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働き方改革プラットフォームの挑戦~人生三毛作時代の働き方と新たな人事部の地平~

  • 梅澤 高明氏(A.T. カーニー 日本法人会長)
  • 林 要氏(GROOVE X株式会社 代表取締役)
  • 荻島 浩司氏(株式会社チームスピリット 代表取締役社長)
  • 間中 健介氏(関西学院大学非常勤講師、内閣官房日本経済再生総合事務局企画官)
東京パネルセッション [G]2017.12.26 掲載
株式会社チームスピリット講演写真

現在進められる働き方改革では、「転職・再就職支援」「人材育成」「副業・兼業といった柔軟な働き方」「高齢者の就業促進」がテーマとなっている。人生100年時代に個人が長く働くには、仕事の「三毛作」に向けた準備が必要であり、企業人事にはその支援が求められる。働き方が変わる時代に人事はどう動くべきか。A.T.カーニーの梅澤氏、GROOVE Xの林氏、チームスピリットの荻島氏が登壇し、関西学院大学 間中氏の司会でディスカッションが行われた。

プロフィール
梅澤 高明氏( A.T. カーニー 日本法人会長)
梅澤 高明 プロフィール写真

(うめざわ たかあき)東京大学法学部卒、MIT経営学修士。日米で20年にわたり、戦略・イノベーション・組織関連のテーマで企業を支援。
クールジャパン、デザイン政策、イノベーション政策、税制などのテーマで政府を支援。著書に『グローバルエリートの仕事作法』ほか。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーター。


林 要氏( GROOVE X株式会社 代表取締役)
林 要 プロフィール写真

(はやし かなめ)トヨタ自動車にてスーパーカーや F1の空力(エアロダイナミクス)開発、ソフトバンク株式会社で感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」の開発リーダーを経て、2015年GROOVE X 株式会社創業、シードラウンドのファンディングとして国内最大級となる14億円を調達、現在同社Founder兼CEO


荻島 浩司氏( 株式会社チームスピリット 代表取締役社長)
荻島 浩司 プロフィール写真

(おぎしま こうじ)1996年、当社設立。株式会社東芝および東芝ソリューション株式会社で金融機関向けパッケージ開発や、オペレーショナル・リスクコンサルティングに従事、2009年よりセールスフォース・ドットコムを利用したクラウド事業に参入、「TeamSpirit」を企画・開発。


間中 健介氏( 関西学院大学非常勤講師、内閣官房日本経済再生総合事務局企画官)
間中 健介 プロフィール写真

(まなか けんすけ)マーケティングコンサルティング会社勤務後、衆議院議員秘書として厚生労働政策の形成に関わる。その後、米系製薬会社勤務を経て2007年創薬支援ベンチャー設立に参画。2013年関西学院大学非常勤講師。2014年内閣官房スタッフに任用。著書『ソーシャル・イノベーション』(関西学院大学出版会、共著)。


「労働生産性の向上」といった従来の考え方では追いつけない

間中:昨今の働き方改革における政府での議論を、どのようにご覧になっていますか。

梅澤:話し合われているテーマは正しい方向ですが、長時間労働の是正や非正規労働者の待遇改善など、部分的な話になっているのが残念ですね。働き方改革の本質は何かというと、日本の産業界が持つ人材のポテンシャルをどれだけ引き上げるか、個々が持つポテンシャルを社会全体で有効活用できるか、ということでしょう。これまでの職業人生は40年、45年ほどでしたが、これからは60年、70年もの長さになります。環境が激しく変化し、職の寿命が短くなるなかで、より長く働かなければならない時代がすぐそこまで来ている。そのような状況で、労働生産性の向上といった従来の延長線上の話だけをしても、とても追いつきません。企業にとっても個人にとっても、もっとダイナミックに一人ひとりが持つポテンシャルを高めていかなければならない。会社を変えることも含め、もっと社会として人材を活かすことを考えるべきです。

私は以前から、「人生三毛作」「二足のわらじ」を推奨しています。企業にも政府にも、副業禁止規定をやめましょう、と訴えています。そうでもしなければ三毛作はとても無理ですし、少しずつ自分の活動をマルチにし、新しい能力を獲得して次のチャンスを探すことが当たり前にできる社会をつくるべきだと思います。

