モバイルラーニングのケーススタディ
“すきま時間”を知識の習得に有効活用
技術革新でより深く多彩な学びが可能に
ITを活用した教育研修全般を意味する「eラーニング」が、欧米で注目されるようになったのは1990年代の終わり頃。日本では2000年が「eラーニング元年」と言われました。
時間と場所にしばられず、自分のペースで学習できるのがeラーニングの最大のメリットとされますが、実際に普及が進んで利用経験者が増えると、その大きな可能性とともに“限界”も広く認知されるようになりました。それはインターネットやイントラネット環境下でPCを使う従来のeラーニングの場合、オフィスや自宅などPCとネット環境が揃っている場所でなければ利用できない、決して“いつでもどこでも気軽に学習できる”わけではないという問題です。これをクリアしたのが「モバイルラーニング」。技術革新の著しい携帯端末を利用することで、先でのちょっとしたすきま時間も知識習得に有効活用できるようになったのです。時間と場所にしばられない学習スタイルを実現し、eラーニングをその理想に大きく近づけたといえるでしょう。
もっとも、携帯電話を活用したモバイルラーニングの手法には当初、デメリットも少なからずありました。画面の表示サイズが小さくて見づらい、処理速度が遅くて映像や音声への対応がもの足りないなど――。そうした制約から学習の形式も、二択・三択など単純な選択型のドリルやテストに限られ、あくまでも基礎的な知識の確認を目的とした、部分的な使用にとどまるものが大半でした。現在は、高度な機能を備えたスマートフォンやタブレットによるオンライン学習がモバイルラーニングの主流となり、見やすく、操作しやすい端末に動画や音声をふんだんに取り込んで学習内容を展開するなど、より深く、より多彩に学べるしくみが拡充されています。
企業の社員教育におけるモバイルラーニングの活用は、特に移動の多い営業担当者の支援やトレーニングに適していると言われ、米国では大手飲料メーカーなどがいちはやく導入しています。日本でも近年、既存の企業内研修を補完する形で、モバイルを活用した学習支援ツールがさかんに開発されるようになってきました。ゲームコンテンツ事業大手のバンダイナムコゲームスでは、採用内定者に簿記会計の知識を身につけるよう推奨していますが、その内定者教育の手段としてモバイルラーニングを活用し、簿記検定の合格率で全国平均を上回るなどの効果を上げています。内定者に問題を配信する教育担当者が、回答の結果をリアルタイムで把握し、個別状況に合わせてきめ細かくフォローすることができるため、効果的な学習につながっているといいます。
モバイル端末はいま、若者たちにとって最も身近な、なくてはならないツールだといえるでしょう。それを活用したモバイルラーニングは、手軽で親しみやすいため、自然と利用者の学習機会を増やし、学習意欲の向上にも資すると期待されます。