非合理的な仕組みから解放され、
人事がより生産性の高い仕事に専念できる「SmartHR」
株式会社SmartHR 代表取締役 CEO
宮田昇始さん
働き方改革の取り組みが加速するなか、人事労務担当者は依然として煩雑な手続き処理やペーパーワークに追われています。制度づくりや人材開発など、もっとクリエイティブな仕事、より生産性の高い仕事に専念したいと思っていても、なかなか着手できないのが実状です。そうした課題を解決するサービスとして、ユーザー数を急激に拡大しているのが、株式会社SmartHRが開発・運営する「SmartHR」。2015年のリリース以来、新機能の公開とアップデートを続け、ますます便利になっています。同社代表取締役 CEOの宮田昇始さんに、サービスの特長や充実した機能、今後の方向性をおうかがいしました。
煩雑な人事労務の業務をシンプルにする、シェアNo.1労務管理クラウド
人事労務における近年の課題について、どのように捉えていますか。
2019年4月に、働き方改革関連法が施行されました。人事は、長時間労働の是正、法改正への対応など、さまざまな問題に取り組んでいかなければなりません。従業員の生産性を高めるため、考えるべきことはますます多くなります。しかし人事は、ペーパーワークに時間を取られていて、制度づくりや人材開発といったクリエイティブな業務に集中できずにいる。この問題を解決していくことが、非常に重要だと考えています。
クリエイティブな業務の時間を創出するうえで、「SmartHR」はどのように役立つのでしょうか。
「SmartHR」は、煩雑でアナログな人事労務の業務をシンプルにするクラウドサービスです。雇用契約の締結や社会保険・労働保険の手続き、年末調整などが、パソコンやスマートフォンなどで完結する仕組みになっています。
従来、人事は従業員からの情報収集をメールや書面で行っていましたが、メールは煩雑で、個人情報を他人に見られる可能性も捨てきれません。紙の書類だと、郵送コストもかかります。しかし「SmartHR」は、従業員がWeb上で入力した情報を基に自動で書類を作成。役所へ電子申請を行う機能も付いています。従業員にストレスをかけることなくデータを集めることができ、専門用語や利用方法が画面に表示されているので、人事労務の知識がない方でも簡単に使うことができます。
「SmartHR」の導入企業数は、現在2万4,000社。労務管理クラウドではシェアNo.1となっています(ミック経済研究所調べ)。サービス開始初期の利用は従業員100人未満の企業が中心でしたが、最近は1,000~6,000人クラスの企業が増加。規模はどんどん大きくなっていて、3万人規模の企業にもご利用いただいています。特に飲食や小売業界で店舗をチェーン展開している企業は、その利便性を実感されているようです。アルバイトなどの従業員が簡単に手続きを行うことができ、全国に点在する店舗から本社へ書類を郵送する手間やタイムラグも解消できることが大きいのだと思います。
機能のアップデートにも積極的に取り組んでいらっしゃいますね。
雇用契約をオンラインで締結するオプション機能を、2018年夏にリリースしました。おかげさまで、ユーザーは急激に増えています。さらに労働基準法施行規則が改正されたことを受け、2019年4月からは、これまで書面交付が義務付けられていた労働条件の通知書も電子化できるようにしました。時代の流れに乗って、サービスの利便性向上、ユーザー企業への普及・啓蒙をより一層進めていきます。
また、2018年10月には店舗管理者向けiPadアプリも公開しています。開発に至った理由は、店舗や工場に勤めているアルバイトやパート従業員のなかに、スマートフォンや携帯電話、パソコンを持っていない方が多かったから。「SmartHR」を導入したけれど紙のフローは残しておかなければならない、という問題を解決しようと考えたのです。iPadを店舗に一台置けば、スマートフォンを持っていない従業員でも、アプリを使って入社手続きや年末調整を行うことができます。
ワークフロー、履歴、従業員名簿などの新機能も追加
最近も複数の機能を同時に追加されています。
2019年4月に、新機能をいくつかリリースしました。一つ目は、ワークフロー機能です。もともと「SmartHR」は、ワークフローのような仕組みになっています。これまでは法律で企業に義務付けられている手続きだけに対応していましたが、さらにデータを簡単に集められる機能を追加しました。二つ目は、履歴機能です。従業員の過去の昇給や異動だけでなく、未来の変更事項も履歴として残すことができます。例えば、従業員が半年後に結婚し、名字や住所が変わることがわかっている場合、未来のある時点から適用するデータを事前に登録できるようになっています。三つ目は、カスタム従業員名簿機能です。従業員名簿は掲載されている情報によっては利用者権限の設定が難しく、対象に合わせてさまざまな種類の権限を設定しなければなりません。それらを、簡単かつ迅速にカスタマイズできる機能を追加しました。
また、時期は未定ですが、今後は「LINE」との連携を予定しています。最近は、自分のメールアドレスは持っていないけれど「LINE」のIDならわかる、という若い方が増えているので、給与明細などを「LINE」で送り、簡単に見られるような機能を開発する予定です。
今後の目標、展望をお聞かせください。
3点あります。1点目は、外部連携です。従業員数が多く、企業規模の大きなお客さまのニーズに応えられるように製品をアップデートしていきたいのですが、自社だけでは実現が難しいこともあります。当社では勤怠管理や給与計算の機能は扱っていないので、優れたサービスを提供している企業と連携したいと思っています。2点目は、データ活用です。もともと「SmartHR」は、従業員から集めたデータを蓄積して活用する、という思想で設計しています。人事労務担当者が雑務から解放されたとき、削減されたぶんの時間を活用していけるようなサービスをリリースしていきます。まずは、社内でよく使うデータを簡単に集計できるレポート作成ツールを2019年夏に出す予定です。3点目は、確定拠出年金(401k)への対応です。この制度は、企業にとっても従業員にとってもメリットがあります。事業の成長につながり、手軽に導入できるサービスを子会社で開発中です。
さまざまなサービスを通じて、最終的に実現したいことは何ですか。
当社は「社会の非合理を、ハックする。」というビジョンを掲げています。例えば、社会保険や年末調整などは非常に有益な制度ですが、手続きが面倒で従業員の負担になっていたり、本来受けられるべき恩恵を受けられなかったりしているケースもあります。それでは、制度の意味がありません。そうした非合理的な仕組みをテクノロジーと創意工夫でなくし、当たり前に便利な世の中を作っていきたいと考えています。
本社所在地:東京都港区六本木3-2-1 住友不動産六本木グランドタワー 39F
問合せ先: info@smarthr.co.jp