ソーシャル・レコグニションのケーススタディ
昇給・昇格に変わるモチベーションアップの手法として、
ピアツーピアの「称賛システム」が登場
従業員が仕事にやりがいを見出すのはどんなときでしょうか。お客様から感謝されたとき、手塩にかけた製品が世の中にリリースされたとき、営業ノルマを達成したときなど、仕事を通して大きな喜びを手にするシーンは、人それぞれ。反対に、会社が嫌になるのはどんなときでしょうか。離職理由の上位には、人間関係が原因で会社の空気が悪い、適正に評価されていないと感じる、などが挙がっています。
人材不足と言われる現在、新たな人材の採用とあわせて、優秀な人材を流出させないための企業努力が必要になっています。従業員のエンゲージメントを高めるためには、昇給や昇格が有効と思われがちですが、一時的な幸福感は得られても永続的な愛社精神の高まりには結び付きません。昇給や昇格に代わる永続的なモチベーションアップ策として注目されているのが、ソーシャル・レコグニションです。
世界的にも、ピアツーピアで感謝を伝える「Achievers」や360度評価を活用した「Bonusly」などのサービスが登場し、ソーシャル・レコグニションを職場環境の改善につなげようとする取り組みが増えています。従業員同士が感謝や称賛を伝えあう手法は、企業にどのような効果をもたらすのでしょうか。
Fringe81が提供する「Unipos(ユニポス)」は、メンバーからの称賛を実際の成果給(ピアボーナス)として受け取ることができるサービス。従業員一人ひとりが一定のポイントを持ち、「誰に」「いくら」送るかを決めることができます。投稿は公開で行われるため、その感謝に心を動かされれば周囲も“便乗”することができ、称賛した人・された人の双方にポイントが渡される仕組みになっています。
このサービスでは、数字で成果の見えやすい営業職など、上司から見えやすい定量成果だけでなく、「あまり目立たないけれど、痒い所に手が届く良い仕事をしてくれる人」も救い上げることができます。成果を数字で測りづらい職種の従業員でも、カジュアルかつオープンに賞賛され、給与にも反映されることによって、公平性や納得感を得ながら働くことができるのです。
ソーシャル・レコグニションの価値は、単に褒め合って気分を良くすることではなく、組織の中で自分の存在が肯定されることにあります。昇給・昇格による、大きいけれど一時的な幸福感と、称賛システムがもたらす、小さいけれど高頻度で内発的な幸福感。社員のエンゲージメントを高めるために企業ができることは、まだまだありそうです。