【ヨミ】ワークエンゲージメント ワークエンゲージメント
ワークエンゲージメントとは、従業員の仕事に対する熱意や活力によって高いパフォーマンスが生まれる心理・活動状態を表す概念です。昨今ではビジネスのさまざまな場面で「エンゲージメント」という言葉が使われていますが、そもそもエンゲージメント(engagement)には「約束・契約」という意味があり、ここから転じて、つながりの強さを表す用語として用いられています。
ワークエンゲージメントとは、従業員の仕事に対する熱意や活力によって高いパフォーマンスが生まれる心理・活動状態を表す概念です。昨今ではビジネスのさまざまな場面で「エンゲージメント」という言葉が使われていますが、そもそもエンゲージメント(engagement)には「約束・契約」という意味があり、ここから転じて、つながりの強さを表す用語として用いられています。
「エンゲージメント」という言葉には、「婚約・約束・契約」といった意味があります。ワークエンゲージメントのほかにも、従業員エンゲージメントや顧客エンゲージメント、ソーシャルエンゲージメントなどがありますが、いずれも結びつきの強さを表現するビジネス用語として用いられています。
「エンゲージメント」は、現在ビジネスのさまざまな場面で使われていますが、1990年代に米国のコンサルティング会社が使い出したのが始まりといわれています。また、1990年に、ボストン大学心理学教授のウイリアム・カーン氏が「パーソナルエンゲージメント」という言葉を用いて、組織に属する自己と仕事上の役割との結びつき度合いについてまとめています。
この当時、企業と従業員とのエンゲージメントの重要性が認識された背景には、成果主義の高まりやリストラの増加といった社会的な変動があり、企業と従業員との関係性を見直す必要性が生まれたことが挙げられます。
近年では、米国・ギャラップ社が2017年に公表した、世界各国における従業員のエンゲージメント調査が話題を集めました。日本はエンゲージメントが高い従業員の割合がわずか6%で、調査を行った139ヵ国中132位という結果が議論の的となりました。
働き方や価値観の多様化が進む現在、企業が継続的に成長していくためには、従業員の成長意欲や貢献意欲を生み出す関係性の構築に努めることは必須といえるでしょう。人事領域においては、働きがいを改善するための「従業員満足度」に代わる新たなバロメーターとしても、エンゲージメントの考え方が重視されています。
参照:「令和元年版労働経済の分析」第Ⅱ部第3章第1節|厚生労働省
ワークエンゲージメントは、仕事と従業員との結びつきの強さを表す言葉です。ワークエンゲージメントが高い状態とは、心理的な充足感とパフォーマンスの両面で高い効果が表れる状態です。
ワークエンゲージメントの考え方は、2002年にオランダ・ユトレヒト大学の組織心理学者であるウィルマー・B・シャウフェリ氏が提唱しました。
シャウフェリ氏は「仕事への態度・認知」における心理状態(肯定感・否定感)の度合いと、「活動水準」における高低を軸に4象限マトリクスを整理しました。仕事への態度・認知における肯定度合いが高く、かつ活動水準が高い状態にあることをワークエンゲージメントが高い状態としています。
これと逆の状態にあるのが、いわゆる燃え尽き症候群といわれる「バーンアウト」です。また、仕事への態度・認知は低いものの、活動水準は高い状態にあるのが「ワーカホリズム」で、強迫観念を抱きながら仕事を遂行しているケースがここにあてはまります。仕事への態度・認知は高いけれど、活動水準が低くなっている場合は「職務満足感」と分類されており、楽しく働いているが成果につながっていないケースとされています。
厚生労働省は、シャウフェリ氏の定義など国内外のさまざまな資料を参考に、ワークエンゲージメントは次の三つの要素が揃っている状態であるとまとめています。
・活力:仕事にから活力を得て生き生きと働いている
・熱意:仕事に誇りとやりがいを感じている
・没頭:仕事に熱心に取り組んでいる
つまり、仕事に対してポジティブな心理状態にあり、それによって高いパフォーマンスを生んでいるのがワークエンゲージメントの特徴といえます。こうした状態は一時的に起こることもありますが、ワークエンゲージメントでは仕事と個人との強い結びつきによって、ポジティブな心理・行動が持続していくものと捉えています。
「ワークエンゲージメント」は、シャウフェリ氏らによる「仕事に対する活力・熱意・没頭がある状態」という学術上の定義があります。これに対して、日本における「エンゲージメント」や「従業員エンゲージメント」は、さまざまな定義があります。石山氏によれば、組織への愛着、職務満足、仕事への熱意という、組織観点と個人観点の内容が混在しています。
両者の関係を説明すると、エンゲージメント(従業員エンゲージメント)が、ワークエンゲージメントを内包しています。より詳細で厳密な定義をする場合は、ワークエンゲージメントの方が適しています。
参照:[講演レポート]『日本の人事部 人事白書2019』から読み解く「育成」「組織活性化」の現状と課題|日本の人事部HRカンファレンス
ワークエンゲージメントを測るバロメーターとして広く利用されているのは、提唱者のシャウフェリらの定義に基づいて開発された「ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度(Utrecht Work Engagement Scale、以下UWES)」です。
具体的には、ワークエンゲージメントの3要素である「活力・熱意・没頭」に関する質問を投げ、0(まったくない)~6点(いつも感じる)の範囲で回答してもらうという方法です。尺度の構成は、17項目の質問によって測定するものと、質問が9項目や3項目の簡易版もあり、日本語訳版も慶應義塾大学教授の島津明人氏によって作成されています。質問項目についての詳細は、下記をご覧ください。
●国民性の違いがノイズに
島津氏とシャウフェリ氏らがまとめた論文によると、国際的な比較ではUWESで測定した日本におけるワークエンゲージメントの点数は相対的に低いことが判明しています。ただし、同論文では、そもそもワークエンゲージメントには国民性が表れるため、一概に比較できない点に警鐘を鳴らしています。
例えば、日本人には周囲との協調性を重んじるべきという風潮があり、自分だけが突出してポジティブな感情表現をすることは抑えるべきという傾向が見られます。加えて、自己批判バイアスが強い傾向にあることも調査に影響すると考えられています。欧米ではその逆に、自己強化に対する意識が強く、数値に影響を及ぼしている可能性が指摘されています。
従って、測定結果を見る際は、こうした国民性も視野に入れつつ、たとえ数値が低くても感情を表出していない可能性があることを加味しなければならないといえるでしょう。
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