ハッカソンのケーススタディ
「いいね!」を生んだ徹夜の開発イベント
ITから他業種へ広がるアイデア発掘の場
ソフトウェア開発の分野で「ハッカソン」という言葉が使われ始めたのは20世紀末。2000年代半ばから後半には米国の主要なIT企業やベンチャーキャピタルに普及し、新しい技術やサービスが迅速に創出・提供される場として重視されるようになりました。例えばFacebookの代名詞ともいえる「いいね!」ボタンが、同社創業時から行われている、恒例の社内ハッカソンイベントを通じて生まれたサービスであることは有名です。同社の典型的なハッカソンでは、呼び掛けに応じた参加者が午後7時ごろに一堂に会し、プログラミングを開始。10時ごろにはファストフードの夜食が提供され、翌朝6時ごろまで徹夜でプログラミングを続けるというのですから、なるほど「マラソン」の名に偽りはありません。多数の開発者が集中して短期間で一気に仕上げることから、アイデアの発掘が期待でき、開発ニーズに迅速に対応できるのがハッカソンの最大の強みです。
国内でも近年、大手インターネット関連企業がいち早く開催に乗り出しました。楽天やヤフージャパン、グーグルなどが定期的に社内ハッカソンを行っているほか、社外からもオープンに参加者を募るハッカソンイベントが各地で多数催され、盛況を博しています。さらにここへきて、IT業界に限らず、さまざまな異分野にも活用事例が広がってきていて、日本独自の新しいハッカソンの展開として注目されています。
昨年10月には、パナソニックが「今までにない記憶/記録を残すプロダクト」というテーマで、「One Panasonic Hackathon」と題するイベントを開催。同年11月には、シャープが大阪市との共催で、ロボット掃除機のアプリケーションを競う「CoCreation Jam」を行い、話題を集めました。
ユニークなところでは、飲料メーカーの伊藤園のアメリカ法人が今年3月に米シリコンバレーで開いた、お茶の新しい飲み方のヒントを探るハッカソンが挙げられます。テーマは「サンフランシスコで甘い飲み物を飲む人の半分を甘みのない飲み物を飲む人にする方法」で、「茶ッカソン」と名づけられました。また、ハッカソンをオープンイノベーション推進の一環と位置づける富士通やトヨタは、社内や同業者からは出てこないような斬新な発想を求めて、広く外部人材を交えたハッカソンを今年4月と9月にそれぞれ開催しています。