健康経営 powered by「日本の人事部」 人生100年時代の働き方を考える

株式会社クレディセゾン:
がんとともに生きていく時代 
社員が治療と仕事を両立するために人事ができることとは(後編)[前編を読む]

株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長 武田 雅子さん

  • facebook
  • X
  • note
  • LINE
  • メール
  • 印刷

変わりつづけるからこそ、一人ひとりにある当事者意識

 普段から「お互いさま」の精神で、助け合えるような雰囲気があることは、チームビルディングを考える上でも非常に重要だと思います。どうすれば、そういった企業風土が醸成されていくのでしょうか。

長年にわたり培われてきたものによるのかもしれませんが、2013年につくった『ヒューマニズムの風土創り』という行動規範にも掲げたように、「楽しくなければ 仕事じゃない」という意識がみんなに共有されていることが大きいですね。みんなが楽しく働けるのがベストだけれど、働いている以上はさまざまな障害が起こり得ます。社員それぞれは多かれ少なかれ、介護や育児など、何かパフォーマンスが下がるような要因を持っています。しかし、それを認めながら、同じ目標に向かってみんなでがんばっていこう、という雰囲気があります。

ヒューマニズムの風土創り

社員は何か行動を起こす際に、『ヒューマニズムの風土創り』が頭の片隅にあるようです。会議でも「ここに『言論の自由を保障します』と書いてあるので申し上げますが……」というシーンがあったりします。また、今年9月には大きく人事制度を変える予定なので、さらに進化したバリューと自身の行動を照らし合わせることになるだろうと思います。

 人事制度はどのように変わるのですか。

大きくは「同一労働同一賃金」です。パート社員や契約社員、正社員などさまざまな雇用形態を撤廃、全社員を正社員化して、その役割や仕事内容に見合った処遇にしようと、現在の等級制度を新たなグレードに適用し直します。賞与も全社員を対象に、グレードに応じて支給します。そのため、昨年の春からその準備段階として、各拠点の支社会議を回り、人事部による説明会を行っています。やはり、マインドセットが重要なんです。

当社にはさまざまな個性を持った人がいて、「この業務は〇〇さんがやる」といったように属人的な部分が多かったんです。しかし、これからは「上司として、部下一人ひとりにどんな役割を期待するのか」を明確にしなければ、新しいグレードに当てはめることはできません。社員も役割が明確になることで今後のキャリアが描きやすく、自身が今後どうなりたいか考えるきっかけを得ることになります。

 武田さんから現場には、どのようなメッセージを発信しているのでしょうか。

株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長 武田 雅子さん

たとえば、これまではとことん「How」と数字を突き詰めてきましたが、これからは「Why」と「What」を伝えるマネジメントをしよう、と話しています。会議は「安全な場」であることを宣言し、ここでは何を言っても、どんなアイデアを提案してもかまいません。そういうことを何度も、布教活動のように話し続けてきたら、少しずつ意識が変わってきました。「カード契約○件獲得!」ではなく、「クライアントのために何ができるのか」を考えるように、さらには地域への貢献という視点から「自分たちの街をキャッシュレス社会に変えよう」などといったように、仕事の視座が高くなりました。時には、結果がどうなるのかわからないけれどまずは話しあう場を持とう、というような取り組みも増えました。

たとえば神奈川支社では、駅前のゴミ拾い運動を始めたり、面白法人カヤックさんと月一でブレストをしたりしていて、私から見ると実績のいい支社ほど、「みんな、いつ本業をやってるんだろう?」と思うくらい、プラスアルファの新しい活動ができているのです。そういう支社は「何を実現するための仕事なのか」というコンセプトが明確で、ストーリーもあるから社員のモチベーションやエンゲージメントにもつながっている。何より、実に楽しそうなんです。好調な支社に追随し、他の支社もさまざまな取り組みを始めていて、頼もしい限りです。

