人材採用・育成、組織開発のナレッジコミュニティ『日本の人事部』が運営する、HRテクノロジー(HR Tech、HRテック)総合情報サイト

日本の人事部 HRテクノロジー ロゴ

単純作業はロボットに、人間はより高付加価値な仕事へ
~リコージャパンが導入するRPAとは?~(後編)

飯沼 満さん(リコージャパン株式会社 執行役員 経営企画事業本部 構造改革推進本部 本部長)
南雲 敏明さん(リコージャパン株式会社 経営企画事業本部 構造改革推進本部 システム開発室 RPA開発グループ)

RPA の導入によって見えた三つの課題

その後は、どのようにしてRPAを本格的に導入していったのでしょうか。

南雲:パイロット導入の結果を受け、2016年10月以降は、社内で本格的にRPAを導入していくことになりました。四つの対象業務を五つに増やしたほか、ロボットのみで行うフローの構築や紙への対応など、ロボットの守備範囲を拡張する取り組みも進めています。社内でRPAをセットアップする技術者の育成にも、今後はさらに力を入れる予定です。

2017年度に入ってからは、改めて販売業務センターで行われているすべての業務を棚卸ししました。その結果、全1157件の業務のうち、特に多くの工数が必要となるものが281件あることが分かりました。これらの業務を効率化すれば大きな効果が期待できるので、優先的に取り組んでいきたいと考えています。一方、作業量は少ないものの、「絶対にミスが許されない」業務など、スタッフがストレスを感じている業務が44件あることもわかりました。これらも加えた合計325業務を、これから3年間でRPA化していきます。

リコージャパン株式会社:飯沼 満さん

これまでの成果を受けて、今後取り組むべき課題などはありますか。

飯沼:大きく三つあります。一つ目は、RPA拡大のための業務フローの整理と見直しです。ロボットが処理することを前提に、BPR(https://jinjibu.jp/keyword/detl/463/)を進めなければなりません。特に、紙の情報やアナログデータをロボットは扱えないので、いかにデジタル化していくかがポイントになります。リコーは、スキャニングとOCRの技術を持っていますので、今後はデータのスキャンからロボットによる処理までを、一連のサービスとしてお客様にご提供したいと考えています。

そして二つ目は、コストカットを目的にRPAを進めるのではなく、RPAによる業務品質や生産性向上の価値を意識することです。単に業務をロボット化するだけなら、コストカットばかりが目的になり、付加価値を生み出すことにまで目が行きません。しかし重要なのは、人間の代わりではなく、RPAだからこそ得意なことを見極め、何を任せるべきかを考えることだと思います。それによって、人間が業務を行っていたとき以上の成果を生むことができるはずです。

最後の三つ目は、RPA導入に伴って、人材の配置をどうシフトしていくのか、ということ。単純業務をロボットに任せ、人間にはより高度な技能が必要で、付加価値を生むような仕事に取り組んでもらう。その道筋や環境づくりが、今後のRPA化の大きなポイントになると考えています。社員が空いた時間でさらに勉強し、より上を目指すような仕掛けをつくっていきたいですね。

今後RPAの導入を検討している企業の方が、気を付けるべきポイントは何でしょうか。

南雲:当初は1年〜1年半をかけて社内でノウハウをつくった上で、当社のサービスとしてRPAをご提供していこうと考えていたのですが、RPAの認知拡大に伴い、すでに多くのお問い合わせをいただいています。導入を検討されている企業の方とお話しする中で感じるのは、「具体的にどういった業務を、どれだけ効率化したいのか」を明確にイメージできれば、RPAはより設計しやすい、ということ。一方で、課題がまとまっていない場合は、スタートが遅くなるケースも多いですね。

飯沼:“How”ではなく、“What”から着想した方が良いと思います。「予算が取れました」「何かできることはありませんか」というHowから始まった話は、どこかで頓挫することが多いからです。困っている業務はどういうもので、なぜ自動化しようと考えているのか。社内で、課題に関するコンセンサスが取れていることが大切です。「働き方改革」を目的とするRPA化において、自社にとって何が必要かを考え、主導していく人事の役割は大きいと思います。

また、単純作業をロボットに任せる代わりに、社員にどのような業務を任せるのか。任せるためには、どのようなスキルを身に付けさせるべきかといった、人材育成の果たす役割はますます重要になるでしょう。人事の活躍によって、企業の競争力がさらに増していく。そういう時代は、すぐそばに来ていると思います。

南雲:当社でも、RPA導入によって負荷が劇的に下がった社員がでてきています。その社員たちには、ここで得た経験をもとに、社内はもちろん、お客様に対しても業務プロセスを提案する役割を担ってもらう予定です。リコージャパンが取り組んで改善できた事例、失敗した事例を伝えることによって、生産性を高めるお手伝いができると考えています。そうすれば、社員たちの新たなモチベーションにもつながり、販売業務センターはコストセンターからプロフィットセンターへと進化するでしょう。


2017/07/06実践活用事例リコージャパン業務効率化RPA/ロボティック・プロセス・オートメーション

  • facebook
  • X
  • note
  • LINE
  • メール
  • 印刷

あわせて読みたい