IoW(Internet of Work Style)
~生産性を26%向上させた日本マイクロソフトのICT活用事例~ (後編)
越川 慎司さん(日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員)
ICTツール活用、テレワークの本格的に導入などにより、事業生産性を26%アップさせ、女性の離職率を40%減らすなど、「ビジネスの成長」と「現場社員が活躍できる」を両立させている日本マイクロソフト。
日本の働き方の問題点について語っていただいた前編に続き、後編では実際に日本マイクロソフト社ではどのようにICTのツールを活用し、業績を向上させているのか、同社業務執行役員の越川慎司さんにお話をうかがいました。
- 越川 慎司さん(コシカワ シンジ)
- 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員
国内通信会社、米系通信会社を経て、ITベンチャーを起業した後、米・マイクロソフトに入社。年間に地球を5,6周回るほどの海外渡航をこなしながら、プライベートでは母親の介護を抱える日々。時間と場所に制約されない働き方を実践し、ビジネスの成果を挙げながら仕事とプライベートとの両立を実現。
AI・クラウドを活用し、労働時間の改善や社内コラボを推進
日本マイクロソフトでは、ICTツールの活用やテレワーク導入をどのように行ってきたのか、これまでの経緯を教えていただけますか。
社員全員が生産性を上げて活躍できるようにするにはどうしたらいいのか、私たちは独自の調査を実施しています。まずは、日本マイクロソフトの中で活躍している人はどういう人なのか、調べてみました。
わが社では営業部門中心に、1年間におよそ100のプロジェクトが発生します。そして、それぞれのプロジェクトにおいて、どのくらいの人たちを巻き込んでいるか、どれくらい部門を超えてコラボレーションしているかというデータを取得したところ、部門を超えて、より多くの人を巻き込んでコラボレーションしている人ほどいい成果を出していることがわかりました。
そこで、「さらに人を巻き込み、部門を超えて活躍してもらうためには、どういうITが必要なのか」について考えてみました。その一つがAIによる分析です。AIが果たす役目は大きく二つあると考えています。まずは人間の処理能力を超える作業スピード、もう一つは過去のデータを参考にして次の行動を示唆してくれることです。
日本マイクロソフトでは、作成したファイルなどのデータはすべてクラウド上に送信され、それらを元にAIにより分析しています。それだけではありません。スケジューラーや設定されたミーティング内容を元に社員やチームごとの労働時間・働き方を認識し、メールなどのコンタクト履歴を通じ、誰とどのように働いているのか、クラウド上のAIが把握できるようになっています。
AIはデータを蓄積するほど賢くなっていきます。学習を重ねることで、「あなたは現在このようなテーマに取り組んでいるようなので、○○部の△△と連絡をとってみるといいかもしれません」というように、次に誰とコラボレーションするのが効果的か、連絡すべき相手は誰かなど、高い精度で次の行動を提案・示唆してくれます。
また、実は内職をしている人が多いといった無駄なミーティングを教えてくれるほか、メールを読み書きしている時間、上司や部下とのやりとりも把握することができます。質と量についても教えてくれるので、そうしたものの見直しなどでさらに労働生産性を上げることができます。
先に述べたように、社内の誰がどのような資料を作成し、閲覧しているか、誰と誰が連絡をとっているのかをクラウドが吸い上げた情報を元社内でのコラボレーションを提案してくれるので、部門横断的にプロフェッショナルの協業が生まれるなど、イノベーションも生まれやすくなります。