2016/09/30基礎
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AIやビッグデータ解析以外でHRに影響がありそうなテクノロジー
前頁にて挙げたものの多くは、ビッグデータ解析やディープラーニング活用によるソリューションであるが、ほかにもHR Techに関連がありそうなものとして、「IoT」、「VR/AR/MR」、「ロボット」にも注目したい。
■IoT
IoTはInternet of Things(モノのインターネット)の略であり、センサーと通信機能を有するモノ(PC/スマホ/機械/ウェアラブルデバイスなど)を、インターネットへ接続することを指す。
例えば、メガネ型端末などを従業員に着用してもらい、従業員ごとのオフィス内における行動データを収集・蓄積・分析することで、今まで本人や評価者の主観への依存度が高かった人事分析を、より多くの行動データを元にして分析できるようになる。
なおセンサーは、モノによって環境(温度/湿度/照度/音量)、位置(存在検知/近接検知/通過検知)、動き(振動/速度/傾斜/移動)、脳波、感性、集中度などのデータを検知・測定することができ、これにより「リラックスできる職場環境か」、「社員の交流は活発か」といった分析も可能となる。
■VR/AR/MR
エンターテインメント業界を中心に盛り上がりを見せるのが、VR(Virtual Reality/バーチャルリアリティ)である。ゴーグルをかけて仮想空間内への“没入”を体験するには、おもに専用施設に足を運ぶ必要があったが、『PlayStation® VR』の発売などにより、徐々に一般家庭にも普及しつつある。
コンピューターの処理性能の向上により、数年前よりも圧倒的な「リアリティ」を感じられるようになっているのが特徴だ。
また、ゴーグルをかけずにスマートフォンや専用端末などを併用して、現実空間にテキスト情報などを付加するのが、AR(Augmented Reality/拡張現実)である。
VRがゴーグルによって視界をすべて仮想空間にするのに対し、ARはあくまでも実在する空間がベースとなる。2008年にローンチしたスマートフォンアプリ『セカイカメラ』(2014年サービス終了)を想像していただくと分かりやすい。
また、これらVR/AR技術を応用したものとして、MR(Mixed Reality /複合現実)という技術が成長している。これは現実空間に仮想オブジェクト(3Dホログラム)を出現させ、それらを触る(手の位置をセンサーが検知する)ことで、仮想オブジェクトにはたらきかけることができるというもので、マイクロソフト社などが積極的に開発を進めている。
具体的には、日本航空がマイクロソフト社の「HoloLens」というMRゴーグル端末を用い、パイロットの飛行機操縦、航空機エンジンの整備といった「仮想訓練」における実用化を進める動きもある。
このように、VR/AR/MRは製造現場や店舗運営などにおけるトレーニングやシミュレーションに利用できる可能性があり、遠隔地に拠点が多くあることでトレーニングコストがかかるような事業体にとっては、検討する余地があるのではないだろうか。
参考:Microsoft's HoloLens Live Demonstration
■ロボット
Pepperなどの登場により、より身近に感じられるようになったロボット。SF世界のように人間同様に判断・作業をするのはまだ時間がかかりそうだが、製造や物流の現場においては実用化が進んでおり、人手不足の解消に一役買っている。
例えば、オンラインストア最大手のアマゾンは、2012年に倉庫内ロボットを開発するKiva system社を買収。お掃除ロボットが一回り大きくなったようなロボットが自動制御により倉庫内を移動することで、注文があった商品を、棚まで作業者が取りにいく」という従来の作業は、「注文があった商品の棚をロボットが持ち上げて、作業者のいるところまで持ってきてくれる」へと変わった。
「人の仕事を奪う」という文脈で語られがちなロボットやAIであるが、工場や配送センターのように都心部にない(=周辺の労働力人口が少ない)施設内での労働力確保には欠かせない存在となっている。
また、女性や高齢者でも重いものを簡単に持ち上げられるパワードスーツが普及すれば、今までは体力への不安という観点より雇いづらかった層の雇用拡大につながる可能性が出てくる。
参考:Tour of Amazon Kiva Robots in Warehouse/Fulfillment center
次回(第3回)では、これらの動きを踏まえたうえで、これらの人事部に求められるものについて考えていきたい。