[ 寄稿 : デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ]
データを武器に、人事が進化する
~ピープル・アナリティクスのトレンドと導入の第一歩~(前編)
新たなデータ活用が可能にする未来予測と、行動や感情の「見える化」
2016/10/31基礎、ピープル・アナリティクス、デロイト トーマツ コンサルティング
04
ピープル・アナリティクスで実現する、
客観的・先読み型の人材マネジメント
最後に、ピープル・アナリティクスを活用した近い将来の企業の人材マネジメントのイメージを描いてみたい。ご紹介した未来予測と行動や感情の「見える化」が部分的にでも実現することで、人事の取り組みが従来よりも客観的で先読み型になることを感じとっていただければ幸いである。自社の姿も想像しつつご一読いただきたい。
2020年のとある販売会社。人事部長がタブレットからアナリティクスダッシュボードを開くと人事のKPIが数字で表れ、対前月比の変化が一目でわかる。確認すると営業部員一人当たりの売上高と社員エンゲージメントの直近の推移は横ばいだが、両者への影響度が高いとされている社内コミュニケーション量が2ヶ月前と比べて20%も増えており、調べると3ヶ月前に行った休憩スペースのリニューアル効果が表れているようだ。この様子なら、売上高やエンゲージメントも向上が見込まれそうだ。
ダッシュボードの次のページには、今後6ヶ月以内に退職する確率が50%超の社員が表示されている。その中にエース級人材が2名いて、退職による損失は単年で数千万円に及ぶとの試算が出た。調べると、同社の退職リスク要因の上位5要素のうち、拠点全体の業績未達成と本人の担当業務の長期固定化で赤信号がついている。人事部長は早速2名の上司と協働で退職抑制に向けた方策を話し合うことにした。
営業部門では、会議の質を担保しつつ所要時間を20%減らすことに成功した。新しく導入したAIファシリテーターが会議参加者の発言量や表情をリアルタイムに読み取り、程よく参加者に発言を促してくれるのだ。これにより各々がアイディアを考えることに集中しやすくなった。また、AIファシリテーターは週次の進捗報告会の所要時間や満足度の推移を数値化してくれるため、主催者は少しプレッシャーを感じるものの、ダラダラと内容の薄い会議をすることが激減したのである。
近い将来、ピープル・アナリティクスの取り組み如何で、人材マネジメントにおける差がつくであろうことは想像に難くない。そこで後編は、これからピープル・アナリティクスを検討し始める企業のために、成果を上げるために必要なステップをご紹介する。
∗ ∗ ∗
出典:
■「ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える」(東洋経済新報社、2015年 著:ラズロ・ボック)
■「職場の人間科学:ビッグデータで考える「理想の働き方」(早川書房、2014年 著:ベン・ウェイバー)
■グローバル ヒューマン キャピタル トレンド 2016
→ http://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/human-capital/articles/hcm/global-hc-trends-2016.html
■re:Work “JetBlue: Hiring crewmembers with the skills to thrive”
→ https://rework.withgoogle.com/case-studies/JetBlue-hiring-crewmembers-with-skills-to-thrive/
■TIME “Google Study Gets Employees to Stop Eating So Many M&Ms”
→ http://newsfeed.time.com/2013/09/03/google-study-gets-employees-to-stop-eating-so-many-mms/
■Daily Mail Online “Google applies data wizards to solve the problem of their staff eating too many free M&Ms”
→ http://www.dailymail.co.uk/news/article-2410555/Googles-Project-M-M-applies-data-wizards-problem-staff-eating-free-sweets.html
■WORLD ECONOMIC FORUM “Personal Data: The Emergence of a New Asset Class”
→ http://www3.weforum.org/docs/WEF_ITTC_PersonalDataNewAsset_Report_2011.pdf