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林:生産性を高める方法は、個人、組織の二つの面から考えることができると思います。個人の問題で何が大事かというと「人がどう幸せに働くか」に尽きます。人はやりたくない仕事をやらされると、やる気をなくしてしまう。働き方改革とは本来、どうしたら人は幸せになれるのか、という問題です。

二つ目は組織面。社員の中で今の仕事にフィットしていない、やらされ感のある人たちにどうやって主体的に働いてもらうか。日本企業は社員を同じポジションに据えたまま、やる気を出させようとしますが、それは無理な話です。大事なことは人材の流動化。つまり、その人に合う場所にいかにもっていくか、ということです。組織においても新陳代謝は重要であり、このような点を主体とした改革を行うべきだと思います。

「創造性を高め、企業を変える方向に仕向けること」が人事の役割

間中:同じ会社の中でも、成長部門にいる人とリストラ部門にいる人とでは、ストレスの度合いが違います。部署ごとに仕事内容も違うので、会社全体で「残業はダメ」としてしまうのもおかしいですね。もっと柔軟な働き方改革の方法があるのではないでしょうか。

林:海外の人は自由で、仕事に納得しなければ転職しますが、日本人はその場所で頑張ってしまう。しかし、納得しないまま頑張っても、地球の裏側には勝てません。企業としては、個人をどれだけフィット感のある仕事に付けられるかが重要です。どんな仕事でも、本人がそこに意味を見出せなければ、成果にはつながりません。そういう人を雇用し続けることは無駄なので、時には人を放出することも、大企業が生き残っていくための方法だと思います。

大企業には守るべき組織があるので、どうしても変化への対応スピードが遅くなります。内部からのイノベーションも期待できない。海外の企業ならスタートアップ企業をM&Aするところですが、日本ではそれも難しい。日本の大企業にはスタートアップ経験者がいないので、買っても扱い方がわからないからです。大企業に今必要な人材は、スタートアップ経験者だといえるでしょう。また米国では、一度大企業を出てから出戻ってきた人が活躍しています。日本企業では出戻りがしにくいので、戻りやすい雰囲気をつくるべきだと思います。

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梅澤:私が日本法人の会長を務めるA.T. カーニーでも、常に社員の1割程度が出戻りであり、その中には役員もいます。

また、もう一つの戦力として、外国人を本社にどんどん採用することを強くお勧めします。買収した海外企業を管理できていない日本企業が多くありますが、それは本社と買収先の海外法人の間でカルチャーが違い過ぎて、どう扱って良いか分からないから。スタートアップ企業を買収した場合と、同じような問題が起きています。

間中:人事部が過去に辞めた社員の中から有能な人材をリストアップしておくことは、必要でしょうか。

梅澤:エグジットインタビュー(退職前面談)は必ず行います。そして、「また一緒にやりたい」と思える人には「行った先の会社に飽きたら連絡して」と伝えています。また、社内の近かった人などから、定期的にコンタクトを取ってもらっています。

間中:日本企業では人事に権限が集まることが多く、採用も教育も一括という形がなかなか変わりません。今回のセッションのサブタイトルは「新たな人事部の地平」ですが、新しい形の人事、これからの人事に対して期待することは何かありますか。

荻島:今後は、働く人の自主性に任せていくことが人事において基本となり、それをいかにうまく企業の利益になるように行うかが腕の見せ所となるでしょう。

働き方改革の観点で考えると、生産性の向上が求められますが、個人だけでなく組織としての生産性も問われます。そこでは個人がより創造性を高めて、企業自体を変えていく方向に進まなければいけない。そういう方向付けを行うのが人事の仕事ではないでしょうか。テレワーク一つ始めるにも、規則改正など面倒なことが多くありますが、人事は挑戦していかなければいけない。人事部こそイノベーティブであってほしいと思います。

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梅澤:これからの企業にとって、最重要の経営資源は優秀な人材です。そのような人をどれだけ採用できるか、ポテンシャルを上げられるかが、企業の競争力の大きな源泉となります。それを司る部署が人事だとしたら、戦略的にならざるを得ません。

日本企業では「仕事の中身を分類する」だけでも効率化につながる

間中:働き方改革でも取り上げられていますが、今後はいろいろな立場にある人材に対し、人事はフェアな処遇を考えていかなければなりません。

林:当社にも外国人がいますし、もちろん女性も活躍しています。しかし本人がフェアだと思えなければ、その人はいなくなってしまうでしょう。フェアであるべき理由は、会社の組織構造がプロダクトに反映されてしまうから。メーカーの場合、製品で使いにくい部分があると、その部分の担当部署は周辺部署とのつながりが悪かったりする。そう考えれば、人事の皆さんがデザインされている組織は、まさにプロダクト、サービスそのものです。これは重要な視点だと思います。

