的に取り組む価値を確認しておく方が望ましい。
その際、ロードマップには、
・初期の取り組みの延長上にあるビジネス上の目的、将来的なバリューが明示されているか
・将来的なバリューを出すためのケイパビリティの向上が示されているか
を確認してほしい。
当社では、先に挙げた通り「ホワイトカラーにおける会議の生産性向上」を初期の取り組みの目的としたが、その一方でリーダーと共に会議のデータを分析することで得られた知見をどのように展開していくのかという点を議論し、「人と人とのよりよい組み合わせやコミュニケーション手法を明らかにすることで、チームのダイナミクスを高め、BPRや人材開発と組み合わせて企業の価値を高める手法を開発する」ことを将来的な目標とすることにした。
その上で、「会議」の場で得たデータの将来的なビジネスにおける活用方法や各種センサーやAIなどのツールについても議論を行い、ロードマップを作成している。このような活動を通して、リーダーは将来的な価値と共に投資に対する辞め時をイメージすることもでき、安心してGoサインを出すことができる。
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ステップ5: Dataの分析を行い「指標」と「ロードマップ」を検証する
・現在できる分析方法で、多くの示唆が出せているか
・示唆のうち、「指標」に換算しやすそうなものが見つかったか
を意識して分析を行っていってほしい。
始めてみると、データの精度の問題もあり、想像以上に分析方法は限られることが多い。しかし、初期は複雑な分析をしても、報告を受ける側がそれを租嚼し受け入れる状態にない場合が多いので、気にせずに実施できる手法で軸や標本を変えるなどして多くの分析を行った方がよい。むしろその後「指標」に換算することができる示唆がないと継続につながらない。その場合、分析手法、指標、データ、ツールなど見直しをする方がよい。
我々の場合、当初脈波センサーによる会議内での感情面の動きを測定していたが、センサーの精度が想定よりも低かったため細かな時間軸での分析が難しいことが判明した。そこである程度の時間でまとめた上で、発話時間とあわせて分析することで、一方的な会議と双方向的に議論される会議とでの感情面での違いを明らかにすることができた。
その一方で、双方向的な会議であることと会議の生産性の指標との関連が分かりにくく、他のデータソースと組み合わせないと取扱いが難しいということも明らかになり、ロードマップの中で脈波センサー自体の扱いの見直しを行うこととなった。このように「指標」への換算が困難であることが明らかになった場合、分析方法を含め、再検討を行うとよい。
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今がピープル・アナリティクスの始め時
以上が、我々が実際に社内で展開してきた知見を基にお勧めするステップである。ご想像の通り、実際にはこのステップ通り進めてきた訳ではなく、試行錯誤の中、多くの関係者と議論をして進めている。
ただ、ビジネス誌でもピープル・アナリティクスがとり上げられ多くの経営層が興味関心を持っている今こそ、ピープル・アナリティクスを開始するチャンスだと思われる。このチャンスを活かして開始し継続的な取り組みへと繋げることができれば、データの質、量、分析者のスキルが高まると共に、経営層、ビジネスラインの分析に対する理解力、関心が高まり、実際の業務の改善に結びつく発展的な取り組みへとつながっていくことが期待できる。是非今回のステップを参考にピープル・アナリティクスを開始していただければと思う。