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HRtech基礎講座 第3回 「HRとAI」

人事担当者に求められるスタンス

このような動きを踏まえ、AIに対して人事担当者はどう向かい合うべきだろうか。有効と思われるアプローチを挙げてみたい。

(1)AIに対する正しい期待値を持つ

倫理問題、プライバシー保護、安全性の確保など、ルール策定がまだまだ必要なAIであるが、今までに述べたように、従来の方法では解決が難しいと思われてきたHR関連の問題に対し、解決のためのツールとして大きな可能性を秘めている。

ただし、あくまでもAIは「ツール」であり、そのほとんどは「汎用AI(どのような問題にも適応できる能力を持ったAI)」ではなく、「専用AI(特定領域の問題について、データからの学習によってその問題向けパフォーマンスを向上させるAI)」である。「とても優秀な計算機」という見方もできる。

そのため「AIを使えばどうにかなる」と、何のプランニングもなしに臨むのでは成果が期待できないことは明らかであろう。あくまでもAIというツールを「どう使うか、何のために使うか」といった人事担当者の課題設定が不可欠となる。この点は、人事問題解決のためにHRサービスを活用するといった従来のアプローチと同様であり、何ら変わることはない。

(2)気軽に、積極的に試してみる

もう一点、挙げておきたいのが「気軽に、積極的に試してみる」というアプローチである。AI開発者のほとんどはHRにおける土地勘があるわけではなく、「作り手が最良の売り手とも限らない」状態である。そこで、彼らと人事担当者がチームを組み、HR領域におけるAIの活用方法をともに創りあげていく「共創」の姿勢が必要となる。

「わが社ではこのような問題を抱えており、既存のソリューションでは限界を感じています。このような問題をAIによって解決できないでしょうか」と人事担当者が気軽にたずね、それをきっかけとしてAI開発者がAIの新たな活用方法やニーズに気づく。このようなシーンが増えていくことこそが、HR領域におけるAI活用のポテンシャルを開花させ、個々人のキャリアと企業経営に大きな果実をもたらすのではないだろうか。

 

株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役 大野 順也さん

監修:大野 順也(オオノ ジュンヤ)

株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO
1974年生まれ。大学卒業後、株式会社パソナ(現パソナグループ)に入社。営業を経て、営業推進、営業企画部門を歴任し、同社の関連会社の立ち上げなども手掛ける。後に、トーマツ コンサルティング株式会社(現デロイト・トーマツコンサルティング株式会社)にて、組織・人事戦略コンサルティングに従事し、2006年1月に「株式会社アクティブ アンド カンパニー」を設立し、代表取締役に就任。現在に至る。 著書『タレントマネジメント概論』(ダイヤモンド社)

コグニティ株式会社 代表取締役 河野 理愛さん

河野 理愛(カワノ リエ)

コグニティ株式会社 代表取締役社長
1982年生まれ、徳島県出身、慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中の2001年にNPO法人を設立、代表として経営を行う。2005年にソニー株式会社入社。カメラ事業を中心に、経営戦略・商品企画に従事。2011年に株式会社ディー・エヌ・エー入社。ソーシャルゲームの海外展開を担当。2013年3月、コグニティ株式会社を設立。

参考文献

[ 書籍 ] 開発社(2016)『人類なら知っておきたい、「人工知能」の今と未来の話』(本田幸夫監修),PHP研究所. ケヴィン・ケリー(2014).『テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?』(服部桂訳)みすず書房. ケヴィン・ケリー(2016)『〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則』(服部桂訳)NHK出版. 神崎洋治(2016)『図解入門 最新人工知能がよ〜くわかる本』秀和システム. 小林雅一(2015)『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』講談社.  日経ビッグデータ(2016)『この1冊でまるごとわかる人工知能&IoTビジネス(日経BPムック)』日経BP社. 日経コンピュータ(2016)『まるわかり! 人工知能 最前線(日経BPムック)』日経BP社. 松尾豊(2016)『人工知能とは』(人工知能学会編)近代科学社. 松尾豊(2015)『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』KADOKAWA/中経出版. 松尾豊,塩野誠(2014)『東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」』KADOKAWA/中経出版. 三宅陽一郎, 森川幸人(2016)『絵でわかる人工知能 明日使いたくなるキーワード68』SBクリエイティブ. レイ・カーツワイル(2016)『シンギュラリティは近い [エッセンス版]―人類が生命を超越するとき』NHK出版.

[ 雑誌記事 ] 一條和生,久世和資(2016)「人工知能 非認知の知が拓く知識創造の最前線」,『一橋ビジネスレビュー』64巻2号, P.24-38,東洋経済新報社 安宅和人(2015)「人工知能はビジネスをどう変えるか」,『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2015年11月号,P.42-58,ダイヤモンド社

[ 新聞記事 ] 2015/11/6 日本経済新聞 「トヨタ、米にAI研究新会社 5年間で1200億円投資発表」 2016/4/27 日本経済新聞 「AIやロボ、対応できないと雇用735万人減 30年度経産省試算」 2016/8/26 日本経済新聞 電子版 「金融でAI活用進む 日銀の政策や株価予測」 2016/9/7 日本経済新聞 「経済教室 人工知能の光と影(下)」 2016/9/30 日本経済新聞 「AI「暴走」懸念払拭へ グーグルなどIT5社が新団体 安全確保へルール作り」

[ 雑誌 ] 「勝者のAI戦略」(2016)『週刊ダイヤモンド』(2016年8/27号),p.28-61,ダイヤモンド社.

[ その他 ] Deloitte Touche Tohmatsu Limited.(2016)『人工知能の脱神話化 ビジネスリーダーが認知技術について知っておくべきこと』. Thought Leader’s News Vol.6,有限責任監査法人トーマツ/デロイト トーマツ コンサルティング株式会社. 経済産業省(2016) 「新産業構造ビジョン」 ~第4次産業革命をリードする日本の戦略~ 産業構造審議会 中間整理. 経済産業省

 


2016/10/20基礎人工知能(AI)

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