ゴーストワーカーのケーススタディ
スマートスピーカーにチャットボット、
赤ちゃんAIが「自動運用」に育つまで
インターネットで「AI 仕事」と検索すると、「AI 仕事奪う」「AI 仕事奪わない」という真逆の予測変換が出てきます。AIが仕事を奪うかどうかは、ここ数年議論され続けており、多くの人が注目しているトピックであることがわかります。
AIの進化によって消える職業もあるでしょう。例えば、文字起こしやコールセンター業務。すでに「AI文字起こし」や「チャットボット」といった代替AIが登場しています。しかし、AIの普及の過程で増えている仕事もあります。その一つがゴーストワーカーです。導入したてのAIは、いわば何も知らない赤ちゃんのようなもの。導入してから自動で機能するまでに導く、教師役の人間が必要です。
AIにデータの識別を教え込む作業は、ラベリングと呼ばれます。例えば、写真を見て「これは女性」「これは男性」と性別を見分けたり、「これは犬」「これは猫」「これは鳥」と生き物を見分けたりすることは、人間からすれば簡単なことです。しかし、導入直後のAIにはそれがわかりません。仕分けを実演して、AIにルールを学習させることで、自動化が実現していくのです。
しかし、別の問題もあります。先日はスマートスピーカーへ話しかけた音声内容がメーカーの従業員に聞かれていることがニュースになり、企業の倫理観を問う議論が巻き起こりました。スマートスピーカーはどんなキーワードを受け取ることが多いのか、また、同じ単語でもアクセントが変わったら対応できるのか。これらを改善させるために人間が介在しているようですが、プライベートを監視されているようで抵抗を感じる消費者も少なくありません。
現在では、教師役の人間を必要としないタイプのAIの技術開発も進んでいます。人が介在することによって人間らしい判断ができるようになる利点はありますが、一方で、AIの判断に人間らしい「偏見」が生まれてしまうという懸念もあります。教師役のゴーストワーカーは必要なのか、不要なのかという議論は今後も続きそうですが、少なくともAI関連の仕事は求められるレベルにかかわらず、今後も増え続けていくと見られています。