2016/09/30基礎
企業人事に求められるスタンス
海外ではすでに高い注目を集めるHR Tech
第1回では「HR Techのトレンド」を、第2回では「HR Techがもたらす変化」について解説してきた。今回は「これからの人事部に求められるもの」について触れたい。
日本においてHR Techの存在感が増してきたといっても、HR Techがすでに高い認知度を得ているアメリカと比べると、国内企業の関心や理解はまだ及ばない。
2015年10月、ラスベガスで開催された世界最大級のHR Techのイベント「HR Technology Conference 2015」は、セミナー受講を含むフルの入場料が24万円。展示会だけで入場料5万円がかかるにもかかわらず、4日間にわたって300以上のブースと60以上のセミナーを展開、来場者5000名以上(主催者発表)を集めるという盛況ぶりであった。
このことより、HR TechはHRサービス業界だけがヒートアップしているのではなく、人事担当者も高い関心を持っていることが分かる。
また、2016年3月に行った調査『日本の人事部 人事白書2016』において、人事関連のさまざまな業務におけるデータ分析の実行の有無について質問したところ、「採用」と「労務・給与・人件費」以外の領域では「実行していない」との回答が40~50%台を占めた。
データ分析の必要性は認識しているものの、「何から始めたらいいか分からない」という段階の回答が多く、 “HR Tech”への期待は高まりつつあるものの具体的なアクションについては暗中模索状態にある企業が多いと想像できる。
組織・人事戦略立案において、貴社の人事部門でおこなわれているものをすべてお選びください。(n=151)
国内のHRサービス業界の動き
日本国内のHRサービス業界の動きに目を向けたい。日本では大企業だけでなくベンチャー企業も競うように、新しいサービスを続々とローンチさせている。従来の人事管理システムや採用サイトなどとは異なる付加価値への期待により、導入する企業や団体が少しずつ増えてきている。
採用系のサービスでは、SNSと連携した採用プラットフォームや、エンジニア採用やデザイナー採用など特定の分野に特化したサービスや、スカウトサービスが普及。人事労務管理システムでは、採用から勤怠、労務などを一元管理するサービスが登場し始めた。
人事領域の中でも、これまであまり効率化、システム化が進んでいなかった労務管理の分野に最新テクノロジーを活用し、業務改善を図ろうとする動きもある。
入社手続きや社会保険や労働保険の手続きなど、面倒な労務をWEB上で完結するサービスが、スタートアップを中心に人気を集めており、従業員の入退社時に扶養家族など必要な情報を入力すると、必要な書類を自動作成。ハローワークや年金事務所にWEB申請でき、健康保険証を受け取るまでの期間を大幅に短縮できる。