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競争優位性の高い企業文化の創造 「7つの習慣」から学ぶ、研修の組合せから個人・リーダーの成長プロセス

  • 末永 陽一氏(メットライフ生命保険株式会社 フィールドラーニング開発本部 マネジャー)
  • 佐藤 亙氏(フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 副社長兼開発部門長)
2017.06.21 掲載
フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社講演写真

勝ち続ける企業に変わるためには、どんなリーダー育成が求められるのか。世界147ヵ国で研修プログラムを展開する『7つの習慣』の創設者スティーブン・R・コヴィーは「状況を変えたければ、まず自分たちが変わらなければならない」と述べている。本セッションでは『7つの習慣』を導入し成功しているメットライフ生命保険の事例を紹介。フランクリン・コヴィー・ジャパンの佐藤氏が、競争に勝つリーダーを育成するプロセスについて紹介した。

プロフィール
末永 陽一氏( メットライフ生命保険株式会社 フィールドラーニング開発本部 マネジャー)
末永 陽一 プロフィール写真

(すえなが よういち)国内大手生命保険会社に勤務後、現メットライフ生命(当時アリコジャパン)に転職、その後一貫して人材育成に携わり、トップ営業マン向け研修ならびにリーダーシップ・マネジメント研修のプログラム設計~実施を行う。2014年12月に従来の研修スタイルとは全く異なるリーダーシップ・マネジメント養成プログラムを設立。
以来、組織の成長性と生産性について従来の1.4倍の実績、組織のハイパフォーマー占有率についても倍増を達成。現在、当プログラムのメイントレーナーを務める。また、7つの習慣セミナーを10年以上にわたって提供する国内屈指のファシリテーターでもある。


佐藤 亙氏( フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 副社長兼開発部門長)
佐藤 亙 プロフィール写真

(さとう わたる)1988年、モトローラ社に入社以来、一貫して人事畑を歩む。1993年にモルガンスタンレー証券会社に転職。人事ジェネラリストとして人事業務全般に従事する。その後、日本ケイデンス・デザイン・システムズ社人事マネジャー、マイクロソフト社人事本部長、SAP社人事本部長・バイスプレジデント、日系ベンチャー企業の執行役員を歴任後、2006年にフランクリン・コヴィー・ジャパン副社長に就任。「7つの習慣」をはじめセミナー全般のプログラム開発、講師マネジメント部門、人事部門を統括している。


佐藤氏によるプレゼンテーション:ストーリーで学ぶ『7つの習慣』

まず、佐藤氏が登壇。「人事の皆さんが行われている活動は、本当に得たい成果や効果につながっているでしょうか」という問いから講演は始まった。

「私もかつて、企業で人事の仕事を20年担当していました。私たちは何のために人事の仕事をしているのか。それは長期的、継続的に望む成果や効果を得るためです。では、これらをコンスタントに得られる仕組みはつくれているでしょうか」

組織は人によってつくられている。その組織に属している人たちの思考の習慣、あるいは行動の習慣は、得たい成果や効果につながっているのか。佐藤氏は、それらの習慣の集大成が企業カルチャーであると語る。では、優れた企業カルチャーがもたらすものは何か。
「決定する要素は四つあります。一つ目は独自の貢献。優れた製品やサービスを提供しているか。二つ目は社員エンゲージメント。社員が企業と一体化し、帰属意識が高い状態にあるか。三つ目は顧客ロイヤルティ。単なる顧客満足ではなく、忠誠心の高いパフォーマンスが発揮できているか。四つ目は継続的なパフォーマンス。それを長期的・継続的に行えているか、ということです」

佐藤氏は、「私たちが人材開発、組織開発を考えるときに、果たしてこれに直結できるような企業カルチャーの情勢、およびそのためのプロセスを考えているでしょうか」と問いかける。私たちが得ようとしている成果とは、いったい何なのか。ビジネスの課題を、人材開発の課題にきちんと翻訳できているのか。

