リモートワークでのコミュニケーション問題を、ロボットの力で解決する(後編)
吉藤 健太朗さん(株式会社オリィ研究所 共同創設者 代表取締役 CEO)
2016/11/30実践、リモートワーク・働き方、オリィ研究所、吉藤健太朗、OriHime
さまざまな企業が試行錯誤を重ねている、リモートワークという働き方。その中で、在宅勤務の社員とオフィスにいる社員とのコミュニケーションツールとして、「分身ロボット」の開発を進めている企業があります。
分身ロボットは、まさに自分の分身として、会議などの場においてリアルタイムのやりとりを可能にするツール。リモートワークでの活用事例をお伝えした前編に引き続き、開発に込めた想いやこれまでの経緯について、オリィ研究所代表の吉藤 健太朗さんに、詳しいお話をうかがいました。
- 吉藤 健太朗さん(ヨシフジ ケンタロウ)
- 株式会社オリィ研究所 共同創設者 代表取締役 CEO
電動車椅子の新機構の発明に関わり、2004年に高校生科学技術チャレンジ(JSEC)にて文部科学大臣賞を受賞。2005年にアメリカで開催されたインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)に日本代表として出場し、Grand Award3位を受賞。高専で人工知能を学んだ後、早稲田大学創造理工学部へ進学。自身の不登校の体験をもとに、対孤独用分身コミュニケーションロボット「OriHime」を開発する。それにより2012年、青年版国民栄誉賞である「人間力大賞」に選ばれる。開発したロボットを多くの人に使ってもらうべく、株式会社オリィ研究所設立。代表取締役 CEOに就任。
3年半の引きこもりの経験が、「日本の孤独を解消したい」という想いにつながり、分身ロボットを開発
吉藤さんのご経歴と、OriHimeを開発するに至った経緯を教えてください。
自分自身に降りかかってきた問題と、OriHimeの開発はリンクしています。私は、小学校から中学生にかけての3年半の間、ストレスと自宅療養を必要とする病気を持ち、家から出ることができませんでした。精神的にも肉体的にも弱り、人前に出るのも苦しくなり、孤独感に苛まれる日々が続きました。
その後なんとか回復して、工業高校に入学し、大好きなものづくりに専念していました。ここで、電動車椅子の新機構を発明し、国内最大の科学コンテストにおいて、文部科学大臣賞を受賞。その後、世界大会でも3位に入賞し、奈良県の地元で注目されるようになり、帰国後にさまざまな相談を受けるようになりました。その中で、高齢者、入院患者など、自分と同じく孤独に苦しんでいる人が多くいることに気づき、この解決のために人生を捧げようと決めたのです。
高校卒業後、高等専門学校に進学し、人工知能の研究に従事しました。病院や老人ホームに設置して、高齢者と会話をできるような人工知能型のロボットをつくりたかった。しかし、「孤独の解消」においては、人工知能はあまりフィットしないことが分かりました。福祉ボランティアとして活動していた中で、「親しい人同士がつながり、孤独でなくなる未来」をつくろうと高専を1年間で中退。早稲田大学の創造理工学部に進学しました。
その後、マンションの自室にNCフライスや加工旋盤を設置し、6畳の部屋から分身ロボットの開発をスタート。在学中にオリィ研究所を設立し、2010年に1号機が誕生。今に至ります。
現状、どのような体制で開発を進めていますか。
私自身は、広報とハードウェアの開発をメインで担当しています。ソフトウェア開発チームとして、エンジニア3名、外注管理が1名。その他に、営業、総務担当のスタッフが数名、秘書と広報のサポートとして、リモートで勤務している者が1名います。
じつはリモート勤務している彼は盛岡在住で、幼い頃に交通事故に遭い、手足の自由がききません。しかし、ベッド上からであっても自身のあごなどを使ってPCを操作し、OriHimeも活用してオリィ研究所の業務を完璧にこなしてくれている、実に頼もしい存在です。