デジタルトランスフォーメーション銘柄のケーススタディ
DXのさらなる推進に向けて
“攻めのIT”から「DX銘柄」へと名称変更
DXが進まなければ、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性を経済産業省が示唆する「2025年の崖」。今後目指すべき社会の姿として内閣府が発表している、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会である「Society 5.0」のような未来の日本の姿を描く上で、DXは避けて通れないものとされています。
ITは成長産業であるにもかかわらず、日本のIT業界は約1%の成長率。アメリカの約6%、中国の約15%という数字を見ると、低い成長率であることがわかります。
原因の一つは、情報システム部門が企業内で長きにわたり「コストセンター」として扱われてきたこと。経営視点でITを利活用しようとする企業が少なく、過去のレガシーや慣習を継続してきた結果、今まさに「2025年の崖」という危機に直面しているのです。
これまでの「攻めのIT経営銘柄」の内容を見ると、2019年の銘柄選定では評価基準にDXの推進を加え、デジタル時代を先導する企業を「DXグランプリ」として新設しています。
DXグランプリには、ANAホールディングス株式会社が選ばれました。空港のスマート化やデジタルサービスプラットフォームといった実効性の高い取り組みや、経営企画にイノベーション戦略機能を新設し、既存ITの刷新とイノベーション創出の両輪からDXを推進する土壌を作り上げたことなどが評価されました。
多くの日本企業はこれまで、事業と技術を切り分けてきました。しかしそこに明確な境界があったことで、セクショナリズムに陥り、成長速度をゆるめてしまった側面もあります。今後は事業側・技術側の双方からDX推進に取り組める人材が必要です。経営や人事は「わからないから人に任せる」のではなく、攻めのIT戦略やDXを最重要課題として捉え、技術人材との目線を合わせていくことが求められるでしょう。
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