佐藤氏は、ここで述べているカルチャーは「人々に共通して見られる態度・行動」「人間関係に見られる特徴」「自然と共有されている価値観、規範、仕組み」と定義していると語る。

「これらは思考の習慣、行動の習慣です。習慣のもとになっている要因とは何なのか。得たい効果とのギャップは何なのか。それを言語化してみるのです。効果性が高い個人には、どんな要素があるのでしょうか」

フランクリン・コヴィーでは、この「効果性の高い個人」を木に例える。

「一つは能力です。木の本体の部分であり、外から見えている部分。二つ目は人格。木を支えている根っこの部分です。この部分を具体的に強化していくのです。人事の方が研修体系図を作って安心しているような場合は、この目に見える木の部分だけを対象にし、根っこのことを忘れていることが多いのです」

講演写真

では、『7つの習慣』は人の成長にどのように関わるのだろうか。人の成長レベルは3段階で定義される。「依存」→「自立」→「相互依存」だ。「依存」は成長の度合いが一番低い状態であり、他の人に助けてもらう必要がある。自分の価値や安心感を他の人から与えてもらう状態であり、この依存は「あなた任せの状態」といえる。「相互依存」とは互いに協力し合って、組織が望む結果を出し続けられるようなマインドセットだ。第1から第3までの習慣は、依存からその上の自立のレベルに到達するための習慣となる。

「第1の習慣は『主体的である』です。自分の行動を自分で選択する力を身に付け、その選択に責任を持つこと。第2の習慣は『終わりを思い描くことから始める』。自分が望む人生のあり方を明確にすることです。自分にとって重要なことは何か、どんな人間でありたいかを思い描きます。第3の習慣は『最優先事項を優先する』。自分で描いた通りの人生となるように、計画を立て、目標を達成するための習慣です」

そして、次に自立から相互依存に向かうために必要となるのが、第4から第6の習慣だ。第4の習慣は「Win-Winを考える」。人間関係や他の人との交流の中で、お互いの利益を追求する態度を指す。第5の習慣は「まず理解に徹し、そして理解される」。相手の話に耳を傾け、相手の話の内容と気持ちを理解し尊重することだ。そのうえで自分の考えをオープンにし、相手に配慮する。第6の習慣は「シナジーを創り出す」。他の人と協力して創造力を発揮し、新しくよりよい結果を生み出す。

講演写真

「私たちが相互依存のレベルで考え、行動すれば公的成功、つまり組織単位で望む成果が得られるようになります。十分に自立していなければ、相互依存で他の人と協力する人格も、自制心も持つことはできないでしょう。そのために1~3の習慣があり、そのあとに4~6の習慣があります。1~3は人格を強くする自制心にフォーカスしています。まず私的成功があってその次に公的成功があるのです。そして最後、第7の習慣は「刃を研ぐ」です。他の6つの習慣を包括した最終の習慣であり、これによって6つの習慣を日常生活で実行できる力が与えられます」

佐藤氏はこれら『7つの習慣』を身に付けるには、フレームワークが重要だと語る。ただ学ぶだけではなく、そこには自ら学びながらプラクティス(練習・実践)していくためのフレームワークがあり、それがストーリー化されていることが必要になる。

「学びをストーリーで考えることが大事です。もしできていないことがあれば、一つ前の習慣にさかのぼって学び直す。組織開発の体系を考えるときにも、成長の連続体というフレームワークは使えます。そして、自分でそのギャップを埋めていくように導くことが重要です。しかし、このような思考・行動の習慣は一朝一夕でできるものではありません。ましてやそれを組織全体のカルチャーにまで引き上げるには、そのための仕組み・プロセスが欠かせません。そこで次は、『7つの習慣』を単なる研修ではなく、学びと実践のプロセスに落とし込んで成功している事例を紹介したいと思います」

