就職ウェブテストのケーススタディ
IT活用による絞り込みで採用を効率化
なりすまし、カンニング……不正の恐れも
ここ数年、従来の筆記形式の採用適性検査に替えて、「就職ウェブテスト」を導入する企業が増えてきました。代表的なウェブテストには、リクルートマネジメントソリューションズ社製の「テストセンター」「WEBテスティングサービス」や日本エス・エイチ・エル社製の「玉手箱シリーズ」「Web-CAB」、ヒューマネージ社製の「TG-WEB」、イー・キュー・ジャパン社製の「リクルーティングウイザード」などがあります。
すでに就職活動中の学生のほぼ100%が受験しているといわれ、その普及に伴い、選考のプロセスや学生側の対応にも変化が現れてきています。
本来、企業にとって採用活動は、予算、時間、人手などの面で多くの負担を要するものです。何百何千単位の応募者に対応するだけでも大変ですし、例えば社外に選考会場を設けて、紙ベースの筆記試験を実施するとなると、施設の利用料や設営の手間、試験官や案内係の手配といったさまざまなものに多大なコストが発生します。こうした手間や費用を限りなくゼロに近づけ、企業に採用活動の効率化をもたらしたのが、インターネットを活用したウェブテストです。
簡便なエントリーシートが普及したことで、就職活動中の学生の中には、志望度が低くても「とりあえずエントリーだけでもしておこう」と100社も、200社もエントリーする学生が数多く現れるようになりましたが、実際にはエントリーしても選考試験を受けなかったり、選考を受けても志望動機が希薄だったりして、企業とのミスマッチ、すなわち採用活動のコストロスが頻発していました。自社に対する適性も志望度が高い学生だけを絞り込んで、その後の選考プロセスに残したい――ウェブテスト導入の背景にはこうした採用側の強い意識も働いているようです。実際、応募者は一定の成績を残さないと、次の選考には進めませんし、通過するのは受検者全体の2割という難関の企業も。以前は会社説明会に参加した後、そのまま適性検査や筆記試験に臨むという流れが一般的でしたが、企業がウェブテストを実施している場合、テスト結果が悪い学生は説明会にさえ参加できません。
IT化による利便性は、確かに企業、学生双方にとって大きなメリットです。しかし私用のパソコンからでも受験できる手軽さは、本人確認の難しさと表裏一体。そのため、いわゆる“なりすまし受検”のほか、辞書や模範解答集を見てカンニングしたり、友人と答えを相談したりしながら回答するなどの不正が横行している可能性も指摘されています。