紙とハンコの商習慣を変える
クラウド型の電子契約サービス「クラウドサイン」
弁護士ドットコム株式会社 執行役員 クラウドサイン事業部長 弁護士
橘大地さん
いまだに、契約は紙とハンコが当たり前と思っている人が数多くいます。しかし実際には、書類をやりとりする時間やコスト、紛失のリスクなどが不便だと感じているはず。そんな商習慣を変えつつあるのが、弁護士ドットコム株式会社が提供する、ウェブ完結型の電子契約サービス「クラウドサイン」です。契約手続きをクラウドで行うため、紙とハンコは使いません。契約書の送り手は時間やコストを削減でき、受け手もメールを開いてボタンをクリックするだけで書類を確認できるとあって、圧倒的なシェアを誇っています。開発にあたったクラウドサイン事業部長で弁護士の橘大地さんに、人事領域での活用背景、サービスの特長、今後の展望をお話しいただきました。
多様化する働き方に合わせ
契約のあり方も見直す必要がある
近年の「人・組織」の課題についてどのように捉えていますか。
人材が多様化するなか、組織に合わせて人材が動くのではなく、人材に合わせて組織が動かなければいけないと考えています。例えば自社のオフィスで働く人もいれば、社外でリモートワークをする人もいます。育児や介護など私生活で抱える事情も異なり、フルタイム勤務の人もいれば時短勤務の人もいる。人材の事情に合わせて、組織が柔軟に動いていく必要があります。
一見、働き方の多様化と「クラウドサイン」には直接的な関係がないように思いますが、貴社がHRテクノロジーサービスとして活用を進める背景をお教えください。
確かに、「クラウドサイン」はHRテクノロジーに特化したものではなく、契約業務の効率化を図りたいと考えて開発したサービスです。ただ、多様な働き方に対応するサービスでもあります。例えば、東京の企業の正社員が沖縄でリモートワークを行っているとして、契約手続きのために、わざわざ東京に行って、また沖縄に戻るというのでは時間がかかります。しかし「クラウドサイン」であれば、沖縄にいながらすぐに手続きができます。
また、入社初日を最悪の体験から最高の体験に変えたい、という思いもありました。入社初日は「ここに押印してください」「これが雇用契約書です」「就業規則、秘密保持の誓約書もあります」などと、ほぼ1日が事務的な作業の連続だからです。「クラウドサイン」で入社前に契約を結べば、入社初日は会社のビジョンやカルチャーを伝える日にできます。
さらには、10代のアルバイトなどが多い企業にも貢献できます。10代だと、ハンコは持ったことも見たこともない、という人もいます。そうしたときに、「クラウドサイン」を用いてスマートフォンでやりとりすると、効率が格段に上がります。
契約締結のスピード化、
コスト削減など多大なメリット
貴社サービス「クラウドサイン」の特長をお教えください。
「クラウドサイン」は、クラウド上で契約締結から契約書管理まで行える電子契約サービスで、契約書の送り手と受け手、双方の作業がクラウド上で完結するのが特長です。送り手は「クラウドサイン」に契約書をアップロードし、受け手に確認依頼メールを送るだけ。受け手はメールを開いて契約書を確認し、必要事項を入力しますが、「クラウドサイン」へのアカウント登録の必要はなく、費用もかかりません。送り手が「いいな」と思えば、その日から受け手も当社のサービスを負荷なくすんなり使えるので、自ずと契約のスピード化が図れます。
「クラウドサイン」を使えば、コストも削減できます。紙とハンコで契約を締結する場合は人件費や郵送費などのコストが発生しますが、「クラウドサイン」であれば0円で済みます。しかも現在、電子データは課税文書にあたらないので、印紙税がかかりません。情報がデジタル化されるので検索・保管・セキュリティーの面で優れており、業務の効率化が期待できるほか、改ざん、紛失・漏えいなどのリスクも回避できます。
日本はまだまだハンコ社会です。リリース当初は、「ハンコでなくても法律上の問題はないか」「従業員や取引先と紛争が起きたとき、裁判所に『クラウドサイン』を認めてもらえるのか」という問い合わせが寄せられました。そこで、元裁判官の弁護士に裁判向けの説明資料を作っていただき、全顧客に無料で配布して法的に安心であることをお伝えしました。ここには、弁護士ドットコムのリソースが生かされています。また、私たちにはエンジニアリングの文化もあるので、顧客からの要望にすぐ対応できます。英語や中国語の繁体字の契約書が送れる機能を実装したのもその一例です。
反響はいかがですか。
「クラウドサイン」は2015年10月にリリースし、現在導入社数は4万社を誇っています。電子契約サービス業界でのシェアは80%を超えているのではないでしょうか。特に引き合いが多いのは、金融や人材、不動産、建設といったペーパーワークが多い業界です。それぞれのリーディングカンパニーにいち早くご利用いただいています。例えば、メガバンクでは契約社員が数千人から1万人もいます。それだけの人数の更新手続きとなると数ヵ月かかることもありますが、「クラウドサイン」を使ったところ、その業務を5分で終えることができたそうです。
今後の目標や展望をお教えください。
できるだけ早く「クラウドサイン」の導入社数を100万社まで増やしたいと考えています。そのための戦略として、それぞれの分野を代表する企業とのパートナーシップを構築しているところです。また、我々の強みの一つである技術力を生かし、顧客のご要望に応える機能を最短で開発していきます。
注力しているのは、契約業務全体にコミットしていくことです。既に2018年に、「クラウドサイン」上への紙の契約書の取り込みや書類情報の入力などを代行する「クラウドサインSCAN」、クレジットカード決済により債権回収を自動化する「クラウドサインペイメント」を発表しました。さらに2019年4月には、ワークフローを満たす機能もリリース。政府がデジタルファースト法案を推進していることや、今年4月から雇用契約書だけでなく労働条件通知書の電子化が解禁になったこともあり、さらに注目を集めるのではないかと考えています。「クラウドサイン」は働き手にとどまらず、全国民のためになるサービスであると強く思っています。これから数年でハンコ文化は大きく変わっていくはずです。早く「クラウドサイン」を普及させて、契約をもっと簡単に感じられる社会を目指したいですね。
本社所在地:東京都港区六本木四丁目1番4号 黒崎ビル6階
問合せ先: sales@cloudsign.jp