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組織の力を最大化する「チームワーク」「チームビルディング」のあり方とは

  • 守島 基博氏(一橋大学大学院 商学研究科 教授)
  • 中竹 竜二氏((公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター/ U20日本代表ヘッドコーチ/ 株式会社TEAM BOX 代表取締役)
2015.06.23 掲載
リ・カレント株式会社講演写真

企業における「チーム」のあり方が注目されている。チームが成果を上げるには、メンバー全員がその力を発揮すること、メンバー同士がシナジーを発揮することが重要だが、そのためにはどうすればいいのか。本来チームが持つ潜在性やポテンシャルは、以前のチームのように「仲がいい」「コミュニケーションがいい」といった連携には留まらない。一橋大学大学院教授の守島基博氏と日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹竜二氏が、力を最大化するチームワーク、チームビルディングのあり方について語り合った。

プロフィール
守島 基博氏( 一橋大学大学院 商学研究科 教授)
守島 基博 プロフィール写真

(もりしま もとひろ)人材論・人材マネジメント論専攻。1980年慶応義塾大学文学部卒業、同大学院社会研究科社会学専攻修士課程修了。86年米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。組織行動論・労使関係論・人的資源論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部助教授。90年慶應義塾大学総合政策学部助教授、98年同大大学院経営管理研究科助教授・教授を経て、2001年より現職。主な著書に『人材マネジメント入門』『人材の複雑方程式』『21世紀の“戦略型”人事』『人事と法の対話』などがある。


中竹 竜二氏( (公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター/ U20日本代表ヘッドコーチ/ 株式会社TEAM BOX 代表取締役)
中竹 竜二 プロフィール写真

(なかたけ りゅうじ)1973年、福岡県生まれ。早稲田大学入学後ラグビー蹴球部に入部。4年次には主将を務め全国大学選手権準優勝。卒業後渡英し、レスタ―大学大学院社会学部修了。01年株式会社三菱総合研究所入社。06年早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、07年度から2年連続で全国大学選手権を制覇。10年4月より日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターに就任。12年度はラグビーU20日本代表監督を兼任。日本における「フォロワーシップ論」の提唱者のひとりとして、次世代リーダーの育成・教育や組織力強化、成人向けの学びの環境づくりに貢献。企業コンサルタントとしても活躍中。主な著書 に『自分で動ける部下の育て方—期待マネジメント入門』(ディスカヴァー新書)、『部下を育てるリーダーのレトリック』(日経BP)など。


中竹竜二氏によるプレゼンテーション:
チームの敵は固定化。常に枠を再定義し、つながりを考えていく

中竹氏は新たにチームを作る際に、必ずチームをリフレーミングし、再定義すると言う。「僕がヘッドコーチを務めているラグビーのU20チームは、いろいろなところから選手が集まっているので、パス一つ取っても定義が違います。メンバーに〈いいパス〉の例を示してもらうんですが、それぞれ違うわけです。世界を相手に戦うチームとなると、次の動作につながる受け方をしなければいけません。そこでパスを始め、スキル、スピードなどをチームで定義していきます。これは企業も同じだと思います。同じ企業の社員でも世代が違うと〈スキルがある〉の意味が違ったりするでしょう」

中竹氏は、ラグビーチームでワークショップを行っている。チームについて考えるときは「チームとは違うものは何か」を聞くという。グループ、サークル、パーティー、マス、ユニットとどう違うか。話をしながらチームを再定義していく。

講演写真

「僕の中でチームの対局は〈グループ〉です。グループは固定的で、あまり動かない。そして責任分担が明確で維持継続のイメージがある。でも、これから戦うチームは絶対に流動的で、個性やスタイルが発揮できないと勝てません。〈役割分担〉ではなく〈自律貢献〉。役割を与えられる前に自ら立つ。〈責任分担〉ではなく〈責任を共有して進化する〉。チームとグループで異なるのは、互いが学び合うかどうかです。ここが大きく違います」

中竹氏は、チームワークとチームビルディングは違うものだと語る。チームワークは、歯車のようにワークするもの。チームビルディングは、チームのベースを大きくしていくものだ。だからベースが大きくなっているかどうかを、リーダーと一緒に確認していく必要がある。

