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激変の新卒採用(2016卒・2017 卒)を勝ち抜くポイントとは!?

  • 西澤 亮一氏(株式会社ネオキャリア 代表取締役)
  • 森川 亮氏(C Channel株式会社 代表取締役社長)
2015.06.23 掲載
株式会社ネオキャリア講演写真

2016年卒の新卒採用は、大学3年生時の3月に就職活動解禁、4年生の8月から採用選考開始へとスケジュールが繰り下げられた。この変更によって企業側は採用戦略の見直しや修正を余儀なくされたが、さらに、近年大きく変わりつつある採用ルートや学生の動向なども見据えた戦略も不可欠である。講演前半は、新卒採用に関して、紹介領域・メディア領域・アウトソーシング領域と幅広く展開している株式会社ネオキャリアの代表取締役社長である西澤亮一氏が、新卒採用の実態や予想について語った。後半は、LINE株式会社の元代表取締役であり、現在はC Channel株式会社で新しい動画メディアを発信している森川亮氏を交え、最近の学生を引きつける手法や採用に成功するポイントについての対談が行われた。

プロフィール
西澤 亮一氏( 株式会社ネオキャリア 代表取締役)
西澤 亮一 プロフィール写真

(にしざわ りょういち)1978年生まれ。2000年11月、新卒同期9名と株式会社ネオキャリアを設立。2002年、代表取締役に就任。「人材・IT・グローバル」領域にて、世界を代表するサービスカンパニーの実現を目指し、幅広い分野で採用支援を手掛けている。日経ビジネス「若手経営者が選ぶベスト社長」に抜擢。


森川 亮氏( C Channel株式会社 代表取締役社長)
森川 亮 プロフィール写真

(もりかわ あきら)1967年生まれ。日本テレビ、ソニー株式会社にてネット広告やブロードバンド事業をはじめ、多数の新規事業に携わる。ハンゲームジャパン株式会社にて、代表取締役社長就任後、ネイバージャパン株式会社を設立、「NAVER」ブランドのサービスを展開。「LINE」をはじめとした様々なウェブサービス事業を展開する。


学生は「内定辞退予備軍」であるという認識が必要

2000年に設立以来、新卒サービスに携わってきた株式会社ネオキャリアの西澤氏。自社成長の鍵は「新卒採用の強化にある」と実感しているという。200名採用を予定している同社の話も含め、まずは2016年卒採用の現状を三つに絞って取り上げた。

「一つ目はインターンシップを実施する企業が増えたことです。数年前は2~3割程度でしたが、今は過半数を超えています。二つ目は、採用ルートの複雑化。大手媒体に告知を出しても以前ほど学生が集まらなくなりました。そこで、さまざまなルートを企業が活用し始めています。三つ目は、大手志向です。例年は大手の内定が5月頃に終わり、その後、中堅・中小へと学生が流れる構造がありましたが、今年から採用選考開始は8月。この遅れが大きな影響をもたらすことは言うまでもありません」

2016年採用に関して押さえておきたい点は、「他社進捗の確認」だと西澤氏は言う。内定承諾後も、多くの学生が就職活動を続ける現状は見逃せない。ネオキャリアでも、50人ほど仮内定を出し始めているが、ほとんどの学生が他社を受ける意思を示しているという。

「そういった学生に対して、我々は『受けていいよ』『応援するよ』『受ける会社はちゃんと教えてね』というスタンスで密なコミュニケーションを取るようにしています。他社の進捗を確認しながら、最後は『やっぱりネオキャリアに決めます』と言ってもらえる状況を作っておくことが大事だと思うのです。つまり、学生が他社の選考に苦戦した場合、最終的に親近感のある弊社を選択するフローになります」

フェイスブックやLINEのコミュニティによる「内定者同士のつながりの創出」や「内定者研修の実施」も押さえておきたい点である。それらを通じて課題などのやりとりを行い、学生とのキャッチボールを続けていく。ともかく、学生は内定辞退予備軍である認識の下、向き合うべきなのである。

