[ 寄稿 : デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ]
データを武器に、人事が進化する
~ピープル・アナリティクスのトレンドと導入の第一歩~(前編)
新たなデータ活用が可能にする未来予測と、行動や感情の「見える化」
2016/10/31基礎、ピープル・アナリティクス、デロイト トーマツ コンサルティング
- 酒井 雄平さん(サカイ ユウヘイ)
- デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ヒューマンキャピタルユニット シニアコンサルタント
大手不動産デベロッパー、大手総合コンサルティングファームを経て現職。10年以上のコンサルティング経験を有し、人事戦略立案ならびに制度設計・導入、人事部門改革、人事データ分析、風土改革等を得意とする。近年ではピープル・アナリティクス領域に注力し、ハイパフォーマーの退職リスク分析と退職抑制策立案、社員の行動・感情の可視化を通じた生産性改善支援等の実績を有する。
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データで人材を理解する時代が来ようとしている
ビッグデータ・アナリティクスという言葉が当たり前のように語られる時代になったが、「ヒト」という最もデータから縁遠いとされていた領域にも波は押し寄せつつある。ピープル・アナリティクス(People Analytics)と呼ばれる、人事データを始めとする多様なデータを駆使して人事課題の解決を図る手法に着手する企業が増えているのだ。我々デロイトが世界のビジネス・人事リーダー7,000人以上を対象に行った調査 によると、世界の77%の企業がピープル・アナリティクスを重要視しており、準備が整っていると答える企業はこの1年間で約3割も増えている(図1)。
関心の背景には、「人材をより深く理解したいという期待感」が存在すると考えられる。アナリティクスで先を行くマーケティング領域では、百万件単位の購買履歴やSNS上の発言内容の分析など、より精密なマーケティング手法が次々と生まれている。これらの多くは顧客をより深く理解して適切なメッセージを発信することで顧客と深く長い関係を築くことを目的としているが、人事領域でも、同様な効果を期待する経営者や人事トップが着実に増えているのではないか。実際、ピープル・アナリティクスは優秀な人材の採用や引き止め、人材育成といった課題に対し、客観的でより効果のある施策や、従来にはなかった解決施策を提供してくれる可能性を秘めている。
しかし現実にはハードルがあり、とりわけデータ活用領域では「わが社でのイメージがわかない」「何からやればよいかわからない」と、手をこまねく人事担当者がまだ多数派である。そこで、本稿ではピープル・アナリティクスのトレンドや先進的な事例をご紹介した上で、次回の後編では、たとえ小さくともアナリティクスで成果を上げるためのステップを、我々コンサルタントが接した実例を交えつつご紹介したい。本稿がデータ活用を考えるきっかけになれば幸いである。