IoTのケーススタディ
“モノ”から得られるデータが宝の山に
価値を生み出す人材の発掘・育成が急務
あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」では、従来のように人がパソコンなどのデバイスからデータを入力するのではなく、モノに組み込まれたセンサーが人手を介さず自動的にデータを入力し、その情報がインターネット経由で利用されます。モノに各種のセンサーを取り付け、その状態を離れた場所からインターネットを介してモニターしたり、遠隔操作・自動制御したりすることによって、あらゆるものづくりやビジネスをスマート化し、安全で快適な生活の実現に資するのがIoTの技術です。
具体例としては、自動車の位置情報をリアルタイムに集約して渋滞情報を配信するシステムや、人間の検針員の代わりに電力メーターが電力会社と通信して電力の使用量を申告するスマートメーター、あるいは大型の機械などに組み込んだセンサーと通信機能で稼働状況や故障箇所、交換が必要な部品などを、製造元がリアルタイムに把握できる保守システムなどが考案されています。
また、IoTを活用して職場の人間関係をビッグデータ解析し、生産性を高める事業も始まっています。日立製作所グループが手掛けるサービスで、職場のメンバーにセンサー内蔵の名札型の装置を首からかけて、普段どおりに仕事をこなしてもらうと、誰がいつ、どこで、誰と何分対面したか、話しかけている側か、聞いている側かを特定できる仕組みです。大手コールセンターに導入してみたところ、営業担当の部署では休憩時間の対話が活発なグループの受注率が、それ以外より4割も高いことがわかったため、それまでばらばらにとっていた休憩時間を各グループで統一し、対話を促すと、全体の業務効率が高まったといいます。
IoTが社会にもたらすインパクトを早くから指摘していた調査会社のガートナーグループでは、インターネットに接続される装置の数が2009年の9億台から、20年には300億台にまで増えると予測、そこから得られる膨大かつ多様なデータを活用することにより、20年までに世界全体で1.9兆ドルの経済効果が得られると分析しています。
とはいえ、インターネットにつながる機器や装置が増え、そこから集められるデータの量や種類が増えても、それを価値ある知恵に変えていくのは“人”。データを使いこなし、革新的なサービスが生み出せる人材が増えなければ、IoTを役立てることはできません。あらゆるビジネスを変える可能性があるだけに、IoTを活用できる人材の発掘や育成は業種・業態を問わず、大きな課題として認識すべきでしょう。