 これまでの数字重視の世界から考えると、パラダイムシフトとも言えるような変化ですね。社員に戸惑いはなかったのですか。

当社の社員は変化に強いというか、「とりあえず乗ってみるか」という順応性も感度も高いので、むしろ楽しんでくれていると思います。それは、会社の成り立ちによるところもあるのかもしれません。もともと緑屋という小売業からスタートし、カード会社に鞍替えして、お客さまやマーケット、クライアントの変化にずっとついてきました。「今のままがずっと続くなんてありえない」「変わらないことは退化」「新しいものを取り入れなければ、よどんでしまう」というマインドが染みついているんです。

そのため、新しいルールを決めても、不満や要望があれば社員からどんどん意見が挙がります。今回の人事制度も、「落ち着くまで何年かはかかるだろう」と支社長たちも理解してくれています。ダメなら変えればいいし、代案を考えればいい。常に「あなたはどうするの? どうしたいの?」と、社員一人ひとりに問われているんです。当事者意識が芽生えてくるのも、当然かもしれません。


  • facebook
  • X
  • note
  • LINE
  • メール
  • 印刷

あわせて読みたい

記事

ワコールに学ぶ女性の健康支援。内勤・外勤を問わず、すべての社員が健康に働くために

社員の9割以上が女性という株式会社ワコールでは、がん検診を中心とした女性の健康支援を進めており、2021年度の乳がん検診受診率は93%。内勤・外勤という働き方の違いもある中で、すべての社員にきめ細やか...

2022/10/14 関連キーワード:健康経営 女性の健康 がん検診 コラボヘルス

記事

誰もがイキイキと働ける職場へ
臨床心理士・関屋裕希の ポジティブに取り組む「職場のメンタルヘルス」
【第9回】ストレスチェック制度の「医師による面接指導」をバージョンアップ!

ストレスチェック制度で従業員に介入できるタイミングは、三つ(図で黄色に示した箇所)あります。一つ目は結果を返却するタイミング、二つ目は高ストレスの基準に該当した労働者に医師による面接指導を勧奨するタイ...

2021/08/20 関連キーワード:ストレスチェック メンタルヘルス 休職 産業医 ポジティブに取り組む「職場のメンタルヘルス」

記事

誰もがイキイキと働ける職場へ
臨床心理士・関屋裕希の ポジティブに取り組む「職場のメンタルヘルス」
【第6回】復職することがゴールではない! イキイキと働き続けるための「復職支援」

厚生労働省が実施している労働安全衛生調査によると、メンタルヘルスを理由に過去1年間で連続1ヵ月以上休職した労働者の割合は0.4%で、この割合は事業所が大きくなればなるほど高くなるものの、従業員300名...

2021/05/27 関連キーワード:復職支援 メンタルヘルス マネジメント セルフケア ポジティブに取り組む「職場のメンタルヘルス」

記事

朝型勤務、がんとの両立支援、日吉独身寮新設
全てにひも付く、伊藤忠流「企業戦略としての健康経営」とは

総合商社の伊藤忠商事では、かねてより社員の健康管理や働き方改革にも力を入れてきました。「健康経営銘柄」にも2年連続で選定され、注目を集める同社ですが、がんや長期疾病を患う社員の支援や健康経営も視野に入...

2018/08/28 関連キーワード:がん 両立支援 健康経営 伊藤忠商事 朝型勤務 社員寮

記事

「生活習慣病」「がん」「メンタルヘルス」「女性の健康」「たばこ」五つの柱で進める健康経営~「JAL Wellness」の目指すもの~:日本航空株式会社人財本部 健康管理部 兼 運航本部 運航乗員健康管理部 今村 厳一さん

「全社員の物心両面の幸福の追求」を企業理念に掲げる日本航空(JAL)グループ。その実現には社員の「心身の健康」が不可欠という考えのもと、健康推進プロジェクト「JAL Wellness」を発足。「生活習...

2018/01/18 関連キーワード:健康経営 企業事例 生活習慣病 メンタルヘルス がん たばこ 女性の健康