講演写真

インターンシップは冬の短期。コンテンツに工夫

2017年卒採用のポイントとして、西澤氏は「インターンシップ攻略」「複数チャネルの用意」「採用業務の負荷軽減と効率化」を挙げる。

「インターンシップを始めた企業は多いのですが、採用につながっていないケースも多いと実感しています。去年の事例を見ると4タイプに分かれます。一つ目は、インターンシップが全くできなかった企業。知名度が低い企業では学生を集めることは容易ではありません。二つ目は、実施してもうまくいかなかった企業。夏だけの実施では本エントリーにつながりません。学生は、秋冬に他の企業のインターンシップに参加するので忘れられるからです。夏に実施するのなら、秋冬にも実施するか、他のアクションを取らなければムダになります」

三つ目は、秋から冬だけ実施した企業。これは、エントリーに大きく寄与するという。人事部のキャパシティーが不足する場合はこの時期にフォーカスさせるべきで、実際、冬に短くワンデー、ツーデー、スリーデーを行う企業は増えている。四つ目の、夏秋冬とも実施した企業は、やはりエントリーもしっかりと集まる。以上から、最低限望ましいインターンシップの形式は『冬に短期』開催だと西澤氏は言う。

「インターンシップへの学生の応募は、数年前の4割から7割へと急激に伸びています。実際の参加者も5割強。参加者の6割はその企業に『入りたい』『行きたい』と感じ、4割は『入りたくない』と捉えるデータがあります。この数字はコンテンツの重要さを意味します。昔からありがちな業界説明型や新規事業立案型は学生に不人気で、提案型やその会社の営業経験型、商品提案型が今は人気です。しかしながら、インターンシップ実施を予定している企業は増えているもののまだ約4割。意識の高い学生が参加する傾向がありますから、ここに力を入れて攻略できるかは、一つ目のポイントになると思います」

昨年秋のアンケートによると、ナビ以外にも、学内キャリアセミナー、キャリアセンター、インターンシップ、OBOG等にチャネルが広がってきている。ネオキャリアの場合も、採用人数の割合は、ナビ40%、インターンシップ30%、新卒紹介と就職イベントが各15%と分散化。最近は、新卒に注力した紹介会社、中小ベンチャーのスカウトサイト、ダイレクトリクルーティングも増え、ナビに頼らずとも活用できるチャネルは多い。「複数チャネルの用意」が2つ目のポイントになるという。

「最後のポイントは『採用業務の負荷軽減と効率化』です。採用人数に対して、活動時期、担当者数、インターンの必要性等の細かな推奨データがあります。それと比べると、このところ採用業務の負荷増大傾向が見られ、弊社の採用代行のご依頼も非常に増えています。戦略立案、チャネル、インターンシップ、セミナー選考等、各段階の課題に対し全面的に提案させていただいておりますので、我々のようなアウトソーサーを活用するのも手だと思います」

「お客さまに対するような」コミュニケーションが必要

後半は、LINEという斬新なプラットフォームを構築した人物ならではの着眼点を新卒採用の参考に共有したいと、C Channelの森川亮氏に西澤氏が質問をする形で話が進められた。

西澤:森川さんは、元々キー局でシステム関係や新規事業の立ち上げなどを担当された後、大手電機メーカーに移ってジョイントベンチャーに携わり、その後はLINEを育て上げて、今年の春に新会社を設立、という多彩な経歴の持ち主です。早速ですが、今はナビでの採用に限界を感じる企業が多い状況です。まずは、学生と出会う最適な方法として、森川さんなりの考えや行ってきたことを教えて下さい。

森川:企業は大きくなってくると、社員は新しいことよりも今ある仕事を磨き上げることが中心になって、オペレーションの仕事がどんどん増えてしまいます。ですから、いかに社員がクリエイティブになれるかが重要だと思っています。そういう意味で、人事こそクリエイティブになるべきじゃないかと前職で考え続けていました。たとえば、財務は昔、会計ができれば充分でしたが、イノベーションが起きて会計の概念からファイナンスの領域に変化しました。会計は守り、ファイナンスは攻めだと換言できます。人事にも今後は攻めの採用が求められると考えています。