「例えばチームビルディングに関するワークショップでは、チームワードを皆で考えて作ったりします。例えば〈つながり〉です。パスもつながるものです。他にはチームトークで選手たちだけで問題解決をする。点数を取った後、取られた後はどうすべきか、そのつながりを考える。円陣を組むことを、試合前だけでなく、練習前にもやろうという提案から雰囲気が変わったこともありました。そうやって、つながりの定義を変えていくわけです。つながっているとはどういうことかを、常にリフレーミングしていく。これが僕の仕事だと思っています。具体的に自分から何をやれ、と指示はしません」

中竹氏は人がつながるために必要な要素を三つ上げる。「個人が組織にいかに関心を持つか」「自分の要望をきちんと言えるか」「自分から自律貢献してコミットメントできるか」だ。この三点を具体的に実行していくことが、チーム化するコツと語った。

守島基博氏のよるプレゼンテーション:
チームが戦略的に位置づけられ、「真のチーム」が生まれている

日本企業はチームという言葉を戦略的に位置づけなくてはいけないと、守島氏は語る。それはなぜか。その理由は二つあるという。一つ目は、チームと呼ばれるもののあり方が変わってきたこと。二つ目は、企業間の競争の中でそのようなタイプのチームをうまく回わせることが、業績にダイレクトに影響してきているという事実だ。

「以前のチームはただ同じ部署になったというレベルのものでしたが、今では国籍も文化も違う多様性の高いグローバルチームがつくられたり、新しいイノベーションを起こすために専門性が異なるメンバーでチームをつくったりと大きく変わっています。こんなチームをどうやってマネジメントしていくのか。そこに日本企業は慣れていません。また、ICTが進み、こうした技術を使って多様な人の成果をまとめて、一つのアウトプットにしなければならないケースも増えている。これもこれまでのチームのあり方とは違います。私は実はこのような多様な考え方と専門性をもったチームこそが、真の姿なのではないかと思っています」

新しい「真のチーム」と今までのチームは何が違うのか。守島氏はいくつかポイントを上げる。一つ目はコミュニケーションの違い。これまで重視されるのは仲の良さだったが、それが新しいチームでは、あるときは怒鳴り合ったり、ケンカしたりと本音のコミュニケーションが成立することもある。二つ目は行動規範として、個の貢献が重要になってくるということ。三つ目はこれから異質性や違った専門性などの価値観が重要になってきていること。これまでのチームは同質で、同じような人の集まりだったがその点が違う。

講演写真

「今までの集団には、共通の目的がありました。私は新しいチームはゴールではなくて、価値観やビジョンであるとか、『こういう世界を達成したい』という考えが共有化されていくことがチームとして重要だと思います。つまり、ある特定の目的を達成するより『こういう世界にしたい』『こんな会社にしたい』という思いが重要になってくる。次に多様性の高いチームでリーダーシップという観点でどういうことが重要かといえば、これまでのリーダーはポジションリーダーでした。権威のある調整役として機能するリーダーが重要でした。それに対して、これからのチームリーダーは部下をエンパワーメントする。メンバー一人ひとりにできるようにさせてあげる。つまり力を持たせてあげることが重要になります」

そして、リーダーのフォロワーは、これまでリーダーに従順に着いて行くことが重要だった。しかし、新しいチームでは自律的に判断し、きちんと自分の行動を律していけるような、そういうフォロワーが重要になってくる。

「そしてチームの雰囲気では何が重要になるかというと、昔は和気あいあいとした雰囲気が求められましたが、〈真のチーム〉の中ではメンバー間に一定の対立と、一定の競争がある空間が必要です。そう考えると、最近つくられているチームは、〈真のチーム〉としての役割が求められていると感じます」

次に守島氏はすぐれたチームの特徴について語る。そこにはいくつかポイントがある。一つ目は自律した個、高い専門性を持つ個がそこにいること。二つ目は本音のコミュニケーションがあること。三つ目は、リーダーはメンバーに決めさせること。四つ目は、メンバー間に競争があることだ。