梅澤:社内のイノベーション人材は、フェアに処遇されていないと感じると、すぐに辞めてしまいます。本当に大事なイノベーション人材がいるのなら、その人たちに適した制度を整えないといけない。そうでない会社は、そもそもイノベーションは無理だと自覚すべきでしょう。

間中:若手がいい提案をしようとしても、その上の管理職がブロックして改革が進まない、ということがよくありますね。このような若手にきちんと対応するには、どうしたらいいでしょうか。

講演写真

梅澤:王道ですが、社長直属のプロジェクトチームをつくり、ある段階までは社長の権威で障害を突破していく、というやり方があります。さらにその前のステージで面白いアイデアが必要なときは、若手だけの出島をつくって、しばらく放置しておく。アイデアの実現でもっともハードルが高いのは、出てきた良いアイデアを本体の経営資源と接合し、きちんと事業として育てる工程です。そこを幾度も乗り越えている会社には、それにフィットした組織風土があったり、そういった考えを引っ張り上げられる経営幹部が複数いたりします。

間中:林さんはまさにアイデアを実現させる人材だったと思いますが、その点をどう思われますか。

林:先ほど出戻りの話をしましたが、若手にそのような環境を与える会社であれば、戻りたい人は増えるでしょう。一度出た人でも、前の会社のことを「今思い返せばいい経験だった」と考えていることは多いはず。もっと企業側に、人を心地よく送り出し、再び心地よく受け入れる制度があってもいいと思います。

間中:先日、私はラーメン店の人と、なぜ閉店した後に売上を計算するのか。開店中にやれば20分くらいは仕事の時間が削れるのではないか、と議論になりました。これからは業務を見える化することで、効率化の内容も変わっていくのではないかと思います。チームスピリットでは勤怠管理、工数管理などを見える化するプラットフォームを提供されていますが、荻島さんから見て、日本企業の業務の見える化はどの程度進んでいるでしょうか。

荻島:我々のソリューションには、個人がどんな仕事を何時間したかを記録する機能があります。多くの企業では、社員一人ひとりが何をしているかをわかっていないので、この機能は非常に喜ばれます。さらに、何をしているかを問題にすることには、もっと本質的な意味があります。何をしているかを記録しようとすれば、行っていることの分類を考える必要が出てくる。この工程が重要なプロセスになり、それを行うだけで効果の半分以上が実現されるのです。

もう一つの効果は、どの顧客の仕事をしているかを判断することで原価管理につながり、今後の戦略に活かせる点です。間接業務なら、どのプロセスに時間がかかっているのかを知ることが、その次の改善ステップにつながる。これを行うためには、その会社で各社員がやらなければならないことを明確にし、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を決めないといけません。しかし、多くの企業ではジョブ・ディスクリプションを示していません。大変ですが、作成することも成果の一つになります。会社が大きくなれば、人の役割も変わりますから、個々の役割を変えられる仕組みも必要です。また、その過程で、戦略にフィットしていくことは大変重要です。

林:人は変化を恐れるところがありますが、そのような性向は今の社会では不要かもしれません。動けるところでは、まず変化をしてみる。変化に慣れておくことが非常に大事です。個々がいろいろなスキルセットを持つようにすべきでしょう。

梅澤:荻島さんの見える化の話で思いましたが、これからはいかに部署がクリエイティブな状態にあるのかが問われるようになると思います。だから、それを測るよい方法があるといい。例えば、笑顔の数を測定することかもしれないし、チームの中で特定のメンバー同士がどれくらい緊密なやり取りをしたかでわかるかもしれない。こんなことがHRテクノロジーでも大事なテーマになるのではないかと思います。

間中:会場の皆さまも、会社の成長に資する働き方改革に取り組んでほしいと思います。本日はありがとうございました。

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チームスピリットは800社、10万ユーザー以上が利用する働き方改革プラットフォーム「TeamSpirit」を提供しています。従業員が毎日使う勤怠管理や工数管理、経費精算、電子稟議などをオールインワンにしたクラウドサービスで、日本企業に最適なパフォーマンスマネジメントを実現し、変化に挑戦する人と企業に貢献します。

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