西澤:攻めという点では、特に歴史がある企業は弱いかもしれませんね。

森川:人事における具体的な攻めの手法は、採用したい人材の定義をしてから、定義した人材がどこにいるのかを考えるという、シンプルな話です。基本はどれだけ大学に近づけるかだと思います。

西澤:自分の会社に合う学部学科を探して、直接そこを訪問する人事の方もいらっしゃいますね。

森川:私もネット上で大学の教授を調べて、フェイスブックで友達申請をして、その後一緒に食事をしたり会いに行ったりしました。いきなり採用の話はせずに友達になるところから始めて、かなり広がりが出ました。

西澤:C Channelでは、どんなターゲットの人材をどんなふうに集めたのですか。

森川:一番効果が高いのは、スタッフからの紹介です。LINE時代もそうでした。課題もありますが、社員紹介ほど信頼の高いものはありませんし、定着率も高いです。

西澤:おっしゃる通り、リファーラルリクルーティングが流行しています。また、ナビ媒体が淘汰されて、LINEやSNSを採用活用につなげる動きもあります。これに関しては、どうお考えですか。

森川:優秀な方を採用したい企業にとっては、そういう学生にいかにリーチするのかが大事です。優秀な方は情報収集能力も判断力も非常に高いので、率直なコミュニケーションや、ある程度内部を開示する必要もあるように思います。そういう意味では、オンラインオフラインに関わらずカジュアルなコミュニケーションが重要ではないでしょうか。それから、たとえば技術系志望の学生は、社長よりも技術者の話を聞きたいものです。「この人の下で働きたい」と思ってもらえるような、採りたい人材に合わせて変えるコミュニケーション法も考えるべきです。

西澤:話が盛り上がらなかったり、うまくかみ合わなかったりというジェネレーションギャップを私も最近感じています。そのへんでのコツや工夫はありますか。

森川:一つは、上から目線で見ないことでしょう。採用という面で考えると、学生はお客様のような立ち位置になりますから、どのようにサービスを説明し、共感してもらうか、という視点が必要だと感じています。

西澤:逆に、緊張させたり困らせたりして、どんな対応をするかを見る圧迫面接もありますね。

森川:企業文化もふまえたプロセスとしてあるのだと思います。ただ、強みを引き出そうとしないで高圧的に接すると、優秀な学生は離れていく傾向があります。いかに多様性を受け入れ、その人の力を企業の力にできるかという、ファシリテーションやエンパワーメントの能力が求められていると思います。

講演写真

学生にとって大事なのは「自分の居場所」

西澤:他社よりも自社を選んでもらうため、参考になる方法をご紹介下さい。

森川:原宿の店舗の方と意見交換したところ、最近は、商品を前面に出すと若い人は引いてしまうそうです。カフェだと思って入ってみると、そこにさりげなく商品が置いてあり、共感して買っていく。今の若い人は居場所を重視するのです。ですから、採用において大事な最初のステップは、説明会の雰囲気づくりです。自分の居場所らしい空間なのかどうかで、セレクションする傾向も感じます。

西澤:学生座談会を開催した時、講義形式をコの字の席に変えてみたら、コの字の方が圧倒的にコミュニケーションは活発になって、手応えを感じたことがあります。学生にはどういう居場所が好ましいのでしょうか。

森川:それは企業カルチャーによります。無理に居場所を用意するのではなく、自分にとっての居場所かどうか判断しやすいように、より企業自体を表現する場づくりが重要かと思います。その際、座席の話もそうですが、ヒエラルキーを感じさせないことが、優秀な学生にとっては特に重要です。それは居場所もコミュニケーションも服装も同じです。それから、コミュニケーションで大切なのは共感だと思います、その人の生き方やビジョンや未来と、会社の未来像の延長線上の交点は共通した目標になります。そこに一緒に共感するような会話をするように心掛けています。

西澤:今日は、森川さんならではの新卒採用に関するお考えをうかがうことができました。ありがとうございました。

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本講演企業

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