「人事がやるべきポイントが、いくつかあります。一つ目はチームマネジメントが企業にとって重要になってきたという認識を持つこと。二つ目は個の自律を促していくこと。三つ目は、チームを異質性をもたせてつくること。四つ目はチームがバラバラになるので、コミュニケーションを円滑に保つこと。そして五つ目は、リーダーというのは単に偉いボスではないということです。ボスではなく部下がやっていくことにエンパワーメントしていくことが役目。そういう教育を行うべきだと思います」

チームはなぜ企業に必要とされるのか。それはいつでも個人の力を超える力を発揮するからだ。個の力を集めただけでない、それ以上の力に変えることができる。

「今までのチームは、どう個の力をまとめていくかを考えていましたが、これからは違います。強い個の相互作用や専門性に基づいた対立であるとか、そういうものを前提に、新しいイノベーションを生み出していくというのが、これからのチームの姿になります」

ディスカッション:
「真のチーム」はチームワークを捨てでも勝てる

中竹 これからはどの組織も「競争に勝つ」ことが重視されると思います。一度、チームワークが最悪なチームの監督を務めたことがあります。そのとき選手側はチームワークをつくりたいと言ってきたのですが、私は1年では間に合わないと、個が個で勝負するチームを目指したのです。でも結果は優勝できたんですね。

守島 勝てた理由はなんだったのですか。

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中竹 僕にとってチームワークは物理的、精神的、機能的に連動し影響し合うことです。世の中の多くは、精神面ばかり気にしているのではないかと思いますが。でも本当は、機能的につながっていればいいと思うんです。企業でよくあるのは、「仲間だけどライバル」という関係。スポーツも同じで、ポジションで競争したりします。仲は悪くてもいいんですよ。自分が頑張れば、それでチームは勝てるんです。

守島 その話はよくわかります。ある製薬会社の新製品開発チームで、機能的にはよくつながっているが、個人的なことはお互いにまったく知らない。そうした集団もチームなのです。またお互いが知り合っていることが求められる場合もある。そう考えると、状況によって、あるときは機能的がいい、あるときは精神的につながりがあったほうがいいと分かれる気がします。その判断はどうすればいいと思われますか。

中竹 先ほどの話で、私はリーダーたちに「チームワークはツール、手段だよね」と言って、キャプテンに回答を預けたんです。すると一週間後にキャプテンがミーティングで、震えながら「仲良くならなくていい」と言い切ったんです。そして優勝が決まる試合の直前には、キャプテンは皆にこう言いました。「うちはまとまって勝つのではなくて、勝ってまとまろうよ」と。それを聞いて、勝てると思いました。

絶対的答えはない。どこまで状況に応じたアンサーがつくれるか

守島 機能的なつながりは精神のつながりにも影響しますね。逆に精神がどんなにつながっていても、結果が出なければすべてダメになる。やはり結果がついてこないと、いいチームにはならないということですね。

中竹 そう思います。僕はチームワークとチームビルディングを分けていますが、実は物理的とか精神的とかというのは、チームビルディングのほうに使えるのではないかと思っています。チームをつくるには、同じ時間一緒にいたほうがいいし、たくさん話した方がいい。これはチームワークを作っているというより、ビルディングを行っているわけです。ここを整理しておかないと、チームビルディングをやればチームワークもできていると思ってしまいます。これは別物です。先ほどの仲の悪いチームの次の年は、すごく仲のいいチームだったんです。それで自分も真逆の方針で指導しました。すると、その年も優勝できましたね。

守島 チームをつくることに絶対的な答えはなく、状況に応じてどこまでベストアンサーをつくっていけるかが重要ということですね。今日はありがとうございました。

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多くの人がリーダーに登用されてから失敗をするのはなぜでしょうか? それはリーダーになってから教育を受けるからです。リーダー教育はリーダー昇進前に始めるべきなのです。昇進前に行うフォロワーシップ強化教育によって上位者の視点を身につけさせ、「自分がリーダーであれば○○する」という当事者意識を持たせることが重要なのです。同時に上位者に対しては、部下のフォロワーシップを引き出すリーダーシップ教育を施すべきです。 リ・カレントでは、「リーダーシップ×フォロワーシップ」デュアル教育によるチームワーク開発をサービスコンセプトに、個人の能力開発と組織開発のお手伝いをしています。

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