末永氏によるプレゼンテーション:「人々の可能性を解放するリーダー」を育成

次に末永氏が登壇。メットライフ生命保険は今から10年以上前に、『7つの習慣』を研修に採用した。しかし当時の採用理由は、数ある成功哲学のなかで『7つの習慣』は「体系だっていて行動に落とし込みやすい、階層別研修に当てはめやすい」ということだった。しかし、後にこの考えは間違っていたことを知る。

「このときの考え方を、今はとても反省しています。現在と当時では、『7つの習慣』の採用理由がまったく異なります。一番の違いは『結果から逆算してプログラム設計する』ことです。求める結果とは何か、最終ビジョンは何か、当面のビジョンは何か、その結果やビジョンに最も大きなインパクトをもたらす人たちは誰なのか、そのために何が必要か、というようなゴールを明確にイメージし、具体的な目標を設定したうえで逆算して設計するようにしました。すると、同じ『7つの習慣』でも研修方法や運営方法が、これまでとはまったく違うものになったのです」

メットライフ生命保険では、リーダー養成プログラム「LMCA」(Leadership & Management Challenge Academy)に『7つの習慣』を採用している。LMCA とは、業界にとどまらず、業界を超えて最も選ばれるリーダーを養成する6ヵ月間のプログラムだ。連続して、6ヵ月もの長期の研修が行われる。

「一般的に、リーダーシップとマネジメントは同じように捉えられていますが、その意味はまったく違います。組織のリーダーはこの二つを兼ね備える必要があり、その思いをプログラム名称にも込めています」

LMCAのミッションは「人々の可能性を解放するリーダーへと導く」。そして、近い将来実現させたい当面のビジョンは「日本最高のリーダー養成機関」だ。では、ミッションにある「可能性を解放する」とは何か。

講演写真

「皆さんは、自分の可能性や価値がどれくらいあるかご存じですか。自分の強みを即答することができますか。自身の能力や価値、強み、持ち味を、どれくらい発揮できているでしょうか。可能性を解放することのスタート地点は、本当の自分を知ることです。ここがスタートとなります。

その上で、例えば、今どういう状態で仕事をしているのか。おそらく多くのビジネスパーソンは、仕事をつらいもの、苦しいもの、できればやりたくないもの、苦役、労働、やらされ仕事などととらえているのではないでしょうか。それを、仕事とは本当にやりたいこと、やりたくて仕方がないもの、夢中になるもの、生きがい、生き様、という状態に変えていく。我々は可能性を解放することをそう捉えています」

それを実行するために、研修に対する従来の考え方を大きく変える必要があったという。

メットライフ生命保険の過去の研修では、世の中にある多くの研修と同じく仕事のやり方、結果の出し方などまず「How」を提供していた。それはわかりやすくて、受けも良く、「目からウロコ」と言われることも多々あったという。しかし、それは一時的なテンションに過ぎなかった。

「研修はやったがなかなか行動が変わらない、その行動が続かないということはなかったでしょうか。そのことについては、以前から大きな問題意識を抱いていました。そこでようやく、気づくことができたのです。すべてを『Why』から始める必要があることに。

Whyとは『なぜ、何のために』です。なぜ、何のために、生きているのか。なぜ、何のために、仕事をするのか。なぜ、何のために、わざわざ、生命保険ビジネスなのか。なぜ、何のために、わざわざ、リーダーという生き方をするのか。その人にとっての本物のWhyを発見することから始めることにしたのです。すると、結果は飛躍的に向上しました。同じHowを提供するにしても、まずWhyから始めることで、行動が変わり、その行動が継続していったのです」

LMCAによって、同社の実績は飛躍的に伸びた。組織の成長性実績は1.4倍に、組織の生産性実績は1.4倍に、ハイレベルな売上実績を出す組織のメンバーの占有率も2倍に伸びた。

