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[ 寄稿 : デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ]

データを武器に、人事が進化する 
~ピープル・アナリティクスのトレンドと導入の第一歩~(前編)
新たなデータ活用が可能にする未来予測と、行動や感情の「見える化」

2016/10/31基礎ピープル・アナリティクスデロイト トーマツ コンサルティング

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~トレンド2~
行動や感情の「見える化」により課題を解決する

ピープル・アナリティクスのもう一つのトレンドは行動や感情の「見える化」による課題の解決である。こちらはより先進的な領域であり、先行する研究機関や企業はニーズに応じて様々な分析を行っている。そこで、ご紹介する事例を通じてまずは取り組みテーマの多様性と何らかの可能性を感じ取っていただきたい。

【事例1】同僚との物理的な距離とコミュニケーション量の関係性を明らかにする

この領域に先鞭をつけたのはMITメディアラボ出身のベン・ウェイバー氏である。同氏はドイツの銀行とIT企業の2社を対象に、専用端末を用いてデスク間の物理的な距離が広がることで社員間のコミュニケーションがどう変化するかを測定した。その結果、組織風土や事業が全く異なる2社ともに、列やフロアの離れ度合に応じて対面のコミュニケーション量が減少した。そしてドイツの銀行では、メールのコミュニケーション量にも同じ減少傾向が見られた。距離が離れてもメールがあれば十分に意思疎通できるという感覚が、必ずしも当てはまらないことが明確に示されたのである。

【事例2】Google:社員がお菓子を食べ過ぎないよう、適切な提供方法を特定する

Googleでは福利厚生の一環で社内に無料のお菓子を常備しているが、社員の食べ過ぎによる健康悪化リスクが問題視されたことがあった。そこで分析チームは、2,000人が働くニューヨークオフィスを舞台にスナック類の組合せや容器の形・透明度、容器の配置について様々なパターンを試し、どのようなタイミングや頻度で社員がお菓子に手を伸ばすかを測定した。収集したデータを分析し、食べ過ぎを自然と防ぐ容器の形状や配置条件を発見することで、オフィスにおけるお菓子の消費量を7週間で310万キロカロリー削減したのである。

【事例3】デロイト トーマツ コンサルティング:会話状況を「見える化」し、コミュニケーション改善の気づきを促す

我々デロイト トーマツ コンサルティングもピープル・アナリティクスに注力しており、その一環で社員のコミュニケーションスタイルへの示唆を導き出すために、専用端末を用いて会議や面談における参加者の発話タイミングやその際の緊張度合をデータ化し分析した。その結果、主催者の想定以上に消極的だった会議参加者の存在やマネージャーのコーチングスタイル、同僚間の議論であっても一方が他方を圧迫するケース等の存在が明らかになった(図2)。こうしたケースをフィードバックして社員の気づきを促し、より効果的なコミュニケーションを実現することを目指している。

【図1:ピープル・アナリティクスへの関心の高まり】世界中の企業が重要視しており、実用段階に達する企業も急増

行動や感情の「見える化」の取り組みに共通するのは、コミュニケーションの活性化にせよお菓子の消費量にせよ、求める効果を実現するための仮説を立てて、その有効性を立証していくというスタンスである。筋のいい仮説が重要で、実は分析力だけでなく人事担当者の経験が鍵になる。

また、この取り組みにおいては社員が感じる「気持ち悪さ」、すなわちデータ収集への警戒感への配慮も忘れてはならない。2011年に世界経済フォーラムで発表された「データ取り扱いに関する新政策(Personal Data:The Emergence of a New Asset Class)」 では、社員にとって適切なデータ活用のための要素として透明性、信頼性、データ範囲に関する自己決定権、データ活用がもたらす価値の理解の四つを挙げている。今後、これらをクリアしつつ取り組む企業がさらに増えるであろう。


2016/10/31基礎ピープル・アナリティクスデロイト トーマツ コンサルティング

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