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単純作業はロボットに、人間はより高付加価値な仕事へ
~リコージャパンが導入するRPAとは?~(前編)

飯沼 満さん(リコージャパン株式会社 執行役員 経営企画事業本部 構造改革推進本部 本部長)
南雲 敏明さん(リコージャパン株式会社 経営企画事業本部 構造改革推進本部 システム開発室 RPA開発グループ)

膨大な事務作業の生産性向上に向け、
RPAを試験導入

リコージャパンでの、RPA導入の背景を教えてください。

リコージャパン株式会社:飯沼 満さん

飯沼:リコージャパンではこれまで、業務効率化に向けて、各地の販売業務の統合や、業務内容の変革を行ってきました。今回のRPA導入も、その一環です。また、RPAがリコージャパンにフィットしたのは、弊社ではバックオフィス業務が膨大な割合を占めていたからです。

リコーは2008年まで、各都道府県に販売会社が分散していて、業務効率が悪い状況にありました。そこで、バックオフィスを集約して間接コストを削減ができないか、各地域会社でバラバラの業務プロセスを統合できないかを検討し、リコービジネスエキスパートというシェアードサービス(業務の請負)の会社を設立したのです。その後、2014年に、販売関連会社などと統合されて生まれたのが、現在のリコージャパンです。従業員約2万人という、大所帯の会社になりました。

リコージャパンでは、販売に関する事務作業を、東日本と西日本の二つの「販売業務センター」で行っています。必要な事務処理は膨大な数にのぼり、主な業務だけでも、トナーや用紙などのサプライ系の受注処理が月間で41万件、請求書の発行件数が38万件もあります。できる限り業務はシステム化していますが、お客様の指定伝票への対応など、イレギュラーな対応はどうしてもシステム上で処理できません。そのため、例えば請求書の発行では、全体の15%、約5万7000件を手作業で進めていました。こうした業務をRPAによって自動化できないかと考えたのが、導入の背景です。

販売業務センターでは、これまでどのような業務改革を行ってきたのでしょうか。

南雲:販売業務センターをつくって、ずっと取り組んできたことがあります。それは、高品質と高効率の追究です。2012年からミスを極力減らすため、ミスが起こった場合は、必ずその内容をデータベースに登録。なぜ起こったのか、その原因と対策を管理し始めたのです。そして、数値化された結果をもとに、システムの見直しや人材教育など、さまざまな取り組みを行ってきました。これにより、当初は半年で1000件程度発生していたミスの約65%を削減することに成功し、2016年時点では350件まで減少しました。

しかし、このような成果の一方で、目の前には大きな課題が立ちはだかっていました。社員の高齢化や、育児・介護に伴う退職や休職により、スキルの高いベテラン社員が減少し始めていたのです。さらに、既存の基幹システムでは経理処理の対応ができない月額課金型の商材が増えたことにより、手作業で行わなければならない業務も増加していました。これまでよりも少ない人数で、これまで以上の業務を進めるためには、さらに効率を上げなければならなかったのです。

リコージャパン株式会社:南雲 敏明さん

では、そこからどのようにして、RPAを導入されたのでしょうか。

飯沼:RPAそのものを知ったのは、2016年6月です。あるコンサルティング会社が「相性の良い業務改善の手法があります」と紹介してくれたのです。詳しい話を聞いた時点で、ある程度の期待はしていました。退職者の代替要員としてDigital Labor を活用できそうでしたし、さらなるミスの削減にも寄与できそうな印象を受けました。

一方で、不安もたくさんありました。業務効率化は本当に実現できるのか。新しい手法を取り入れることによって、今いる業務スタッフに別の負担が掛かることはないのか。古いシステムが残る中、RPAと適合できるのか――。また、リアルな人間とDigital Laborが、本当に協働できるのかも心配でした。自分の仕事が取られるので、導入に反対する社員が出てくるのではないか、と。

そこで、まずは試験的に導入してみることにしました。パイロットで実施し、想定通りの結果が得られるか。不安に思っていることが、どの程度、現実に起きるのか。それらをまずは検証し、その上で、本格的な参入をジャッジしようと考えたのです。すぐに準備に着手し、実際にパイロット導入を開始したのは、翌月の7月。夏休みを挟んだ6週間で、検証を行いました。

ありがとうございました。後編では、実際にRPAを導入した効果と、そこから見えたRPAの今後の可能性を、さらに詳しくうかがいます。

 


2017/06/29実践活用事例リコージャパン業務効率化RPA/ロボティック・プロセス・オートメーション

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