「メットライフのビジョンとは、お客さまから最も選ばれる生命保険会社になること。つまり、日本を代表する企業になることです。そのためには、可能を解放するリーダーが絶対に必要であり、LMCAが日本最高のリーダー養成機関になることで、それが実現すると考えています。また、そうなることによって、世の中をより良くする大きな原動力になると確信しています」

ディスカッション:「人間力へのフォーカス」でリーダーを育てる

佐藤:LMCAには今、何人くらい参加されているのですか。

末永:以前は、営業拠点の社員約4000名のうち、組織のリーダーを対象に年間百数十名という規模でリーダー研修を行っていました。しかし、現在は誰が求める結果やビジョンに最もインパクトをもたらすかを考えて、対象者を絞り込み、年間30~40名で行っています。

佐藤:相当絞り込まれていますが、どのように選抜されるのでしょうか。

末永:LMCAへの参加基準などの条件があり、委員会が事前に面接して決定しています。組織に大きな影響を与えられる人物かどうかが見られています。

佐藤:6ヵ月という長いプログラムですが、スケジュールはどうなっているのでしょうか。

末永:『7つの習慣』をベースに、最初の1~2ヵ月は先ほど紹介した、「Why」の発見に時間を費やします。そのあとも発見した「Why」を常に意識しながら、「How」に入り、人材の採用や人材の育成などについて学んでいきます。ラーニングセッションという集合研修を1週間、その後2~3週間の実践セッションを一つのセットとして行います。この実践セッションではLMCAのスタッフが入り、1 on 1の研修になります。つまり、学んだら即実践、学んだら即実践を繰り返し行い、
習慣にしていくのです。

講演写真

佐藤:おそらく、ハイパフォーマーな方たちが参加されていると思います。会社が決めたプログラムに参加して、最初に聞かれるのは「あなたの人生のミッションは何ですか」という質問ですから、皆さん、驚かれるのではないですか。LMCAのメンバーによる1 on 1も行われるとのことですが、これはどれくらいの時間行うのでしょうか。

末永:集合セッションの中でも1 on 1を行いますので、実践セッションとトータルすると20時間近いと思います。

佐藤:1 on 1を行うことで、どのような効果があるのでしょうか。

末永:生きている意味、仕事をしている意味を考えていると、すべてが自分のミッションに生かされているんだと思えるようになります。セッションを続けてもどんどん前向きになりますので、モチベーションが下がったりすることはありません。

佐藤:自分の中でモチベーションの源泉を発見していくようなプロセスになるのですね。人材開発に取り組んでいると、外から力を与えなければいけないのではないか、と思いがちです。しかし、この研修プロセスはそうではなく、本来自分の中にあるものを引き出すための時間です。そのために1~2ヵ月の時間が必要になる。この点は大変ユニークだと思いました。先ほど、結果から逆算して考えることでリーダーの要素が大きく変わったとありましたが、どのような点が違ってきたのでしょうか。

末永:今までは営業に秀でた人がリーダーになっていましたが、今はリーダーに必要とされる要素が変わりました。例えば、イニシアティブを取るといった積極性。バイタリティという持続性。柔軟性や状況対応力。もっとよくなりたいという成長欲求や勤勉さ、真摯さが問われるようになっています。

佐藤:ずいぶん、人間力にフォーカスされたように思いますね。人の思考の習慣が変わっていくこと、行動の習慣が変わっていくことを、私たちは人格の成長と表現していますが、ここでは時間をかけて、そのことを学ばれています。そして、組織に影響を与える人を厳選してアプローチされている点が、成功の要因だと思いました。本日は、参考になるお話をありがとうございました。

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フランクリン・コヴィー・ジャパンでは、企業が抱える課題やニーズに応じた様々なソリューションを提供しています。多岐に渡るサービス提供形態に加え、コンテンツの深い理解と実践を可能にするラーニングプロセスやツールにより、個人、チーム、そして組織に継続した成果と変革をもたらします。

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